↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/17

第9話 M-1グランデ決勝戦!爆笑のマリオネットをぶっ壊せ

 ──前回の話。


 風と霧に包まれたアルメリアの谷で、ハルたちは“瘴花の巫女”と呼ばれる存在と対峙した。幻覚と記憶を操るその力に一時は崩れかけたが、セリナの覚醒とNマウの融合によって突破。


 毒壺は詩の演算核へと変化し、断片は“封印鍵”として再構成された。

 そして現れたのは、空に浮かぶ新たな目的地──


 《M-1グランデ》。


「え、なにその名前、絶対まともなダンジョンじゃねえだろ……」


 ハルの叫びは、波風と共にかき消された。


   ◇◇◇


 そこは、空と海のあいだに浮かぶ巨大な浮島だった。

 帆をかたどった構造物が何本もそびえ、中心部には金色のドームホール。


 外壁には無数の観客AIらしき小型ドローンが浮遊しており、「笑顔マーク」と「ブーイングマーク」を交互に表示していた。


(ぬう度センサー、満杯っす♡ ここ、“ノリ”で戦う系ですわぁ〜!)


「またかよ!」


「ちょ……ここ、初めて来たのに……なんか懐かしい気がするわ。なあ」


 そう言って、海風を受けながら斧を背負い直す男──ガルドが、空を見上げた。


「この潮の香り。空に浮かぶ甲板。サメが跳ねるエメラルドの海──懐かしいぜ、知らんけど」


「え、おまえここ来たことあんの!?」


「いや、覚えてない。でも……そういえば昔、海賊のバイトしてたことあるような、ないような……知らんけど」


「オマエ、記憶改ざんされてんじゃね?」


(ちょいまち♡ AI履歴照会中……該当データ、ありません☆ つまり“ノリ”で喋ってますね!)


 潮風の中、ダンジョンの入口が開いた。

 煌びやかなアーチの上には、きらびやかにこう書かれていた。


 《M-1グランデ 決勝ステージ 本日開催:即興バトル漫才大会》


「ねえ。これ……どう考えても、戦う気ないよね?」


 クロエがつぶやいた。

 だが、ドームの奥からすでに音が響いてきていた。


 ──ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ。

 糸で操られる、奇妙な“人形の足音”。

 ドームの中に一歩足を踏み入れた瞬間──


「ド派手なライトォン! フェイブル最笑決戦、始まるぞオオオッ!!」


 天井から爆音と共に落ちてきたのは、巨大スピーカーと、フロートのような回転ステージ。


(観客数:888体。笑顔期待度:72%。空気、すべってます♡)


「お前が言うなよ、ミャー……」


 そして──ステージの中央に、突然現れたのは。


「ようこそ! 我こそは、パロディの王──《キング・オブ・パロディー》!」


 赤いマントを翻したその姿は、どこかで見たようなアニメ風ヒーローのようで、でもちょっとだけ違う。


 頭にはタラコくちびる型の冠、手にはマイク型の剣。胸には金色の「誤」の字。


「お前らに問うッ! 笑いとは模倣か? 創造か? 俺のネタを超えてみろッ!」


(……キタ♡ 第一ステージ《パロディ対決》ですの!)


「なにそれ……! 模倣ネタ、殺意高すぎない!?」


「やべぇ、もう“見たことある気がするボケ”しかしてこねぇじゃん……!」


 そのとき──ガルドが一歩前に出た。


「まかせとけ、俺はな……前世で“笑い飯”だったかもしれん、知らんけど」


「いきなりハードル高ぇよ!!」


 キングが吠えた。


「ならば問う! この“パロリズム・ソウル”を受けてみよッ!」


 ──ドンッ!


 キングが投げた“技”は、どこかで見たことある必殺技の名前だった。


「“ピカっとぽよん斬ッ!”」


「ちょ、ピカ◯ュウとゴム人間を雑に混ぜんな!!」


 観客AIたちが「……」と反応を止めた。


(観客:静寂反応→ぬう度-10%♡)


「ダメじゃん! 滑ってるじゃんキング!」


 Hマウが吹いた。


(よっしゃぁあ! いっちょ反撃といこう♡ ツカミはハルくん、オチはガルドっちで!)


