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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第二章 出楽園編
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第41.5話 大人の証

サブ話なんですけど、長いです

 時が経ち、時の箱舟の建設が佳境に入り、俺がその箱舟内部で、仕上げの作業と最終チェックをしていると


「(主様! エルフの像が完成しましたぞ!)」


 と、ドグが念話で伝えて来た。


「(わかった、直ぐ向かう)」


 俺はそう彼へ返信すると、光の魔石を部屋の天井への取り付けていた作業の手を止め


「どうやらエルフの像が完成したらしい」


 と、同じ部屋で一緒に作業を手伝ってくれていたエルフィーと、床で魔石に魔力を込める作業をしていたレイディアへ伝えた。


「おめでとうございます、主様」


「おぉ、それは、おめでとうございます」


 二人はそう微笑みと共に祝福してくれた。


「ありがとう。……ん?そろそろ昼か」


 『時の箱舟』には窓が無いので、太陽の位置などでの時間の把握は難しいのだが、今の俺には問題無い。

 頭の中で正確な時計の情報が見れるからだ。


 この6年間で、神体に宿っている状態でも、天界のパソコンの情報を引き出したり、間接的に操作する方法を色々と身に着けたのだ。


 今では頭の中で、表計算ソフトなども展開して操作できる様にまでなった。


「二人とも、見に行くついでに、向こうで昼食にしようか」


 時計の時刻は11時を過ぎていたので、ついでにお昼休憩にしてしまおうと俺は考え二人にそう言う。


「はい。……少々お待ちを、今取り付け終わりますので」


 と、エルフィーは言い、手に持っていた光の魔石を、天井へと土魔法を使い埋め込んだ。


 彼女もこの6年で、外見的な成長は成長はともかく、能力的にはかなりの成長を遂げた。


 前から魔法的な能力は全員の中でトップであったが、俺が世界樹の魔力で作り出した石材へ干渉できるほどの魔法は、彼女しか使えない。


 俺は今ドワーフのドグを象った神像に宿り作業をしているのだが、実を言うとこの体単体での性能ではエルフィーと同じ事をするには難しかったりする。


 まぁ、ちょっとしたズルをして、別の所から魔力を融通して体面を守っていたりする。


「では、主様とエルフィーは先に向かっていてください。

 私はシルティアを呼んでから一緒に行きますので」


 レイディアはそう言って、魔力を込めていた魔石を部屋の隅へと置き、他の階で、トイレなどで使う水の魔石への魔力を込める作業をしている、シルティアを迎えに行った。


 念話が使えるというのに、わざわざ迎えに行った目的は明白である。


 二人っきりになりたいんだね。


 竜人達もお年頃になったのか、ここ最近はレイディアとシルティアの仲がさらに親密になってきている。

 二人だけで、素材や宝石を取りに行ったりと、仲良く何かをしている事が多くなった。


 バハディアとリーティアの二人も……

 いや、あの二人は外見はともかく、さほど変わって無いな。

 性格的な問題なんだろうか?


 まぁ、でも、お互いに気が無いわけでは無いみたいだし、二人には『時の箱舟』の外で行う同じ仕事を頼んでいるので、その内レイディアとシルティアの様になるのも時間の問題だろう。……たぶん。


 俺は、遠くで作業をしているバハディア達へと念話でエルフの像とお昼ご飯の事を伝えてから、エルフィーを連れて時の箱舟の外へ出ると、飛行魔法で世界樹の根本へと飛んだ。



 到着すると、其処には流木から作られたエルフの長であるエルを象った立像があり、その横には真っ白な人間の長のウアを象った神像と、同じく真っ白な獣人の長のガウを象った神像が並んでいた。


 流木で作られた獣人の神像へと宿った時に判明したのだが、俺が1度でも神像へ宿ると、その像は外からの干渉を物理的にも魔力的にも、全てををはねのける真っ白な石材質の物へと変化するらしい。

