【10】 諦めていない仲間たち
翌日、土曜日。
丹沢は自宅にいた。
丹沢「役所人生の8年間が、
長かったのか、短かったのか、
まぁいいか。
とにかく精一杯やったんだから。
悔いはないさ」
自分自身の気持ちに
整理をつけようとしていた。
そんなところに
♪ピンポーン、ピンポーン、
チャイムが鳴った。
丹沢「誰かな?」
丹沢がドアの所に行くと、
戸部、若石、早苗、稔江の4人が
立っていた。
戸部「よおっ!」
丹沢「心配して、
来てくれたんですか?」
稔江「まぁね」
丹沢「大丈夫ですよ。
別の仕事見つけますから」
早苗「そうよね。
役所だけが仕事じゃないし。
あんな上司となら、
他の仕事をした方がマシかも知れないわ」
丹沢「そうですよね。
それに役所は、
私には向いてなかったのかも?」
若石「いえ、それは違います。
丹沢さんは、
お客様に対していつも熱心で、
僕は尊敬していました。
丹沢さんをお手本にして、
いつかは仕事したいと思っています」
丹沢「『いつかは』?」
若石「今の課長がいるうちは無理です」
丹沢「そうだよな。
あの課長じゃ、
働く気になれないよね。
今回のことは、
私がお情けで……じゃなくて、
課長に対して反抗的だったんでしょうね。
もうちょっと私に協調性と忍耐力があれば、
退職しないで済んだのかも。
ははははは」
稔江「Wait、でも、
素敵でしたよ。
課長にちゃんと物事が言えて」
丹沢「そうですか?
うれしいな。
あれっ、ところで明石さんは来てないの?」
戸部「今、
速水爽香の部屋の前で見張ってる」
丹沢「えっ!」
若石「僕たちはみんな、
まだあきらめてないんです。
丹沢さんが帰った後、
我々5人で、
交代で彼女の部屋を見張ることに
決めたんです」
丹沢「そうかぁ。
なんだか悪いな、私のために」
稔江「悪くなんかないわよ。
私達だって、
あきらめてないんだからね」
早苗「私たちは、
みんな仲間なんだから、
当たり前よ!」
若石「河津先輩も言ってました。
このケースは絶対住んでいるって。
『長年の勘でわかるんだ』って
言ってましたよ」
河津次郎(かわづ・じろう・52歳)は、
住民課の超ベテラン職員である。
丹沢「そう、あの河津先輩までが。
それは、心強いな」
稔江「課長だけよ、
わかってないのは」
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【後書き】
本編をお読みいただき、ありがとうございます。
本作の舞台は、どこにでもありそうで、どこか
少し風変わりな「美浦市役所」の住民課です。
主人公の丹沢純也は、組織の論理や理不尽な
上司の圧迫に晒されながらも、自らの直感と、
窓口で向き合った「市民」という人間を
信じ抜こうとする不器用な男です。
物語の核となるのは、「一人の女性が本当に
そこに住んでいるのか」という、一見地味で、
しかし行政にとっては極めて重要な「居住実態」
を巡る攻防です。
水道使用量や電力メーターの回転といった、
生活の微かな「鼓動」をたどる地道な調査。
その裏側で繰り広げられる、保身に走る課長と、
仲間を信じる同僚たちの人間ドラマを
描きたいと考えました。
読んでくださった方々には「感謝、感謝」です。
「本当にありがとうございました」m(__)m
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【作者よりポイント応援のお願い】
最後までお読みいただきありがとうございます。
理不尽な課長に追い詰められ、
ついに退職願を書いてしまった丹沢。
果たして「速水爽香」は実在するのか、
そして仲間の執念は実を結ぶのか……。
もし「丹沢、負けるな!」
「同僚たちがいい奴すぎる!」と
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