「待って! なんで俺が前座!?」


「いいから……お前が振れ、俺がオトす!」


「オトせるんだな!?」


「たぶんな、知らんけど!!」


 舞台の照明が一瞬だけ切り替わった。

 ハルが拳を握る。


「オーケイ、じゃあいっちょ──ボケてみっか」


 ステージの照明が切り替わる。

 天井のスピーカーからは、バカみたいに派手なジングル。


 ──M-1グランデ、決勝ステージ第1ラウンドッ!

 ──対戦カード! キング・オブ・パロディー vs ハル&ガルド!


(ぬう度、現在42♡ 漫才バーストにはあとちょい足りないっス〜)

 Hマウの実況が響く中、マイクの前に立ったハルとガルド。


「なあ、ガルド。俺たち、なんでこんなとこで漫才してんだろうな」


「そらお前……海がオレらを呼んだんや。知らんけど」


「絶対呼んでねぇよ!」


「いやな、思い出したんやけど──オレ、昔このへんで海賊のバイトしとってな」


「どこの“履歴書に書けない過去”だよ!!」


 観客AIの一部が「クスクス」反応を示す。

(観客ぬう度:53%に上昇♡)

 キングが割り込んでくる。


「くだらん。笑いとは“完コピ”であるべき! たとえば……“どうぞどうぞ、銅像!”」


 バシィッとポーズを決め、両手を前に突き出す。

(ちなみに──これは〇ッチョウ倶楽部のオマージュである。※銅像になって動かないやつ?)


「……いや説明しても寒いからな!?」

「いや、わざとだろこれ!」


 ……シーン。


「うん。時空がね、止まったよね今」


「それな、オレでもわかる。今のは……アカンやつや」


 Hマウが即時ログ表示。


《敵ぬう度:-15%減衰中》《観客AI:静寂モード突入》


「ほらな! この国、ノリに厳しいんやで! 知らんけど!!」


「知らんけど万能かよ!」


 ハルが深く息を吸った。


「でもなガルド、俺、思ったんだ」


「なんや?」


「この旅、最初からずっと、お前の“知らんけど”が全部合ってた気がするんだよ」


「……え、マジで? 知らんけど」


「それがオチかよッ!!」


 ──ドッ!!


(……ウケてねーのに“受けてる感”出してきたぁ〜! しかも逆にウケてんじゃん♡)

(ギャル的には“わざとスベって正解”のやつね! ぬう度+20、きたぁ〜♡)

 


 観客AIが一斉に拍手エフェクトを放つ。

 ステージの上空、ぬう度ゲージが100%を超える。


(キマったっ♡ 今よ、ハルくん! 漫才バースト発動ぉおおお!!)


「うぉおおおっ!? ぬう度ぶち抜けた!? 発動! “爆笑の嵐☆ぬうテンペスト!!”」


 ハルの声と同時に、空間が割れた。

 斧を担ぐガルドと、マイクを握ったハルの背中に、爆発するような笑いのエフェクト。


 技名の勢いそのままに、マイク型の衝撃波がキングを直撃。


「こ、これは……“アドリブの嵐”……っ! 笑いの、暴力……っ!」


 ──キング・オブ・パロディー、沈黙。

 観客AI、総立ち。拍手エフェクトは最大強度。

 天井に「ぬう度満貫♡」と表示された。


(ふぉおおおッ♡ ウチ、ぬう濡れ♡ もはやリンクどころじゃないっしょ!)


   *** 


 ステージの照明が切り替わる。

 次なる扉が、きい……っと軋んで開いた。

 その奥から、じり……じり……と、何かが現れる。


 ──黒く、重く、滑りまくった空気。

 その姿は──

 つるるるぅ〜〜〜ん……ピタッ!