 その効果は身に纏っていた物にも波及するらしく、着こんでいたローブや草鞋なども同じ材質へと一緒に変わってしまう。

 その神像へと宿れば元に戻るので、問題は無いのだが……


 それはそうと、今は完成したエルフの像の方が気になる。


「おぉ……これも素晴らしい出来栄えだ。

 皆、苦労を掛けたな。この像も大切に使わせてもらおう」


 近くで完成の満足感を漂わせた表情をしたドグ達へと、労いと感謝を言うと


「有難う御座います。

 残すは、あと竜人の像だけですわい。

 それで、竜人の像は誰にいたしますか?」


 と、ドグは言った。


 まだまだ彼は創作意欲が尽きないらしい。


「あやつらの像は、ちと苦労しそうじゃのぅ……

 尻尾や角はまだしも――」


 ドグの隣に居たダグがそう言いかけた時


「あーるーじーさーまー」


 と、リーティアの声がした。


 声のした方へと目を向けると、少し離れた所の10m程上空で、羽をパタパタさせ空を飛んで此方へと向かってくる彼女の姿が見えた。

 その少し後ろを、人間のサーリを背中に乗せたバハディアが、木にぶつからない程度の低空を飛行してついてきている。


「――あの羽がのぅ」


 ダグは、その飛んでくる彼女の方を見つつ、言いかけていた言葉を発した。


 そう、竜人達に羽が生え始めたのである。



 数ヵ月ほど前の事だった――



 俺が世界樹に宿って、『時の箱舟』の外装の仕上げを行っていると


「主様ー。背中が痛いー……」


 と、俺の根元にバハディアとサーリに抱えられたリーティアが運ばれてきた。


「ふむ……? 怪我か?」


 そう俺が聞くと、彼女を運んできたバハディアとサーリは


「それが、怪我なのか……血も出ていないですし。

 俺が世界樹の葉を食べさせてみたのですが、痛みが引かないみたいです」


「リーティさんの言う、痛みのある背中の箇所が腫れているんです。

 私も、そこへ回復魔法をかけてみたのですがダメでした」


 と、二人は言った。


 サーリには、俺直々に回復魔法を伝授してあり、魔力量は別としても、技術的には俺と大差ない回復魔法の使い手となっている。


 その彼女の回復魔法でも効果が無く、世界樹の葉でもダメとなると、深刻な事態かもしれない。


 俺は、急ぎ人間の神像へと宿り、リーティアの容態を調べる事にした。


 さっそく彼女を俯せで地面へと寝かせ、服をまくり上げて背中を見てみると、サーリの言う通り、リーティアの肩甲骨の下辺り、背骨を挟み対称の位置の二か所が、妙な赤い色を帯びて縦方向に腫れあがっているのが見て取れた。


 赤黒さや青くなっているわけでは無いので、骨折や打撲などでの腫れでは無さそうだ。

 そうであれば、回復魔法か世界樹の葉で治るはずだし……


 これは……なんだ?


 病気の一種なんだろうか?

 何か悪い菌でも入ったとか?


 今まで細菌などでの病気や怪我の悪化などは無かったはずだが……

 もしかして、何かの拍子に微生物やウィルスなどが生まれてたのか?


 だとしたら、まずいな。


 そういった物に、回復魔法や世界樹の葉の効果が効かないという事になる。

 ……いや、毒のある食べ物や生き物と言った可能性も捨てきれないか。


 ともかく、どういった腫れなのかだけでも調べねば。


「少し触るぞ」


 と、俺はリーティアに言い、その腫れて居る部分にそっと触れると


「いッ!」


 と彼女が苦悶の声を上げたので、俺は急いで手を離した。


 少し触れただけでも、この痛がり様か……


「リーティア……痛みは何時頃からだ?」


「う、うんと……2、3日前から少し痛かったかも……

 でも、我慢できない程じゃなかったの……」


 と、弱々しく彼女は答えた。


 顔色も悪いし、かなりの痛みな様だ……


「そうか……では、少し眠っていなさい。

 その間に私が治しておこう」


 俺は優しくそう言うと、リーティアへ強めの睡眠魔法をかける。


「うん……お願い……主様……」


 と、彼女は安心した表情を浮かべて眠りへと落ちた。


 これで多少は触って調べても大丈夫だろうか?

