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聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


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聖の精霊

「ジル様、いったい何が……?」


 御者さんが話しかけてきたので、私は慌ててジルから離れた。


 御者さんも大怪我していたのだけど、すっかり治っていた。

 本当に、なにが起こったの……?


『うまくいったみたいだね!』


 うわ!


 私の目の前に、突然手のひらサイズの小さな男の子が現れた。

 背中からは羽が生えていて、それが羽ばたくたびにキラキラと白い光が周囲に散る。


「あなたは誰……?」

『やだなぁ、君がボクを呼んだんじゃないか』

「私が、あなたを……?」

『だって君、聖女でしょ』

「え……あなた、もしかして聖精霊なの!?」

『そうだよー』


 私の目の前をひらひら飛び回る男の子――聖なる精霊。


 どういうこと??? 


 私は聖女の資格を剥奪されて、王都で聖女の位を受け継いだのはクリスティナだ。

 聖なる精霊はその即位式でクリスティナに宿ったはずなのに……。


「アリシア、誰と話してるんだ?」


 ジルが心配そうな顔で話しかけてきた。

 どうやら、私以外にはこの精霊の姿は見えていないらしい。


 私は今起こったことを話す。


「聖なる精霊が……? じゃあさっきのは正真正銘、聖女の治癒魔法だったってことか?」

「そうみたい……」


 ジルと御者さんは信じられないという顔でお互いを見る。

 そりゃそうだよね。

 私だってまだ信じられないもの。


 私は精霊に問いかける。


「あなたはどうしてここにいるの? 聖女になったのはクリスティナでしょ。彼女に宿らなくていいの?」

『クリスティナ? 聖女は君じゃないの?』

「私は、そのはずだったけど、その資格を剥奪されて……」

『よくわからないけど、聖女に一番相応しいのは君だよ。何年も前から、ボクも仲間もみんなそう思ってた』


 聖なる精霊は、無邪気な笑顔を向けてくる。


『いつもは誰でもいいんだ。みんなそんなに違いはないから。だから人間が選んだ聖女に宿るんだけど、今回は君が圧倒的だった。君が一番、ボクたちのことを理解してて、一番優しくしてくれそうだったんだよ』



 ――聖なる精霊と聖女の関係は、初代エルテシア国王の時代に始まったと言われる。


 戦乱を収めた国王は、疲弊した人々を癒すために各地を巡っていた聖女のために教会を建てた。

 聖女はその地を拠点としてさらに多くの人々を癒した。

 その聖女が亡くなるとき、聖女は精霊にこれからも人々を癒してほしいとお願いした。

 国王は、精霊の力を具現化するための聖女を代々選出することを精霊に約束した。


 それ以来、聖なる精霊は何百年にも渡って歴代の聖女に宿り、その力を与えてきたのだ。



 でも。

 精霊は初代聖女以外にその姿を見せることはなかった。

 それでも歴代の聖女は聖魔法を使えたので、人々は聖女に精霊の加護が与えられていると知ることができた。


 その精霊が今私には見えているのはどうして?


『それはボクたちが君のことをすごく気に入ったからさ。さっきの魔法、初代の聖女と同じくらい気持ちよかったよ』


 魔法が気持ちいいという感覚はよくわからないけど、術式に無駄がなくてスムーズみたいな意味だろうか。

 だとしたら嬉しい。


 嬉しいけど、このままだとちょっと困る。


「ねえ、ここにいる二人にもあなたの姿を見せてあげてくれない?」


 そうすれば、二人にも私の言っていることが本当だってわかってもらえるんだけど。


『うーん、ちょっとだけなら』

「本当? お願い!」


 私が頼むと、精霊はうなずき、ジルと御者さんの前をひらひらと飛ぶ。


 二人はしばらく不思議そうな顔をしていたけど、すぐに精霊が見えるようになったみたいで、目を丸くして精霊の動きを追った。


「これが聖なる精霊……!」

「信じられません……こんなものを見られる日が来ようとは」


『もういいかなー』

「うん、どうもありがとう」


 精霊は二人の前から離れて私の肩に飛び乗ったのだった。


 よかった。

 これで私が幻覚を見ているのだと思われないで済む。


「驚いた……けど、これでアリシアは精霊から直接、聖女だって認められたことになるんだよな」

「そうだね」

「どうする? 今からエルテシアに戻れば、誰もお前が不正を働いたなんて思わないぞ」


 治癒魔法が使えて、お望みとあれば聖なる精霊を見せることもできる。

 たしかにこれなら今度こそ私は聖女として受け入れてもらえるかもしれない。


 けど私は首を横に振った。

 今はあの場所に帰りたいと思えなかった。

 

 心の整理ができていない。

 たとえエルテシアのみんなに受け入れてもらえたとしても、今のままでは心にモヤモヤを抱えることになるだろう。

 そしてそのモヤモヤはずっと消えてくれない気がする。


 そう告げると、ジルはわかってくれた。


「それなら予定どおり俺の実家に向かおう。スティーブ、悪いけど、近くの宿場まで馬を借りに――」


 と彼が御者さんと言葉を交わすのを聞きながら、私はふと思った。


 聖の精霊がここにいるということは……。


 クリスティナ――王都の聖女はどうなっているのだろう?

続きは明日となります。

引き続きよろしくお願いします!

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