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41.対峙

「あら・・・?」

「せっかく、私自ら出向いてあげたのに」

「どうやら機嫌が悪いみたいね?」


覇王子は苦々し気に血の王女を見た。


「今日は誰も呼んだ覚えはねぇんだがな」


その言葉と共に覇王子から垂れ流される殺気に

取り巻きは一瞬で色を失った。

その呼吸することすらままならない程に凍り付いた

空気の中でも「つれないのね」と血の王女は

涼しげに笑った。


よく見れば、その取り巻きたちは血の王女の

配下どもとは違う。

何を血迷ったのか血の王女の方に着いた

弟はともかく政治や経済、宗教など

それぞれの分野でこの国の重鎮を担う者たち。

立場的には別にどちらに王位を求めているもの

でもない。

どちらが王位についたとしても各々に己の責務を

全うするだけだ。

逆に言えば王の後継者としての権力で

黙らせることも難しい相手だ。

こんなやつらを引き連れていったい何のつもりだ?

逆にこれじゃ、お前お得意の汚い方法で

俺の首を狙うにしても逆に動きにくいだろうが・・・??


「もし今日、王位が決まるのだとすれば」

「あなたは機嫌を直してくれるかしら?」


まさか―――!!!


「この子にお願いされてね・・・」


その不可解な行動の意味の真意にようやく

気が付いて背の毛を逆立たせる覇王子など

目に入らぬ様に血の王女は第2王子の肩に

手を乗せ言葉を続けた。


「もうなるべく誰も、この国に住まう者たちが

 誰も傷つかない様な方法で王位を決めて欲しいって」


「こんな野蛮な決め方は私の好みに合わない

 のだけれど・・・」

「でも確かに一理ある」

「ほんっとに単細胞のあなたを跪かせるのは・・・」

「逆にこんな単純な方法しかないのかもしれないわね」


つまりこの取り巻きどもは

この王位を決める戦いの証人か。


まさかこいつが俺が得意な最も望む土俵に自ら

降りてきてくれるとは・・・


―――いいや?

血迷いやがったのかとも思っていたが、

それでも愛すべき愚弟と思ってもいたのだが・・・

こいつはこの状況を作るために向こうに

ついたってのか!?


殺気を垂れ流しながらも困惑の色を露わにする

覇王子にその姉は本当に楽しそうに笑いながら

言葉を続けた。


「すこぉ~し、この状況に混乱しているみたいね」

「もちろん、その気持ちを整理する時間くらいは

 あげるわ」


姉弟みんなが仲が良かった幼き日々・・・

それを思わず思い起こさせる姉の姿にほんの

少しだけ覇王子は毒気を抜かれた。


「ふふ・・・」

「殺しはしないわ」


「ああっ!?」


「あなたのその愚直すぎるその武は」

「ここで散らせるには惜しいもの・・・」

「そうね、これからもその武で新たな王に尽くしなさい」


「そうだな・・・」

「これからはてめぇのそのよく回る口と頭は」

「次代の王のために使ってもらおうか」


明らかに自身を侮るその言葉に覇王子は

その纏う殺気の色を濃くした。

この国で最強と謳われる覇王子が放つその殺気は

まるで空気が凍りついて個体となったかの様に

息を吸い込むことすらままならないほどであった。

それをまるで打ち消す様に血の王女からは

悍ましい程の殺気が放たれた。

その場にいた誰をもの寿命を狩りとって縮めるほどの

重圧の中、その役者が舞台にゆっくりと

降り立とうとしたその瞬間に―――


「おぉらぁぁぁああっ!!」

「きてやったぞ、くそ野郎!!!」


アイルの声がコロシアムに響き渡った。


「ア、アイルぅ~・・・」

「そ、そんな言葉、はしたないよぉ・・・」


その後におずおずと声をあげながらパタパタと

その後に続くものの姿に2人の王の思考は停止した。


お前っ、この状況でそこに立っちまったら・・・

貴女、今の状況解っているの!?


この王位決定戦ともいえるこの場に

乱入ともいえるそんな形で現れちゃったら―――

それはこの王位をめぐる戦いに参加する

意思表示にも捉えかれられない。


事実、どよどよと思い思いの勝手な声が

観客席から漏れ始めた。


王たちからは驚愕と困惑と焦燥の表情が誰にも

ありありと見て取れたがどうやらそれは

アイルの眼には全くもって何も写らなかったらしい。


「てめぇの相手なんざ、私一人で十分だっ!!」

 

動揺する相手に大剣の切っ先を向ける少女とその

連れ立つ末の王女にその場にいた全ての視線が

集中した。


同時に最愛の姉と敬愛する兄の姿を捉えて

少女は2人に向かって嬉しそうに笑って

手を振った。


お兄さまも頑張ってねぇっ

わ、お姉さまもきてくれたんだ


自身で自身のその堕天と堕落を意識しておいても

尚、それでもその思考は昔から変わらない。

ただ一人でコロシアムに向かおうとする

本当に大事な友だちを心配してついてきてみれば

そこで大好きな姉兄の姿を見つけて

無邪気に手を振るその姿に――


2人の王は戦慄した。

謀らずともその頭に互いに同じことを

思い描いていたその地図を・・・

ビリビリに破られかねない事態だ。


そして―――

どんなに否定しようともどうしても

逃れられないその血のつながりは、

その瞬間に2人に互いにその考えを

理解させ合った。


おまえ―――

狡賢いてめぇがまさか俺と同じ考えを・・・?


あなた―――

そのちっちゃい脳みそでこの私と同じ考えに・・・?


その瞬間、家族の絆を認識する数多の思い出が

互いの頭を巡った。


その数舜の後―――


互いのわだかまりを吹き消すように

ふぅ~っと大きく息を吐き出した血の王女は

弟を真っ直ぐに見た。

その目には王位を争っていた憎しみは全く

感じとられず、むしろそこには家族への

愛情すら見て取れた。


「いい?あなた・・・」

「言うまでもないのだけれど」

「負けは許されないわよ?」


「解ってる」


「絶っっ対に、油断するんじゃないわよ!」


「任せとけっっっ!!」


「そう言ってあなた、いっつでも

 油断するじゃない!!」


「今回は流石にしねぇよ!!」


「そう、本当にそうしてくれるなら安心なんだけど」


幼いころのように、かつてのように

軽口を叩きあいながら王への挑戦者となったものに

互いに目を移した。










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