番外編その1:生徒会室の噂話、どこからが本当ですか?
リサ×アイラです
EP1をお読みになった後にお読みください。
それ以上はなにも言わない……
いつもの生徒会室。とはいえ今日は私とリサのみで書類仕事をしている。
私は時折飽きて空中にペンやら消しゴムやらをふわふわと浮かび上がらせながら目の前の書類にサインしている。
「会長、真面目にやってください」
「へいへ〜い、だって退屈なんだも〜ん」
「生徒会として重要な仕事ですよ、退屈とか言わないでください」
渋々浮かび上がらせたペンたちを掴み、目の前の書類に目を通す。
……?ちょっと待って、この立案……
「リサ、ちょっといい?」
「何か不備でもありましたか?」
「いや、不備というか……文芸部が人集めて再建したいって立案が来てて」
「……文芸部、ですか」
そう、文芸部といえば先日例の違法エナドリの大元。とはいえあれは何十年も前の昔の話。今の生徒にはミリも関係していないと思う。
「まぁ今の生徒が昔みたいな魔法使い集団じゃないならいいんじゃない?」
「一応名簿も確認しましたが、私たちで把握してる魔法使いは1人もいません」
「それならいいんじゃない?活動内容はっと……」
・短編・長編小説の作成。
・季節のテーマやお題に沿った作品づくり
・部員作品を集めた「部誌」の編集・推敲・校正
・部員同士で作品を読み合い、感想や改善点をフィードバックする批評会
「特に問題はなさそうですね、承認して構いませんよ」
「はいは〜い、承認っと」
さらさらっと生徒会長の承認欄にサインをする。
この時は思ってもみなかった、この文芸部が『再び』暴走することを……
またとある日の生徒会室。今日は5人メンバー揃っており、各々表向きの仕事をしたり、魔法関係の仕事をしたりなど、まったりとした時間が流れてる。なお、セナはいつも通り使いっ走りにされてる模様。
そんなまったりとした空気破るように、セナが購買の焼きそばパンととある冊子を抱えて飛び込んできた。
「はぁ、はぁ、ねえちょっとこれ見……いや待って!!アイラちゃんとリサ副会長以外!見て!」
「「「「「「は?」」」」」
なんだその訳のわからない限定的な見せ方は。
仕方ないので私たちは席に座ったまま。セリアとノアとタクトがセナ専用(にいつの間にかなってる)ソファーを囲み、冊子を覗く。
「なるほどこれは……」
と、メガネを直しながら所在なさげに彷徨き始めるノア。
「あらあらまぁまぁ」
と面白そうに微笑むセリア。
「うわあああああ!!こ、これはまずいですって!」
と何故か慌てるタクト。
いや本当に何事?
全く状況ができない私たちをよそに他の生徒会役員は各々の反応を見せている。
相変わらず彷徨くノア。「ちょっともう一回見せてもらえないかしら、うふふ」と楽しそうなセリア。顔を真っ赤にしてソファーに伏せるタクト。
いやいや全く状況が理解できないんですけど!?
痺れを切らしたリサが立ち上がり、ソファーに歩み寄る。
「一体なんだというのですか……ってそれ……文芸部の部誌じゃないですか」
文芸部の部誌?
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!ダメダメリサ副会長たちはみちゃダメ!!!!」
「そう言われると見たくなりますね」
「だからダメだって!!」
すばしっこく逃げるセナにリサは最終奥義を繰り出す。
「冷気よ集いて、自由を奪え《アイシクル・タッチ》」
セナの指先が白く凍る。
「あーーーーー!!リサ副会長のずる!!魔法使えないアタシに対してそれは反則でしょ!!」
そんな抵抗を無視してリサはセナから部誌を取り上げる。
「そんな大騒ぎするなんて……一体何が書いてあるというのです」
か、まで言い切る前にリサの動きが止まる。
メガネは反射してその眼差しは一切私からは見えない。
「…………」
無言でページを捲るリサ。
さっきまで半分笑い転げてた生徒会メンバーも流石に凍りついた。
「……生徒会権限でこの部誌の発行を即座に停止します、セナ。ついてきなさい」
「は、はぁい……」
スタスタと生徒会室を出るリサと、その後ろをトボトボ歩くセナ。
「ちょっと待って!?内容知らないの私だけ!?」
「見ない方がいいですよ」
「んふふ。会長にはちょ〜っと早いかもしれないわ」
「あれはやばいっす……」
そう言って各々の持ち場へ戻る生徒会メンバー……一体なんだっていうのよ……
「ただいま戻りました」
夕暮れの生徒会室。セナは直帰したようで、他のメンバーももう帰宅している。
私?あまりに内容が気になるから残ってたに決まってるじゃない!
「部誌の発行は停止できたの?」
「ええ、即座に頒布を止めさせ、押収できる限り押収して、全て焼却炉に投げ込んできました」
と、言った瞬間だった。
一冊ポロっとリサの手元から部誌が落ちる。
「あっ」
________逃すか!
「ストーーーーーーップ!!」
即座に部誌に凝固魔法をかけ、音速で駆け寄り拾い上げる。
「アイラ!待ってくださいそれは……というか魔法の無駄遣いをしないでください!!」
「さっきリサもしてたじゃん!どれどれ〜?って………ええええええええええええ!?」
タイトルには『放課後、生徒会室の施錠は下りたまま』、表紙には私とリサが向き合って手を取る絵が描かれてる。
私の脳の処理が追いつかない。いわゆるこれって……
「……コホン、私たちを主題とした『同人誌』です……」
だよねぇ……
内容を見るのが怖いけど、一応ここは会長として学園の風紀が乱れないように内容を……
『いけないリサ……!こんなところで……誰が見てるかもわからないよ!』
『大丈夫ですよ会長、ここは誰も寄りつきません。だから……』
と副会長は会長の顎に手を添え……
________ってこんなの見てられるか!!!!!!
「はぁ、はぁ……文芸部の結成を許可するんじゃなかった……こんなもの書いてるなんて……」
というか……
「待ってリサ、さっき全部押収したものは焼却炉にって……」
リサの顔色がガラッと変わる。
焦ったような、恥ずかしいような。
「そ、それは!!生徒会として証拠品は残しておかないとと思って!!」
いやでも一冊でも残ったら嫌でしょこんなん……
はぁ、とため息をつきながら私は自分の席に戻る。
リサは固まって動かない。
「おーいリサ、リサに凝固魔法はかけたつもりないんだけど〜?」
と、聞くと聞いたこともない大声で
「あ、アイラはこれを見てなんとも思わなかったのですか!!」
と言ってくる。
拍子抜けする私。
「な、なにもって……文芸部の奴らがバカやってるなぁとしか……」
何故かわからないが気まずい沈黙が流れる。
リサはツカ、ツカと、こちらに歩み寄ってくる。
「……そんなに呑気でいいんですか? 私、いつまでも『ただの頼れる副会長』でいてあげるとは限りませんよ?」
カァっと自分の顔が熱くなるのを感じた。リサの視線はいつもの何もかもを見据えた冷たい目線じゃない。ほんのりと熱を帯びている。
「ま、待ってリサ!じょ、冗談だよね?これは創作で……」
そんな慌てる私の手をスッととり、リサは唇を寄せる。
「!?」
「創作が現実になることも……あるかもしれませんよ?」
夕暮れの生徒会室は、エアコンもちゃんとついてるはずなのに、少し暑く感じた。
や り た い こ と を や っ た
多分まだ続きます




