52話
「探すとはどういうことだ?」
喫茶店の奥、落ち着いた照明の特別室。低い声でそう問いかけたのは、警察官の龍一だった。眉間に深い皺が寄っている。
「龍一さん、また怖い顔になってますよ。苦楽が怯えてます」
柔らかく苦笑いしながら言ったのは賢治だ。
「ああ、そうだったそうだった。すまんすまん」
龍一は頭をかきながら謝った。彼の風格は、長年警察一筋で生きてきた人間のそれ。苦楽にとって警察は本能的に刷り込まれた天敵だ。
「しかし苦楽君、君は見た目に寄らず案外怖がりなんだな。一般人ならともかく、昔のヤクザならこれくらいでビビったりはしないもんだがな」
「ちょっと何言ってるの、苦楽は一般人だよ」
「……ああ、そうだったそうだった。すまんすまん」
再び龍一は笑い、賢治もそれに釣られて笑った。重厚な空気の中にも、どこか和やかさが漂う。
最初はあまり似ていないように見えたこの祖父と孫――賢治と龍一は、案外似ているのかもしれない、と苦楽は思った。
「それで、さっきの話だけど……」
「僕とスルメはダウジングを使います」
「ダウジングって、あれか? L字型の棒で水源を探すとかいう……」
「そうです。僕たちは普段ダンジョン探索のときに使ってるんですが、探し物にも応用できると思ってます」
「ほう!」
龍一の大きな目がギラリと光った。その様子に、苦楽は“やはり西郷高い森に似ている”と改めて思った。頬の筋肉がピクリと動いたのは、興味を隠しきれなかった証拠だ。
「もちろん、非科学的な方法ですから。気に入らなければ無理にとは………」
「気に入るも気に入らないもない。今すぐやってくれ」
「わ、わかりました。……けど少し驚きました」
「何がだ?」
「普通でない方法だから、拒否されるかと思ってました」
「なに、今も昔も警官は自分の勘を一番信じてる。それだって科学的根拠なんかありゃしない」
「刑事の勘ってやつですね」
「そういうことだ」
龍一は、なぜか誇らしげにそう言った。
「それじゃあ、スルメ。ダウジングをお願い」
「私?」
「僕の体には、まだ少し酒が残ってるから。それに、ダウジングはスルメの方が得意だろ?」
「………やってみる」
スルメは少し緊張した面持ちで立ち上がった。静かな部屋の空気が、ふと張り詰めた。
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