表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非日常に振り回される、在り来たりな日々の冒険譚  作者: SUNA
第一章 こんな日々の冒険譚
9/51

7 久しぶりの顔ぶれ ~味方(?)と言えど油断は大敵です~

 2/26に大部分の修正をさせて頂きました。


内容は変わりませんが、一部文章や表現が変わっている個所は在ります。


 7 久しぶりの顔ぶれ ~味方(?)と言えど油断は大敵です~


 今日は『D.V.R』始めた当初から交流のある知り合いに誘われて『ヴァスザード』の国のフィールドに狩りに行くことになっていた約束の水曜日。


 ヴァスザードの首都に近い街『ヴィシド』の北門を待ち合わせ場所に、そこに着いて一応アイテムや武器防具の最終チェックをしているところだ。


 昨日の内にリアにお願いして鉱山ダンジョンからヴァスザード近くまで移動して身分証で国に入り、そこから再びリアにお願いしてこの街の近くまで移動して来ました、本当にリア様様です。


 お礼に昨日はログアウト直前まで本来の姿で念入りにブラッシングさせて頂きました。


 ただ毎回どうしても思ってしまうのが、国や街に入るのに身分証の提示が必須なのはどうにかならないかと言う事、出来るのなら国の検問は飛ばしてこの街の近くまで一気に来れそうなのに。


 実際使わずに超えても問題はなさそうなのだが、何かの拍子でトラブルになった時の密入国で更なるトラブルになるのは避けるに越したことはないから、思うだけでやらないけど。


〈マスター、微妙に見られてますね。バレてる風ではありませんが、もっと隠蔽機能の高い外套を作っては如何ですか?〉


〈……そうすると多分知り合いにも見つからなくなるんじゃないか?〉


〈そこは、特定の人物に見れる機能を……〉


 なんかジルが無茶なこと言い出した。そもそもがこの外套だって結構な性能なのに、これ以上を頼むとなると……作ってくれそうな知り合いに心当たりが無い事もないが、どれも癖のあり過ぎる人物ばかりで、その代償が恐ろしいことになりそうだ。


〈……頼むんならどっかの種族の王族クラス? 外套ならドワーフか妖精か、でも隠蔽の機能なら魔族か精霊か……どこの王も主のお願いは断らないけど……〉


〈そうですね。むしろ嬉々として聞きそうですが、そのまま暫く帰してくれない方ばかりでしたね〉


 敢えて自分が考えないようにしたことを、言葉にされると何だかダメージが大きいなぁ。


  ◇ ◇ ◇


 装備などの確認も済ませ、2人とのそんな精神的に微妙な脳内会話で待つこと数分。


「待ったか?」


 行きかう人の波から抜けて、20代後半を思わせる深い緑の髪をオールバックに撫でつけ両耳の上には羊のような角が特徴的な、自分より大柄で鎧姿の男性魔人族の美丈夫な剣士が声を掛けてきた。


 彼が『D.V.R』を始めた当初より交流のあるプレイヤーでチャットの相手でもある、今では大きくなった古参の有名ギルド『デイブレイク・バード』のギルドマスターを務める『ビルド』。


 中々に癖のあるメンバーをそれなりに上手くまとめているらしいが、あまりギルドマスターらしい姿を自分は知らない。


 先にも伝えたとおり魔族の剣士で余り魔法は得意ではない、どちらかと言うと体力馬鹿。


「そんなに待ってないよ。久しぶり、その様子なら元気そ――うぉ!」


 自分も手を上げて返事を返す途中で、警戒はしていたがタイミングをずらしてきた丸っこい生き物に体当たりされて自分は尻もちをつく。


〈こやつめ! 毎度馴れ馴れしい、切り裂いてくれようか!!〉


〈マスター、いい加減に丸焼きにしましょう〉


〈いや、止めて。知り合いの契約精霊を勝手に殺さないでって、毎回言ってるじゃないか! 頼むから静かにしててくれ〉


 途端にごちゃごちゃ言い出した2人を取りあえず黙らせて、自分はこんな雰囲気の中頬擦りしてくるある意味強者な子熊姿のビルドの契約精霊を抱き上げながらなるべく何事も無かった様に立ち上がる。


