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イ国の魔女  作者: ネコおす
序章 ~不思議な記憶~
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バクハツ 一

「どうしてこんなことになったんだろう。」


私は今騎士団の訓練場の広場にいる。周りにはお父さんと副団長、レナさん、そして多数の騎士の方々。


「ちっちゃい可愛い〜。まだ5、6歳くらいかな?」

「なんか初めての魔法に挑戦らしいぞ」

「懐かしいなー、初めて魔法使えた時、俺2日は寝こんんじゃったよー」

「お前初めて魔法使えたの14歳になってからだったろ」


ただの野次馬だった。


私は9歳だし、魔法は初めてじゃないし、寝こんじゃったのは残念だし、14歳まで使えなかったのは可哀想だねっ!


心の中で全部ツッコミを入れながら平静を装っていた。こういう時はビビった方が負けなのだ。




「『バクハツ』を見せてほしい。」


副団長がそう言ってもここには使ってみせる銃器はない。それにこの世界には火薬もないし、そもそも爆薬が存在しているのであれば「『爆発』を見せてくれ」など言わないだろう。


「見せたいのは山々なのですが今説明した通りここにある銃器はどれも使用することができません。」


「君はすでに魔法が使えると聞いた。話の流れから『バクハツ』とは何かの現象のことだと推測する。ならば『バクハツ』というものがどんなものか知っている君であれば再現することが出来るのではないか。」


魔法…そっか。人のイメージを具現化する魔法であれば確かに再現することは出来るかも知れない。銃を撃つことは出来なくても求められているのは爆発だ。


私は狭い空間では危険だと伝えた結果、休憩を挟んで訓練場に移動することとなった。訓練場に移動すると、魔法の効果が判り易いよう対象として、私が丸ごと入ってしまえるような大きさの木箱が3つ用意されていた。その用意を指示した経由から話が伝わったのか訓練中だった騎士のみなさんがこの場に集まってきたのだ。


「一応聞いておくが『バクハツ』とはどんなものなのだ?」


「爆発とは発生した力が放出されることを言います。例えば水の入った瓶を栓をして焚べているとどうなりますか?」


「瓶が割れるな。そして中の水が溢れ出る。」


「それが爆発です。水が熱されて気化し体積が膨張します。瓶の中は狭すぎるので外に出ようと力が働きその結果として瓶は耐えられず割れてしまいます。こういった溜め込まれた力が外へ一気に放出されることを爆発と言います。」


正確にいえばこれは熱膨張による容器の破裂だが火薬や爆薬も基本は同じである。火薬の場合は燃焼すると高温ガスを一気に発生させる。これが水の気化とは比べものにならない速度と体積で一瞬のうちに膨張して力が放出されるのだ。銃などはこれを利用し密閉された空間にワザと力の逃げ道を作って、力の放出に指向性を持たせることで弾丸を一定の方向へ押し出すように構造になっている。


「つまり瓶が勢いよく割れる現象のことをバクハツというのだな。しかしそれが人体に穴をあけるほどあの鏃を加速させるとは思えないのだが。」


うーん、確かに熱膨張による破裂と火薬による爆発は放出される力が全然違う。熱膨張は気化による体積膨張で燃焼による熱や光を伴わない。火薬や爆薬による爆発を想像するのは難しいだろう。


「実際には瓶の爆発とは威力が全く違います。言葉で説明して納得して頂くのはやはり難しそうですね…」


できればこれで引いて欲しかったのだがそういう訳にもいかないようだ。そもそも爆発を魔法で引き起こすなんてどうすればいいのだろう。


「君は火の魔法をすでに使ったことがあると聞いた。実際に今使えるか?」


お父さんから聞いたのか何故か副団長は私が魔法を使えることを知っているようだ。とりあえず本当に魔法が使えるか見せてみろってことだろう。私は指先にイメージを集中させる。広がり過ぎないように、密度は薄め、運動は徐々に…


私の指先の数センチ先に火の玉が出来上がる。これを分かり易い炎になるまで酸素の供給量も調節して徐々に炎を大きくする。


ジジジボボボボ…


私は十数秒くらいかけてガスライターのガス調整を弄ったかのように徐々に大きくしていった。


「これでよろしいでしょうか?」


視線を副団長に向けそう問うと「あぁ…」と気のない返事をする。視線は私ではなく私が起こした炎の方へ向けたままだ。よく見ると周りの騎士の人たちもお父さんもレナさんも全員炎に視線が向いていた。


この世界じゃ珍しいものでもないだろうに…もしかして学舎にも通ってない子供が魔法を使えるのが珍しいのかな。ちょっとだけフフン♪と得意気な気分になる。14歳まで魔法が使えなかった騎士さんには悪いけど。


「…もうよい。君が魔法を使えるのは解った。色々言いたいことはあるが…体調は大丈夫か。」


お母さんも魔法を使ったあとは同じことを聞いていたな。使いすぎると体が痺れたり意識が朦朧とするらしい。でも今のところ私の体には異常は感じられない。


「お気遣い有難う存じます。でもこれくらいは平気です。」


お気になさらずと付け加えて、では本番に入るとしよう。


まず、銃器の威力を知りたいのであれば、求められているのは破裂や爆熱ではなく化学的な爆轟だ。だけど火薬や爆薬を生成するのは正直難しい。黒色火薬の原料は硝石と硫黄、炭素だから作り出すのは簡単そうだけれど、正確な割合がわからない。綿火薬のセルロースや爆薬のニトログリセリンやトリニトロトルエンも同じだ。そもそも生成しようにも分子レベルの構造はさすがに覚えていないし、ぶっつけ本番で使う気にはなれなかった。土壇場で正しい配合をするのは難しいだろう。


悩んだ挙句、すでに慣れたものに頼ることにした。

まずは火を起こす要領で炭素を木箱の中に生成する。ただし一箇所に固めるのではなく炭素粉を木箱の中全体に分散して作る。炭素粉が充分に行き渡ったら、今度は酸素を生成して木箱内の酸素濃度を高める。



これで準備は整った。


前回までと変わって、なんだかお披露目会のような雰囲気になってしまいました。

解る人は解ると思いますがナイルがやろうとしてることは、かなりヤバいです。


次回は副団長視点です。


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