襲撃の爪痕 後編
小銃に打たれていた文字は『JAPAN.S.D.F』、そして製造社名も私が知るものだった。この小銃は『彼』があちらで使っていた小銃とは別物だ。しかし、そこに記載されているものの意味は同じである。
つまり彼らはあちらの世界の軍属だったということ?
正直、私は混乱していた。もしかすると私が無知なだけでこの世界にはアルファベットが存在していたりJAPANと言う国が存在するのかも知れない。
「どうした。この武器は使えないのか?」
撃てないことよりも重大な事実に現状を忘れていた。
「えぇ…はい。この小銃は封印されています。何かしら解除の方法が解らない限り使用することはできません。」
使い方が解るといった手前、使えないでは説得力がなくなってしまうが私の心中は今はそれどころでは無かった。副団長に尋ねてみる。
「ヴォルガ様はこの文字に心覚えがありますか。あと『ジャパン』や『ニホン』と言う国はありますか?」
「…それは文字なのか?旧世代の文字にもそんなものは見たことは無い。それに記録が残っている範囲では、そのような国名の国は過去にも今にも存在していない。名の知れない街名であるなら聞いたことないだけかも知れぬが。」
この銃器を持った彼らはこの世界の住人ではないのかも知れない。有り得ないとは言い切れない理由は私自身のこの記憶があることだった。
「襲撃犯の彼らはレタルゥではありませんでしたか?」
「…なぜそれを知っている?奴等の体は布で包んであった。顔も殆ど潰れていたし、君はハッキリと見える距離にも近づいていないはずだ。」
正解だったようだがマズかったかな。話が不穏になってきた。
「私が知識を得る夢に出てくる人々はみんなレタルゥなのです。なのでもしかしたらと思っただけなのです。」
「夢とはなんの話だ?」
私が慌てて誤魔化していると話の間に入ってくるお父さん。そういえば家族には夢のことは話して無かったんだっけ…私はかいつまんで『お告げの夢の話』をする。
もちろん65年間別世界で生活した記憶があるとは話さない。ちょっと心苦しいが9歳の我が子が実は自分よりも長い人生経験があるなど知りたくないと思う。
「信じられない話だ。だが…」
「だが?」
「ここ数日のナイルの言動を見ていると私にも理解できない事が多いのも事実です。」
ここ数日とはいつ頃からかと副団長に尋ねられ、お父さんは少し考えた後に騎士団に召喚された日以降だと答える。
「夢のことをハッキリと認識したのは騎士団に召喚される前日でした。しかし夢自体は襲撃事件より以前に見ていたと思います。」
半分本当で半分嘘だった。全部の記憶を思い出したのは副団長に聴衆されている最中だった。でも、それでは襲撃事件の際に私が起こした言動が説明できない。記憶自体はもっと以前か襲撃事件の時までに得たものでなければ矛盾する。
…ただ、これについても今は考えるだけ無駄だと思う。そもそも他の世界の記憶があること自体がおかしいのだから…とりあえずこれ以上話が脱線していくのは私としても都合が悪いので無理矢理に元に戻すことにした。
私は他の武器も改めて見る。5つの小銃は全て同じ型式。一応全ての小銃の安全装置を試してみたがダメだった。あとはナイフが3つ、鋼鉄製のものとステンレス合金製のもの。予備弾倉は弾が半分ほど消費されている。既にどこかで使用したのだろうか。金属製の棒、先にブラシが付いている。これは長さと径、形状から銃口通しだろう。携行対戦車砲…の発射装置だけ。擲弾は発射済みで予備弾は見当たらない。この発射装置も電子的にロックされているようで照準装置も作動しない。
「正直に申しますと…」
この場にいる全員の視線が集まる。
「ここにある銃器類は今は全て何かしらの方法で封印されていて使用することはできません。使えるのはこの短剣くらいのものでしょう。この短剣は現存する鉄製の剣や槍よりも強固で劣化もし難い物だと思います。徴収して再利用できるのはこれくらいでしょうか…」
副団長は一息ため息を漏らすと私に対して質問する。
「使い方が解るのではなかったのか?」
「すみません…私の知識ではこの封印を解くことはできません。」
「それでは君は先ほどこの武器の説明で『爆発』でこの鏃が飛ぶと言ったな。」
私は肯定する。
「それでは『バクハツ』というのがどんなものなのか見せて貰いたい。」
自信満々に実射してみせようとして失敗するナイル。
「バクハツ」という言葉に興味をもつ副団長。彼はナイルとはまた違った方向性の研究者気質です。
夢の話を初めて知ったお父さん。この場ではそれ以上追求していませんが実は1人悶々としています。
次回は、お外での実験。