「毎度のことながら、スマン。ほら、コットン、戻ってこい!」


 因みに契約精霊とはスキルではなく精霊と相性がいい者が結べる契約で、お互いの意思で契約が可能なのでテイミングする従魔よりはパートナーに近くお願いをして精霊魔法も使える分契約を試みる人も多いが、見える人が少なく出会う事も稀な上に相性が合うのはもっと稀で契約しているプレイヤーは全体の5%に満たないとか。


 なのでさっきの自分は、精霊の見えない人には行き成り何もない所で転んだように見えたのだろう。


 基本精霊は契約主が召喚してない時は精霊の国にいたりで常に傍にいる訳ではないのだが、中には勝手に来て遊んで行ったりするのもいて、その代表格がビルドの契約精霊『コットン』。


 そして余談だが自分には契約精霊はいない。何でか好かれ過ぎて契約希望者が殺到したため絞るのが難しかったと、精霊の王様に直に謝られた。


 それに関係あるようなないような、ジルの宿る指輪はこの精霊の王様からとある褒章で貰ったもので、その時にさりげなく王様に求婚されたのは謎であったが当然速攻で断った。


 それの嫌がらせか、指輪は左薬指に無理やり嵌められて特殊な魔法が掛けてあるらしく抜けないので場所を変える事も出来ない、本当に大人げない。


「ビルド! 貴方はまたやっていらっしゃるのですか」


 自分の腕に居たコットンが消えたかと思えば、ビルドの後ろから現れた黒髪を結い上げた女性龍人族タンカー兼侍の『カナデ』にビルドの頭の上に放られた様子だ。


 龍人族特有の角と頬に鱗が見られるが、侍という役職に合った和装に鎧姿の凛々しい雰囲気で自分よりほんの少し低いくらいの身長のこちらも美女。

 

 なんでか最初から自分に様付で、何度止めてと言っても変わらないある意味猛者。結局自分の方が諦めて今に至っている。


「お久しぶりで御座いますわ、相変わらずお変わりないご様子で」


「うん、本当に久しぶり。カナデも元気そうだね」


 失礼ながらも自分はフードを被ったままでの挨拶、これが初対面なら流石に対応は変えるが気心知れた相手な上に、この有名人たちと居るだけで目立つのであまり街中では顔を晒せない。


 現に行きかう人の中には態々足を止める人も少なく無いが、カナデの後ろで頭に乗ったコットンに藻掻かれてワタワタしているビルドの存在が大きいのかもしれない、何せ精霊が見えない人には一人で藻掻いてる痛い人だしな。


「おー、オレは3番か?」


「えー! リジンより少しだけボクのが早かったー!」


 2人の後ろから男性ドワーフ族の戦士兼タンカー『リジン』と女性ダークエルフ族のレンジャー『ニーナ』が揃って顔を出す。


「別に予定時間前だし、どっちが先でも問題はないだろう? 二人とも久しぶり」


 大抵のプレイヤーもこの世界の住人も美形揃いなので自分のようなモブ顔はそういった意味で逆に目立つのか?


「久しぶりー!」


「久しぶり!」


 ニーナは片手を上げて近づき何がしたいのか読めた自分も手を上げれば、パチーンといい音を立ててハイタッチ、ダークエルフ特有の金髪おかっぱの褐色肌で身長はカナデと同じくらいか、この面子で(現実もこの世界でも)一番年下のボクっ子、そして言動に見合わないプロポーションは抜群の美少女。 


「うむ、相変わらず良い尻だ」


「っ!?」


 そんなニーナとハイタッチを交わした直後、外套越しではあるが尻の辺りを無遠慮に撫でられる感触に咄嗟に距離を取り振り返れば。


「リジン!」


 本当に油断の隙も無く、いつの間にか後ろに回っていたリジン。


 リジンは長髪ドレッドを一纏めにして、髭は生やしているがカッコイイ男なのに、このセクハラ癖はどうにかならないのか。因みに、このメンバーでは一番背は低い、と言っても自分より10㎝くらい低いだけだけど。しっかりとした鎧を着こんでどっしりとした体つきは流石盾職なだけはある。


 追撃の為か、未だに手をワキワキさせて迫って来ようとするリジンの後ろには人影が。 


 ゴっ×2!! 


