双剣士ダルクルトとみんなと私
私たちのパーティーは実質Eランク。「実質」が何かというと召喚者特約や国外者規約など色々な調整が入るため。(なので討伐報酬が月割で上乗せとか、2年経ったら武具の返却義務があるというような「実質」とは無関係ね、念のため。)
ランクが上級や中級ではないし、クエスト生活はわりと平凡だ。
そんな冒険者パーティーの私たちのリーダーは、双剣士ダルクルト・パッシェル。ダルクルトはね、なんて言ったらいいんだろう。一言で言うとイケメン。うん。いつか魔王を斃すという決意を国王の前で表明した冒険者は「勇者」と呼ばれる。双剣士ダルクルトが時として勇者とも呼ばれるのはそのためだ。
私とは、同じ日にこのセレンテルー王国に召喚されたり、国王さまの前で模擬試合を披露した、とっても同期召喚者な関係。
何度も言うけど、勇者さまな上に、私好みなイケメンで、本当ならどこかの女性とすぐにでも恋愛関係になりそうな男子。だけど場合によっては不愛想とも言えるくらいにずいぶん無口なので、多くの女性から見ると(勇者を名乗ってるのに)関係は冒険者止まり。不思議だなって思う、男子って。
異世界なんだから不思議な事はいっぱいあるわけで、その辺は私にもあんまりよく分かっていない。
ダルクルトのの職業は双剣士。そして私ミレフィアの職業は魔剣士、そう2人の剣士がいる。
戦う魔物の種類によっては配置換えもするとして、このパーティーの場合は私たち2人の剣士が前衛となる。戦士がいないのはやや防御が手薄そうだけど、なんと聖女さまであらせられるベアトリーチェの真法がうんと強力なので、そこはわりと余裕があったりする。
獣人ルネアンは四足疾駆移動で斥候をこなせる上に、野性的な俊敏さで接近戦力として頼もしい。
エルフ女子のリェリュスや、まだまだ年長組のエルゼは討伐クエストにはほとんど連れていかない。だけど、弓矢や、秘めた魔力は将来の戦力として有望な感じ。
私ミレフィアはともかく。ルネアン、ベアトリーチェ、リェリュス、エルゼ、この4人がね、とても可愛い女の子たちなんだ。
それなのにダルクルトは、浮かれたようなそぶりは全然見せない。いつもどこか沈んだ様子を見せる。まるで約束された相手といつまで経っても会えないでいるような、そんな感じ。一体どんな約束の相手がいるというのでしょうか、ダルクルトには。
もしルネアンがお好みなら、獣人がお好きな男性だったという事になって、人間の私は諦めがつく。
「ダルクルト? そういう獣人愛は別に感じにゃいにゃ。」
もしベアトリーチェがお好みなら、そうなったら 勇者さまと聖女さま だもの、お似合いよね。単なる同期召喚者の私なんかは諦めがつく。
「ダルクルトの事? 妾にはご興味なさそうよ。決まってるじゃない。」
もし、リェリュスやエルゼがお好みみたいに言うなら、歳の差恋愛というか妹愛というか。私にはよく分からない領域なので私は諦めるとしよう。
「ダルクルトお兄ちゃん、みんなと同じくらい好きだよ。」
「あやつはまだぴーよぴーよのひよっこよのうそれがどうかしたのか。」
そうっか、この女子5人の中にはダルクルトの好みが……いないのか。
「あのさ、ダルクルト。サブパーティーの子たちと一緒に合同模擬戦しようよ。」
「そうだな。」
合宿訓練場の草原。ダルクルト、私ミレフィア、ルネアン、ベアトリーチェの4人パーティーが、サブパーティーと順番に木剣を交える。非戦闘員のリェリュスとエルゼは見学だ。
第1波。ルミエルダ、ヴェルディナ、ファーニャ、フィオルネ。
第2波。フェルネシア、シェルファー、ラグネシエ、セランツァ。
第3波。アルヴェニ、ルマディーネ、リュネファ、オルディセーヌ。
第4波。エルディ、ルヴァニエ、ティアグ、ファルネデ。
第5波。キャルファナ、エルネリシェ、レイヴェル、クラマール。
う~ん、何だか典型的なソシャゲ戦闘、「ウェーブ制バトル」みたいだ。
「は~いそれじゃ次は、集団戦です。5組20人全員、私たちを取り囲んでくださ~い。」
私たち4人を中心にして、彼女たちが円形に並ぶ。
う~ん、これだと今度は「サバイバル制バトル」みたい。
「あ、そうだ。女の子はみんな取り囲み側に加わる?」
「おもしろそうだにゃ。」
「妾もです? それじゃうふふ。」
見学していたリェリュスとエルゼも、みんなから呼ばれる。
「……どうする気だ。」
「はい皆さん、お待ちかね~。みんな、ダルクルトさんの事は大好きですよね?」
「は~い。」
魔物討伐がある異世界というものは命懸けだったりする状況が珍しくない。
そうなの。この女子たちは1人の例外もなくそれぞれ、ダルクルトと私を含む道中やクエスト中に、命を助けられたりした経緯の上で、自らこの勇者さまへの献身を望んだ結果ここに集まっている女子だ。
「ではダルクルトさん、あなたは誰の事が好きなのでしょうか。なんと総勢24人。スーパーハーレムお見合いの開幕で~す。」
う~ん、自分で企画していて何だか分からなくなってきた。
私は何か物を取りに行くふりをしてみんなの輪を離れて、こっそり人差し指と親指を[ ]の形にしてスマホを出現させる。ステータス・マネージャ・ホログラムの略。
ホログラム内の直通電話アイコンをタップすると女神さまに音声がつながる。
「あのう女神さま、ちょっと質問があるんです。」
「あなたか。どうしたそろそろ文通相手でも見つけたのか。」
「この異世界ってゲーム世界ですよね? みんなステータス・ホログラムを当たり前に使ってるし。」
「そうだよ、あなたの希望に合わせてな。待ち日数が少ない中から選んだ、冒険者じゃない人生でも生きていける恋愛要素もある冒険者たちの異世界だ。」
「ウェーブとか、サバイバルとか、ハーレムとか。どのゲームジャンルなんですか?」
「……待て待て、ハーレムジャンルは違うぞ? そこは。」
「え~~? でも私のパーティーってすんごく女子だらけですよ。2人や3人じゃないです。」
「いやそこの異世界はさ、男子が多いパーティも男女同比率パーティーも組める。ただミレフィア、あなたには恋愛が成就する取り計らいがされてるはずなのよ。何か思い当たりはない?」
「わ~、そうなんですか。ちゃんと教えてくださいよ。」
「恋愛の加護は私の担当じゃなくて、出雲のあいつの担当だから。専門的な事は分からないし個人情報的な事もあんまり聞けないけどさ。」
「私、努力していいんですね?」
「そうだと思うよ。」