 睡眠魔法をこの様に麻酔代わりに使った事は無いが、これぐらいしか方法が思いつかなかったので仕方ない。


「主様、リーティは大丈夫なんですか!?」


 事の推移を見守って来たバハディアが、焦りを滲ませた声色で聞いてきた。


「大丈夫だ、私に任せておけ」


 と、彼や異変に気が付き周囲に集まって来た者達へと自信たっぷりに言い放ったが、内心では俺も焦りと混乱で一杯であった。


 というのも、先程、少し触った時に感じたのだが、腫れた部分の感触が妙に固かったのだ。

 まるで、異物でも埋まっているかの様な感じがした。


 こんな病状というのか怪我というのか、さっぱり分からない物にはお目にかかった事が無い。


 それを再度確かめる為に患部へと触れると、やはり妙な固さを感じる。

 まるで、皮一枚を挟んで骨か何かが有る様な感触だ。


 その部分を注視してみると、そこに掛かる赤い色も何か妙だった。


 そこで、はっと気が付いた


 その色は、リーティアの腰から生えている尻尾や、身体の節々に有る硬質なプロテクターの様な鱗と似た色をしていたのだ。


「これは……」


 何か、竜人特有の器官でもここにあるのか……?


 もしや、羽……か?


 そう考え、俺は急ぎ同じ竜人であり性別も同じシルティアと、一応レイディアの方にも念話で来るように伝えた。


 その二人が到着する間に、バハディアの身体も調べる事にする。


「バハディア、そこにリーティアと同じ様に、うつぶせになってくれ」


「え?あ、はい」


 バハディアは、戸惑いながらも、俺の言う通りに地面にうつぶせになった。


 彼の身体は、ほぼ全身が固い漆黒の鱗に覆われているので、目視では異常が確認できなかったが、リーティアと同じ個所を強く触ってみると、彼の背中にも少しだけ固く盛り上がっている部分が有る事が分かった。


「私が触っている部分に、痛みや何か違和感は有るか?」


 そう聞いてみると


「……痛みはありません。

 違和感は……何か有る感じがします」


 と、バハディアは答えた。


 そこに、呼び出したシルティアとレイディアの両名も到着し


「主様ぁ、何が有ったのですかぁ?」


「主様、急ぎとの事ですが、いったい……

 バハとリーティはどうしたのです?」


 と、言ってきた。


「説明は後だ。

 すまんが、二人も背中を調べさせてくれ」


 俺はそう言い、さっそく二人の背中も調べる。


 二人も触診した結果、レイディアの背中はバハディアと同じ感じであった。


 そして、シルティアの背中はリーティアと同じ個所が少し盛り上がっており、同様に体の鱗などと同じ青い色が薄っすらと透けて見えた。


「シルティア、お前は痛みは無いのだな?」


 と、彼女に聞くと


「んー……押されると、すこーし痛いですねぇ」


 との事だった。


 一応、他の種族の女性の背中も比較のために調べる事にし、近くでリーティアの事を見守っていたエルフィーやサーリなどの背中を見たが、他の種族の背中には竜人達の様な異物は見られなかった。


 うーん……リーティアやシルティアの症状、これが病気などでは無いのだと仮定すると、世界樹の葉や回復魔法が効かないのも納得できる。


 それに、竜人だけにしか無いとなると、やはり羽か……

 もしくは角と言った物が生えようとしている前兆っぽいが……

 どうしたものか……


「ふむ……」


「それで、何か分かったのですか?」


 俺が少し考えていると、バハディアが起き上がって尋ねてきた。


「これは、怪我などではない。

 リーティアが成長……大人の身体へと変化しようとしている証しだ」


 俺はそう言い「おそらく」と心の中で付けたした。


「大人への変化……ですか?」


「あぁ。この腫れている個所から『羽』が生えようとしているのだ。

 人間や獣人も、子供から大人になる段階で歯が生え変わるなどの変化が有るのだが、お前達竜人は背中から羽が生えて来る事になる」


 皮膚から透けている色から推測するに角の類では無さそうだし、ドラゴンの要素から推測すると、位置的にも羽だろう。


 ちなみに、エルフとドワーフにはそういった変化は今のところ無い。

 せいぜい体が大きくなったり、髭などが伸び始めたりといった程度である。


「そうなのですか……なら、大丈夫なのか。

 ……俺達に出来る事は、何かないんですか?」


 と、バハディアは一旦ほっとしてから、再度質問してきた。


「それは――」


 どうしよう?