「「いい加減にしなさい~(なさいませ)!」」


 鞘さら刀を構えたカナデと鈍器と化した杖を持った笑顔の怖い女性エルフ族の『マリル』プラチナ金髪で腰までのストレートのこれまた美少女、この世界でリジンの次に年長らしいがニーナより少し小柄で見た目は一番幼いかもしれない。後ろ裾の長めのフードなしのローブを着込んだ殴り系の職ではなく純粋に魔術師ソーサラーなのに、自分の前であの杖は身内限定で鈍器になることが多い。


「リジン……いい加減に懲りればいいのに、どうにかならないんですかね?」


 痛みに呻くリジンを見て、マリルの横から現れた青髪短髪のこれまた美形のあきれ顔が男性妖精族の軽鎧の魔法剣士『ヤイト』。


 ビルドに次ぐ長身で優男風、実際の狩りの時にも笑顔を絶やさず、PvP等で対戦すると大変恐ろしいらしい。自分的にはたまに見せる無表情の方が怖かったりするんだけどな。


「えぇ、本当に~。いっそ一度召されれば治るんじゃないですか~?」


「同感でございますわ、今回の狩りでリジン限定で事故でも起きませんかしら」


「それ、フラグじゃないー? リジン限定で済めばいいけど、ボクは巻き込まれるのは嫌だからねー」


 マリルに加わりカナデまで物騒なことを言い出しニーナは中々に鋭い。


 毎回の事を思えば自分もリジンに懲りて欲しいのは同意ではある、いい加減にリアとジルの雰囲気が怖すぎて後半の事故云々は冗談にならなさそうで、本気でフラグにならなきゃいいけど。


「マリルもヤイトも変わらない様子だな?」


「そうですね~。そちらも()()と変わらない様子で~」


「確かにお久しぶりです、僕はこの一月で剣の腕は磨いてますよ?」


 緩い喋りのマリルの杖を鈍器にする姿のギャップもだが、ヤイトの優し気な雰囲気に似合わないバトルジャンキーさのギャップにも磨きは掛かっている様子で。


 カナデの容赦のなさとニーナの鋭さと、おまけでリジンのセクハラとビルドの抜けている様子はそこまでは変わらないかな?


 何にせよこの6人と今回は予定が合わずにここには居ないが、もう2人獣人族で男性豹人族の『ツエリ』と女性狼人族の『トルテ』を含めて自分なんかに今でも付き合ってくれる『D.V.R』での当初からの知り合いでもあり、ギルド『D・B』(デイブレイク・バード)の初期メンバーでこの世界でも名高い面子でもある中々の強者たちだ。


 一応リアの存在には気づいてはいるらしいが、敢えて紹介したことはない。実際に自分が聖獣と一緒に行動しているのは公にされている事ではないし、リアが同行するきっかけになった時には『D・B』のメンバーとは行動を共にはしていなかったので、強そうな精霊の類と勘違いはしているっぽいが、向こうから聞かれないことと自分から吹聴することでもないのでそのままにしている。


 因みにジルに関しては誰にも話していないので知らないとは思う。


 指輪に関しては(事が事だけに)聞かれたので(ポロポーズの件は勿論伏せて)話したが、その時はまだジルは存在しておらずそれ以降指輪について触れてこないので、こちらもリア同様自分から話せずにいて今に至っている。


「揃ったんなら、出るか? 準備は良いんだろう?」


 集合時間は現実時間の20時、今は19時53分と確かに少し時間より前ではあるが、コットンを脇に抱えたビルドが見渡せば、誰にも否は無いらしく自分も頷いて答える。


 藻掻くヌイグルミを抱えた剣士、見える人が見たら、結構なシュールさ加減だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