表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/36

精霊の名前

「ふう……」


 砦の中にある一室に案内されて一人きりになり、私はようやく一息ついた。


 あーーーー! 緊張した!

 まさかジルが王子だったなんて……。


 けっきょく廊下の途中で別れるまでほとんど言葉を交わすことはできなかった。

 今までどおりにしろなんて言われても無理なものは無理だ。


 その後この部屋に連れてきてもらう間にガリアードさんに教えてもらった話によると。


 現ロミア国王には五人の王子と一人の王女がおり、第五王子のジルだけが側室の子らしい。

 そのため王位継承争いに初めから参加していないも同然で、それもあって王宮の外には存在も知られていなかった。


 ただ、疎まれているとかそういうことはなく、むしろ兄弟の全員と仲がいいのはジルだけというほどらしい。


 そんなジルは、魔法学園卒業後はいくつかの軍事拠点を任されることになっていて、この砦はその中の一つなのだという。


「はー……」


 自然とため息がもれる。


 なんだか急にジルが遠い存在になったように思えた。

 いや、もちろん男爵という時点で、庶民の私からすれば充分遠い存在だったんだけど。

 王族だなんて……。


 そこで思い浮かぶのはセウェルスのことだった。


 思い返してみれば、彼と会話らしい会話をしたことはほとんどない。

 彼の地位と美貌に惑わされ、緊張してばかりだったので気づけていなかったけど。

 セウェルスと交わしていたのは、どれもこれも『王族』と『庶民』の身分を弁えた常套句ばかりだ。


 そこに人間同士の血の通った言葉などなかった。


 ……ジルとも、これからはそうなってしまうのだろうか?


 もちろんジルがセウェルスとは違うということはわかっている。

 けど、それでも……王族と、聖女でもない庶民の自分との間には。埋めがたい溝があることも確かだ。


 そう思うとたまらなく寂しい気持ちになった。



『ねえねえ、もう出てきていい?』



 突然声が聞こえてすごく驚いた。

 そうだった。すっかり忘れていた。


「ごめん、もう大丈夫だよ」


 私がそう言うと、目の前に精霊が現れる。

 手のひらサイズの、背中から羽を生やした男の子の姿だ。


 精霊は普段はほかの人には見えないんだけど。

 私の目には見えてて、キラキラしててすごく眩しい。

 特に馬車の中だと距離が近いので目が開けていられないくらいだった。

 なのでしばらく姿を消してもらっていたのだった。


 精霊は楽しそうに部屋の中を飛び回った。

 キラキラの光が尾を引くように辺りを照らす。

 とても綺麗だけど、やっぱり眩しい。


「そのキラキラって消したりできないの?」

『このキラキラはアリシアの魔力だよ。アリシアがおさえれば消えるよー』


 え、うそ!?


 私は自分の魔力の流れを探る。

 すると、私から精霊に魔力が流れて、それがキラキラとなって溢れているのがわかった。

 溢れたキラキラは空気中をただよったあと、少しずつ私に戻ってくる。

 それですぐには気づかなかったみたいだ。


 魔力の放出をおさえてみると、少しして精霊から溢れるキラキラも減った。

 これくらいなら眩しくないかな。


『完全におさえるとボクが消えちゃうから、それはしないでほしいな』

「わ、わかったわ。でも消えるってどういうこと?」



 ――精霊という存在は、ふつうは目に見えるものではない。


 精霊は、人間が魔法を扱うのを手伝ってくれている。

 精霊と親密であればあるほど強力な魔法を使うことができる。

 しかし、精霊と意思疎通できるほど親密な人間はいない。


 人間が扱える魔法は、だからその程度の低レベルな物でしかないのだ。


 聖の精霊以外にも地水火風、それに闇の精霊がいると言われているけど、その目撃証言はほとんどない。

 竜の血を引く勇者が精霊と会話できたとか、魔王の末裔が闇の精霊を使役していたみたいな話があるけど、ほとんどおとぎ話みたいなものだ。

 精霊がどういう存在かということは、魔法学園でもほとんど学ぶことができなかった。



 だから、精霊が消えてしまうというのがどういうことなのか私にはわからない。


『うーん、なんて言えばいいのかな。ボクたちはどこにでも存在していて、全体で一つなんだ。その中からときどき、ボクみたいなのが分かれて出てくる。でも、ボクの存在は今アリシアの魔力に支えられているから、アリシアがボクへの魔力の供給を絶っちゃうと、ボクは聖精霊のところに戻ってしまう――消えてしまうってわけ』


「消えちゃったらもう戻ってこないの……?」


『普通はね。でも、アリシアとボクの結びつきが強ければ、ボクのカタチが残って、戻ってこられるかも。たとえば、アリシアがボクに名前をつけてくれるとか』


「名前かぁ……」


 私は少し考える。

 せっかく出てきてくれたんだから、できるならいなくなってほしくない。


「じゃあ……ルーでどう?」


 私がそう言うと、聖なる精霊――ルーはキラキラを撒き散らしながらくるくる回り始めた。


『ルー、いいね。ルー。ありがとう、アリシア!』


 嬉しそうに飛び回るルーを見ていると自然に笑みが溢れる。


 なんだか孤児院にいたころのことを思い出した。

 部屋は狭くて、うるさくて、でも寂しいなんて感じることはなかったなぁ……。

次は午後9時更新の予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