薬師パーティーをクビになる
初めまして、1話を読んでくださりありがとございます。
強力な魔力によって生み出された未開の地下迷宮ダンジョン。
その中に栄えた都市オーディン。
ここには腕に自信がある冒険者達がこぞっ集まり、ダンジョン踏破を夢みる地である。
「キノ、君にはこのパーティーから抜けてもらう」
分厚い丸いメガネが特徴的なキノと呼ばれた青髪のくせっ毛ショートヘアーの少女。少女というより男の子ような見た目の彼女は冒険者と自称するにはあまりにもお粗末な存在であった。
ダンジョンの魔物と戦う術を持たず。魔法も使えない。
少女はパーティーの補給や雑用を一挙に一任されている薬師であった。
魔法使いが回数制限のある回復魔法を節約や習得していなかったりし場合の怪我や病気を補う際に薬師としてのキノの本領は発揮される。
しかし、それはあくまでも低ランクの冒険パーティーの中で通用する話であり、現在キノが所属しているBランクランカー達の前では薬師としての知識は無用の長物であった。
剣士マーベリック、魔法使いのイザベラ、弓のリリー、タンクのゴードン、斥候のムライ。
3年前、まだ駆け出しの冒険者だったキノは初めソロで活動して行くつもりだった。
ダンジョンに踏み入れられるのは冒険者ギルドで承認された冒険者のみである。
ダンジョンの魔物やそこに生息している草花に強い興味を持ち、詳しい研究をしたかったキノは低ランクの依頼を細々とこなしながら、第1階層、第2階層程度の魔物と戦う術を少しずつ身につけて行こうと計画していた。
そんな時にキノに声をかけて来たのが、同じく駆け出しの冒険者だったマーベリックである。
彼にパーティー加入に誘われた時のキノは嬉しかった反面。不安もあった。
薬師の知識以外で役に立たないであろう自分に「本当に良いのか?」とマーベリックに何度も確認を取った。
その度にマーベリックは「キノがいいんだ」と、キノに頷いて見せた。
心から嬉しかった。
だからこそ、キノは受けた恩に報いるため、自分に出来る最大限の事を引き受けて来た。
キノは全身の力が一気に抜けてしまいそうになるのを必死に耐えながら、重たい瞼を上げてマーベリックを見る。
引き締まった肉体に、緑の瞳に黄金の髪に透き通る肌に人懐っこい愛嬌のある容姿。
マーベリックの優しさや笑顔にキノは救われていた。
次いで、斥候のムライを視線を移す。
相変わらずの無表情であり、何を考えているかわからない。しかし、彼には十分過ぎるほどに世話になった。
戦闘に自信がなく。周りに引け目を感じるのなら、薬師以外の仕事を覚えてみるのはどうか?と細やかな雑務の手解きしてくれた。
ムライのおかげで苦手だった文章を書く事に対して苦痛が伴わなくなった。
それから自分の所属しているパーティーメンバーを見て、ゆっくり頭を下げる。
「長い間、お世話になりました」
「キノ、悪く思わないでくれ、この度リリーがBランクに昇格する事に決まったんだ。これで君以外の僕ら全員がBランクになった。いつまでもEランクの君をここに置いておく事は出来ない」
だったら、どうしてもっと早くに自分を捨ててくれなかったのだと、マーベリックの言葉にキノの喉の奥がヒクリっと動いて、塩っ辛さを感じた。
いいや、マーベリックは悪くない。全ては自分のいつまで経ってもEランクのまま、実力上がらない己が因なのだ。
パーティーの足を引っ張っている事を理解しつつ、ここに居座っていたのは自分なのだ。と、キノ何度も自身に言い聞かせた。