 出来る事が無いんだよな……


 ばい菌などが入って腫れているとかなら、患部を切除するなり膿を出すなりして、回復魔法で傷を塞げば良い気がするが――


 ――そうか


 背中の皮を内部から生えてきてる羽が突き破ろうとして痛みが発生してるのだし、その皮を少しだけ切って、羽をさっさと外に出せば良いのか。


「――背中の、羽が出てこようとしている部分の皮を切る」


 そう告げると


「え……切る!?」


 とバハディアや周囲の者達まで、ざわつくように動揺が広がってしまった。


「皆、落ち着け。

 リーティアが痛がっている原因は、その羽が背中の皮を突き破ろうとしているからで、どのみち放置しておいても羽が皮を切る事になるのだ。

 なら、さっさと羽を出してしまって傷を塞いだ方が早く済むというだけだ」


 そう皆に説明したのだが、皆は、言っている事は分かるが、気持ちや気分的には腑に落ちないといった反応であった。


 そうだよなぁ……

 治療行為と言っても、注射とかが怖いのと一緒だよね……


 仕方ない、一人でやるか、と俺が決心して始めようとすると


「主様、お手伝いいたします」


 と、エルフィーが進み出てきてくれた。


 俺も冷静なふりをしてはいるが、内心では不安で一杯だったので、エルフィーの申し出は嬉しかった。


「そうか、すまないな。

 では、私が切るから、魔法で水を生み出して血を洗い流して見えやすくしてくれるか?

 バハディア、お前はリーティアの手を握ってあげててくれ」


 と、二人に指示を出してオペが始まった。


 何も複雑な事をするわけでは無く、魔法で生み出した硬質な土で作った鋭利な刃物を用意し、一応用心のために熱で殺菌行為をしてから、リーティアの背中の一番薄くなっている皮の部分に慎重に切れ込みを入れるだけである。


 施術している最中にリーティアが目を覚まさないかとヒヤヒヤしたが、そんな事は無く、数分で無事に終わった。


 背中の中に埋まっていたのはやはり羽であった。

 リーティアの鱗と同様の赤の骨子状の部分を被膜が覆い、途中の関節部分などから角の様な棘が出ている形状の羽だ。


 無事に取り出す事が出来たその羽は、スヤスヤ寝ているリーティアの背中で、呼吸に合わせて少しだけ開いたり閉じたりしていた。


 切った部分も綺麗に塞がったし、一安心である。


 しかし、なんで俺はファンタジーな世界に来て、こんな外科手術みたいな事をしているんだろう……



 ――という事があったのだ。


 その後、程なくしてバハディアとレイディアにも羽が生えてきたのだが。

 どうやら男性の竜人の場合は痛みは無いらしく「朝起きたら生えてました」との、事後報告をされただけで終わった。


 リーティアは、そのバハディアの様子を見て「男の竜人はずるい!」と、暫くの間プリプリと怒っていたのだが、羽が生えた事による体の変化に気が付くと、すぐに上機嫌になったのだった。


 まだシルティアには生えてないのだが、翼が生えた三人は、ここ数ヵ月の間で体の成長も加速してきているらしく、伸び悩んでいた背や体格も他の種族の大人達と遜色が無いほどまでに大きくなってきた。


 それと、翼へと意識を向けて力を込めると、魔法を使わずとも空を飛べるようになったのだ。


 バハディアは、4人の中で唯一空を飛べるというアドバンテージを失い、少し凹んでいたが……ま、仕方ないよね。


 飛ぶのに使用しているのはMPでは無く、今まで用途が不明であったステータスのSPを消費している事も確認できた。

 SPは種族的な特殊能力に使用されるらしい事が分かり、それも収穫の一つだ。


 しかし、年齢が80を超えて、やっと成長期の様な事が起きるとは……

 竜人の成人年齢は、一体どの位なんだろうか?


「私がどうかしたの?主様」


 と、俺の近くに着地したリーティアが、何故か皆の注目を浴びているのが不思議に思ったらしく、そう聞いてきた。


「いや……エルフの像が完成したので、次は竜人の像をと話していたのでな。

 そこに、ちょうどお前達が来てしまっただけだ。

 ドグ、ダグ、竜人の像の作成はもう暫く後にしよう。

 まだ彼らは成長途中であるし、作るにしても、流木では強度なども不足しているかもしれん」


 と、俺はドグとダグへとそう言った。


 竜人は羽が生えたせいで、身体の形状が他の種族と比べて、複雑になり過ぎているんだよな。


 それに、成長が止まるのが何時頃になるか不明すぎるし……

 とりあえず、100歳くらいまでは様子見かな?などと考えていると


「(主様!シルティアが!)」


 と、レイディアから切羽詰まった念話が届いたのだった。


 噂をすれば影とはこういった事を言うのだろうか……? 違うか。

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