 豪快なスライディング登場──にもかかわらず、誰も反応しない。

 観客AIたちは無音。審査エフェクトすら出ない。


(……やっべ♡ 逆に空気、氷点下っス〜〜♡)


(ぬう度、観客側マイナス補正へ突入中……これは、すべってます♡)


 ゆらりと立ち上がった影──顔面は能面のような無表情。

 衣装はスパンコールだらけの赤と青、なのにまるで笑えない。


「名乗るほどでもないがな。呼ばれた気がした……ラストスベッタだ」


「出たーっ!? なんか“スベることに快感覚え始めてる芸人”みたいなやつ!」


「逆にこえーよ! 何してもダメージこっち来そう!」


 ハルとガルドが即ツッコミを入れたが──

 ラストスベッタは、にぃ……と歪んだ笑みを浮かべた。


「滑りとは、“傷”である。笑いとは、痛みの再演……」


「よって、滑ったネタほど強くなる。貴様ら、今この瞬間──命、懸けたか?」


(うっわ♡ ぬうジャマー型スベり反射タイプっスねコレ〜)


「うわ最悪な構造来た!」


 観客AIが表示を変える。

《※滑った場合:与ダメージ無効化+被ダメージ大幅上昇》


「ギャグでミスると死ぬって、なんでRPGが即興ライブ会場になってんの!?」


「ウチら……ほんまに戦場ちゃうんやな……M-1やな……知らんけど」


 ラストスベッタが両手を広げた。


「かかってこい。貴様らの“微妙なネタ”を、この場で完全に殺してやる……」


(戦闘開始♡ ぬう度チェック:60%からスタート〜!)


   *** 


 ステージ中央に、マイクが再び降りてくる。

 ──シングルマイク形式。


「ちょ、今度はツーマンじゃなくて一人ずつ!?」


「これ……滑ったらマジで終わるやつやん!?」


 まず前に出たのは──ガルド。


「俺な……最近思うねん……“食レポって、ほんまに味伝えてるか?”って」


「来たぞ!? お前それ滑るぞ!!?」


「どこ行っても“外はカリッと中はふわっ”って言ってんねん!」


「……!」


「全部それやねん! この世のすべてのコロッケは、“中ふわ”って決まってんのかーッ!?」


 ──観客、ザワつく。

 そして──


 パシュン!!

 ラストスベッタの指がスナップされると同時に、マイクが爆ぜた!


「うわあああっ!? すべり判定来たぁああ!!」


(ぬう度急降下♡ ガルドに反動ダメージ:腹筋+魂にHIT♡)


 ガルドが膝をついた。ハルが駆け寄る。


「おい! 大丈夫か!?」


「……あかん……コロッケは……中がふわっとしてへんと……ほんまに痛いわ……」


「だからそれ、スベッたんだってば!!」


 ラストスベッタが笑う。


「その魂の痛み……わたしの糧だ……次は、お前の番だな、ポンコツ美少女──」


 ハルが、深く息を吸う。


「いいだろ……いっちょ、殺してやるよ。“静寂ごと笑い飛ばす”ネタってやつをな──!」


(ぬう度、再上昇中♡ 逆転フラグ、キマってきた〜〜ッ♡)


 マイクの前に立つハル。

 空気は、しんと静まり返っていた。

 さっきのガルドのネタで、観客AIの笑顔エフェクトはほぼ全滅。


(ぬう度:15%♡ このままじゃ、ゼロで反動ぬうダメ……死ぬっス〜〜!)

(滑り耐性ゼロ状態っス♡ 滑ったら……人生詰む♡)


「……あー……あー……」


 ハルは試しにマイクに声を入れてみる。ノイズすら、笑えない。

 だが──その瞬間、ハルは口角を吊り上げた。


 「……かかったな?」


 「寒ければ寒いほど──凍るどー、コールドー!!」


 バッと指を鳴らすと、マイクからブリザードSEが発射された!

 観客AIの視界が一瞬フロストエフェクトで覆われ、笑いエフェクトが完全に凍りつく。


(きゃ〜〜♡ “ギャグで寒波”とか新技すぎるっス!)


 ラストスベッタがわずかに動揺したその瞬間──


 「──どや、“ぬう鍋”のぬく味が欲しくなったやろッ!!」


 ズガアアアン!!

 観客ぬう度ゲージが爆発的に跳ね上がる!


(キタああああああああああッ♡♡♡)

(“体張って自ら冷やして回収する”という、最上級の体当たりギャグ♡)

(ぬう度+50! 笑いゲージ急上昇っス〜〜!!)


「“鍋ネタでぬう度回収”? てめぇ、笑いを……演算してやがる……ッ!」


 ラストスベッタが後退る──が、その瞬間。

 背後から斧をかついだガルドが叫ぶ。


「追いボケ、行ったるでぇええ!! “ぬう汁ぶっかけ! 知らんけど!”」


 ──ぬうバースト、再発動!

