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なりあがりシスターズ!~流行病の蔓延る街でゆるふわ声優達が頂点を目指す!~  作者: 牛
第二章 それでも、舞台の幕は上がっていく。
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おかえりなさいませ。

 さえがかえから引き継いだもの。

 それはかえがこなしていた仕事全てだ。

 事務所を通してやっていた仕事。

 事務所の許可を得てやっていた仕事。

 そういうものひっくるめて全てさえが引き継いだ。


 テレビに映るかえの姿を毎日ものまねしていたおかげで。

 傍目からはその全てを上手く引き継ぐことができたように思う。

 マネージャーOさんもさえの演技っぷりに絶賛をおくってくれた。

 しかし、それはそれで、である。


 例え上手くこなせていても、いまだに慣れないものもあるものはあるのだ。



「おかえりなさいませ★ ご主人様★」



 それがこのメイド喫茶の仕事である。

 売れない声優がメイド喫茶でバイトするというのはよくあることらしいとは聞いていたけれど。

 まさか、かえみたいな元人気子役がこのバイトに手を染めているとは思いもよらなかった。

 まぁかえの場合、お金を稼ぐというよりも役作りの為にバイトをしていたというのが正しいのかもしれないのだけれど。


 さすがに知人に知られるのも気まずいので、このバイトに来る時は最善の注意を払って出勤している。

 しかし。



「おかえりなさいませ★ お嬢様★」



 その日は。

 死んでも接客したくない奴が来てしまった。

 来てしまったのだ。

 にっこりとあゆみに無理やりはりつけた笑顔を向けて接客すると。

 さえはカウンターの奥に引っ込んでオーナーに苦情を言う。



「さえはあゆみの相手だけは、無・理!!!」


「でもなー……あゆみ様から、指名料もらっちゃったし……。だからがんばれとしか」



 マジか……。

 さえの指名料ってそこそこ高い設定にしてもらっているはずなのだけれども。

 大きくため息をつきながらさえは意を決してカウンターの奥からあゆみの元へと向かう。



「ご注文は何に致しますか★ お嬢様★」


「やーん、可愛い~、さえちゃま♪ 私のご注文は、さ・え・ち・ゃ・ま♪ だよ」



 ひくわー……。

 普通にキモいわ。

 なんでそんな事、シラフで言えんのお前?



「お嬢様★ そんなご注文、ございませんよ★」


「えー……。かえちゃまは喜んで、私の太腿の上にのってくれたのになぁ……」



 言いながら、ぽんぽんと自分の太腿の上をあゆみは叩く。

 オーナーの方をチラッとみると、やれという目つきで見つめられた。

 くそっ……この女っ!!

 さえは小さくため息をつくと、あゆみの膝の上にちょこんと座る。



「はぁ……さえちゃまが私の太腿の上に……っ。この感触、気持ち良いよー……」



 はいはい……そうですかそうですか。

 それは良かったですね。

 さえは死んだ魚のような目つきでぼんやりと虚空を見つめる。

 あー早く終わんないかなー、この指名時間。

 そんな事を思いながら足をぶらぶらして時間を過ごす。


 その間も何やらあゆみはさえに話しかけていたが、さえは生返事をすることのみに徹する。

 その結果、さえの生返事に飽きたのかあゆみは太腿の上にさえがいるのに関わらずイリュージョンさえちゃまと話しだした。

 もうこの女、色々と手遅れだな……。

 そう思っていると。



「あの、あゆみ様。そろそろお時間です」



 オーナーがあゆみに声をかけてくる。



「えー……もうなのー。じゃあ後一時間追加で♪」


「承知いたしました」



 はああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!??

 この状態を更に一時間やれっていうの?

 そんなの無理無理無理。

 さえが死んでしまう。

 精神的にっ。


 今にも泣きだしそうな目でオーナーに訴えかけるも。

 オーナーは無言でかぶりをふり、やれっと訴えかけてきた。

 うううううう……。

 さえに味方はいないの……。


 カランカラン。

 入口の鐘がなる。

 死んだ魚のような目で視線をさ迷わせるとそこにはからひなが笑顔を貼り付けたまま凍り付いていた。



「せ、せん……ぱい……?」


「こ、これはちがっ」



 慌ててさえが立ち上がろうとするも、背後からがっちりとあゆみが抱きしめてくる。



「ごめんねー、ひなお姉ちゃん。今日のさえちゃまは、私のさえちゃまなの♪」


「ち、ちがっ……」


「えー。さっき一時間チャージしちゃったんだけどなー。ねぇ、さ・え・ち・ゃ・ま♪」



 そんな風に耳元でねっとりと囁いてくる。



「…~~~っ!!」



 さえは渋々とあゆみの太腿の上に座りなおす。



「(・〇・)……ソウナンデスネー……」



 からひなはそんなさえ達に冷たい視線で一瞥してお店から出て行ってしまった。



「……どうすんだよ……、これでユニット解散したら……」


「その時は私達とユニット組めばいいよっ♪」



 あゆみとののとさえでユニット?

 ……そんなの地獄すぎるだろ。

 絶対そんなことにならないようにしなければ。



「まぁ……。あと一時間、よろしくね。さえちゃま♪」


「……」



 無我の境地でこの状況を乗り越えることにしよう。

 そうしよう……。


 そして一時間後。



「あれ。もう時間?じゃあ、後一時間追加で♪」



 その日は延々と退勤時間まで、あゆみの太腿の上に座らせられ続けた……。

 もうこのバイト辞めたい……。

読んでいただきましてありがとうございます。

メイド回ですなりあがりシスターズ。

楽しんでいただければ幸いです。

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