教皇としての最後の務め
チッ チッ チッ
秒針の音が静かに時を刻む。
「ふむ……」
しわがれた重い声が一つ、静かな部屋に響く。
座っていた椅子から立ち上がり、窓の前に立ち眼下を眺める。
教会の前に集まっている有象無象。
「ふん、愚かなやつらだ……」
虫をみるような目で、民衆を見て、黒い炎に包まれている聖女に視線を移す。
「聖女を始末するか……愚かな男だ」
魔人の力に魅せられて、都合よく操られていることも気が付かずに。
「まぁいい。この聖都ももう終わりだ」
ここは獣人奴隷を仕入れるのに都合がいい都だったのだがな、仕方がない。
天井に届くほどの高さがある本棚。びっしりと詰め込まれた本の内の一冊が、ふわりと浮かび男の手に収まる。
表紙も、中身も、なにも書かれていない白紙の本。
男が本に手をかざすと、白く光り、部屋の中のものすべてが本の中に吸い込まれていった。
光が収まったとき、部屋の中にはなにもなく、本のタイトルが浮かび上がる。
『教皇の部屋』
なにもなくなった部屋の窓から、再び眼下を眺める。
ちょうど、神官が守護騎士により始末されているところだった。
始末する手間が省けたな。
愚かなやつだったが、やつは最後にいい仕事をした。
聖女を捕えた教皇は、魔人に操られていた。
その後、魔人により殺された。
不思議に思うものはいるまい。
「では、行くか」
呟くと、外から三本足の烏が一匹飛んできて肩に止まる。
二羽の烏が飛び立ち、部屋の中は静寂に包まれる。
聖壁を出た烏は、何かに気が付き地面に降り立つ。
周囲が緑に囲まれている中、その一角だけが不自然になにもない。
草は一本も生えておらず、むき出しの荒れた地面。
だがそこに、一本の花が咲いている。
紫色の花が。
烏はしばらくその花を見つめて。
カァ―――
と、一鳴きして飛び立った。
何者にも、私の邪魔はさせんぞ……。
第二部のエピローグ的な話でした。
ここまで読んでくださりありがとうござます。
次話から第三部です。




