TDL
遅くなるとか言いつつもわりと早めの更新です。
会社の夏休みが始まり、前々から彼女に行こうと言われて行くことになった東京デズニーランド。
入園するとそこにはデズニーのキャラクター達がお客達を盛り上げていた。
「ねぇ、あの着ぐるみってプーちゃん? あんなキャラクターいたっけ?」
彼女にそう言われ、彼女の指の指す方向を見るとそこにはニッコリと笑っている真っ白な熊の着ぐるみが風船を持ちながらウロチョロしていた。
「デズニーみたいなのには疎いから、俺には分かんねなぁ」
「そっか」
俺と彼女は着ぐるみの事を解決出来ずじまいで、そのまま夢の国のアトラクションを満喫することにした――。
アトラクションを楽しみ、買い物も済ませた彼女はかなり満喫してくれたようだ。そのまま俺達は自宅に帰るためにデズニーランドから退園しようとしていた。
「あっ! またあの着ぐるみだ! 何しているんだろう?」
彼女に釣られて、俺も顔を向けた。
例の着ぐるみは鼠の耳のカチューシャをつけた男女カップルを連れて、関係者以外立入禁止の所に入っていった。そして十秒もしない内に熊の着ぐるみだけがそこから出てきて、俺達の所に顔を向け一直線に俺達に向かってきた。
何故か俺は急に背筋に寒気がして危機感を感じ、彼女に「早く帰ろう」と言ったのだが彼女は夢の国でテンションが上がっているせいか帰ろうとしなかった。
着ぐるみは俺達の前に立ち可愛いポーズを決め、彼女の手を取り関係者立入禁止に向かった。俺は少し嫌な予感がしていたが、「夢の国=安全な場所」というレッテルがあったためか彼女を引き止めず楽しそうな彼女と着ぐるみに着いていった。
関係者立入禁止と書かれた扉を開け中に入ると熊の着ぐるみはすぐに外に出ていき、白い煙が四方八方から吹きだした。
「何かのアトラクションかなぁ? もしかして、夢の国の隠されたアトラクションだったりして」
「そんなアトラクションあるのか? 聞いたことないけど?」
「あれ? なんか眠くなって……き……た……」
「おい大丈夫か!? いったん出るぞ!」
俺は慌てて彼女を抱えながら入り口から出ようとしたが、扉にドアノブが無かった。出たいけど出れないという状況が俺自身を混乱させた。
「『ドンッ! ドンッ! ドンッ!』連れが体調悪そうなので出して下さい!」
俺がどれだけ扉を叩き、どれだけ叫ぼうが係員は来なかった。そうして俺自身にももの凄い睡魔がきてその場に倒れこんだ――。
「危なかったよ! 冷や汗ものだよ」
「本当だな、もし見つかったらお前もあいつらと同じ運命を辿ることになるからな」
「冗談でもやめてくれよ! あいつらのようには死んでもなりたくないよ」
男達の声が聞こえ、俺は瞼をゆっくりと開いた。そこには白衣を来た老人と着ぐるみの顔の部分を外した男性が立っていた。
(……動けない!? しかも喋れない?)
「ようやく目を覚ましたか? 動けないって? それは麻酔をしているからさ。急だけどもうすぐ手術するから、これから頑張って働いてくれよ」
(何を言っているんだこの人は?)
俺が不思議そうな目をしていたのか、着ぐるみを半分脱いだ状態の男性が顔を寄せて見下すような目で
「ほんとゴメンな! お前はこれから記憶を消されて着ぐるみになる手術を受けるの! それから訓練してデズニーランドの着ぐるみとして一生働くの! ガッハッハッハ! そいじゃ今日はお先にあがらせてもらいまーす。お疲れ様でした!」
(記憶を消す? 着ぐるみになる? 一生働く?)
「もうそろそろお前さんの彼女の手術も終えたみたいだから、お前さんの番だな」
彼がそう言うと俺を乗せた台車が動き出した……
俺は混乱しながらも必死に体を動かそうとするが少しも動けない。必死に叫ぼうとするが叫べない。
(助けてくれ! まだ就職したばかりだし彼女ともこれから…………嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)
僕が心の中で叫び続けても、誰も返事はしてくれない。
(誰か助けてくれ……)
「わぁー! プーちゃんだぁ! お母さん写真撮ってぇ」
彼は今日も何も考えず無邪気に着ぐるみとして働いている
遊園地での見慣れない着ぐるみにはご用心を……




