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財布の忘れ物
400文字程度のお話です。
急にお腹が痛くなり、私は高速のパーキングエリアの駐車場に車を停める。
慌てながらも車から降りてトイレに駆け込み、ズボンを脱いで便座に座り込む。
私がトイレットペーパーに手をかけようとした時、そこに一つの財布があることに気が付いた。
無意識に財布の中身を確認するとそこには小さな黒いメモ帳が入っていた。
本当は一番最初に確認すべきなのは本人確認出来る物もしくは中に入っている現金なのだが、私はそんな事を考えもせず何かに魅入られたかのようにそのメモ帳を手に取り中を確認した。
山田賢治、斉藤洋子、山口理沙、成瀬武、宮元朱美、鈴木亮介……
メモ帳の中身には無数の名前が白い紙いっぱいに書かれていた、何ページも。そして名前を塗り潰すように何重もの斜線が引かれている。
初めのうちは意味が全然分からなかったが最後の名前を見て凍りついた。その名前にはまだ斜線は引かれていなかった……
最後の名前を見たと同時に人の気配がして
私はゆっくりと上を見上げた
財布の忘れ物を見つけた時は気をつけてください