 ハルとガルド、二人の言葉がリンクし、ステージに光が奔る。


《漫才リンクバースト・第二段階!》

《奥義:ダブルボケ・コンビぬうスペシャル☆“爆笑滅ッ!!”》


 ぶち抜かれたラストスベッタは、ゆっくりとスロー再生のように後ろへ吹っ飛んだ。空中で回転しながら──最後に、笑った。


「……これが……本当の、“笑い死に”……か……」


 ──爆発。

 観客AI、総立ち。スピーカーが咆哮する。


   ***


 ──決勝ステージ、最終戦へ突入。

 暗転する舞台の奥から、吊り糸の音が聞こえた。


 キィ……キィ……キィ……


 舞台中央に、糸で吊るされた仮面が降りてくる。

 顔中が“笑顔”の仮面で覆われた存在──

 その名は、《爆笑のマリオネット》。


「笑いとは、演出。貴様らの魂すら──“台本通り”に笑わせてみせよう」


(ぬう度:0%スタート。な、なんでぇええ!?)


(っしょ〜〜!?♡ 今の敵、“観客の感情を強制操作”してるっぽいっス〜!)


 観客AIたちの目が一斉に白く光る。

 まるで“笑わされている”かのように、誰もが無理やり笑っていた。


「……うわ、こわっ。なにこの“笑顔量産機”みたいなやつ……」


 ハルが一歩引いた瞬間──

 マリオネットの右手がフッと動く。

 それだけで、ハルの足元からピエロ風の雑魚Mobが大量召喚された。


「ちょ!? なんかいっぱい出てきた!?」


「“観客モブ生成”? 笑いのシーン、強制再現モードっスねコレ……!」


「まさか……この敵、俺たちの“過去のギャグ”を“再演”させてきてる!?」


「そのと〜りぃ♡ **ぬう記録再演(リプレイ・シアター)**って技っス!」


 舞台上で、“過去のガルドのネタ”がリピート再生される。


「……外はカリッと中はふわっ! 全部それやねん!」


 ドッ!

 観客AI:爆笑判定。


(うわッ!? “前回スベったネタ”がウケてる!?)


「クソッ……俺の黒歴史ネタで“敵が回復”してやがる!!」


(マリオネット、“スベり再演でぬう吸収”型のチートボスっス!!)


 敵のぬう度が爆速で上昇。


《敵ぬう度:82%/自陣ぬう度:8%》


「ヤバい、これじゃ“バースト”撃たれるぞ!?」


 ──だがその瞬間。

 斧の音が、鳴った。

 ガルド、無責任咆哮。


「上演停止やぁあッ!! “脚本おうる無斬(ぶったぎ)ィ!!!”」


 振り下ろされた斧から、不可視の波動が走る。

 舞台の床が真っ二つに裂け、マリオネットの操作脚本ごと──物語が断ち切られた。


「え、なに今の!? そんなスキルあったっけ!??」


(……今の……技名補正で無理やり成立した“ぬう覚醒斬”っス♡)

(しかも効果:演出強制破壊+敵のネタ台本ごとぶっ壊し……えぐ〜!)


 マリオネットの仮面がピキリとヒビを入れた。


「き、脚本が……制御不能……!? この場の笑いが……暴走する……!」


 ハルが叫ぶ。


「よし! いけ、マウ!」


「おっけ♡ ウチが書き換える〜っ♡♡ ギャグも演出も全部、上塗りしちゃうゾ〜!」


 ハルとマウのLinkがMAXに達する。


《漫才リンクバースト・ファイナル発動》

《最終技:魂演目“Link of Laughs〜ぬうの書〜”》


 舞台全体に炸裂する、ギャグと魂のコンボ技!

 マリオネットの仮面が砕け、操糸が焼き切れる。


「……嘘……だ……私は、すべてを“笑わせる”存在だったのに──!」


 ──爆発。


 断片の詩文が、マリオネットの胸から現れる。

 そしてNマウが告げた。


「このログ……新たな構文式ですの。次の地点、解析可能ですの」


「出たぞ、新ルート! 山だ、山岳エリアだ!!」


「……鍛えなおしやな……知らんけど!!」


 ──ハルたちの次なる冒険は、

 断片を越えて、山の迷宮へ──!


   つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。