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きっと一生縁がないもの  作者: 冗長フルスロットル
第二章 恋人たちの10月
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二人は居間に戻り、ソファに腰を下ろした。それぞれが座る位置は同じだったが、スヴェンはよりイヴェットの方向へ詰め、二人はさっきよりも体を寄せ合った。


スヴェンは先ほどイヴェットが飲んだオレンジ色の液体以外の他の二種類の飲み物を味見し、その中にアルコールが含まれていないことを確認してから、イヴェットのグラスに赤く澄んだ液体を注いだ。


「きれいな色ですね。これは何なのかしら……?」


スヴェンに渡されたグラスをイヴェットは覗き込んだ。


「ローズヒップじゃないか?」


酒が入っていないことはスヴェンが確かめてくれたので、イヴェットは安心して色鮮やかな飲み物を口に含んだ。ローズヒップのすっきりした酸味とそれに負けないくらいの甘味がうまく調和していた。


スヴェンは率先してイヴェットの皿に菓子類や果物を取り分けた。この部屋に運ばれてから時間が経ってしまったせいで、食べ物の表面は少し乾いてしまっていた。もはや最良の状態ではなかったが、しかしイヴェットにとってそれはたいした問題ではなかった。口に入れる食べ物はどれもおいしかったし、スヴェンが積極的にいろいろなことを話してくれるのが嬉しかった。


イヴェットがスヴェンの話に聞き入っていると、いきなり彼は話を中断した。不審に思ってイヴェットが彼のほうを見やり、目が合うと、彼はやにわにイヴェットにくちづけた。


シルヴィ、ニコラスと待ち合わせた時間が近付き、イヴェットとスヴェンがこの部屋を出るまでに、そんなことが何度も続いたので、イヴェットはそのたびにどきどきさせられてしまった。繰り返される抱擁とくちづけに少しは慣れてもよさそうなものだが、あいにく彼女は慣れることはなかった。


スヴェンにそうされるたびに騒ぐ胸を押さえながら、それでもイヴェットは確かに幸せだった。


いよいよ約束の時間が迫ってくると、二人は後ろ髪を引かれつつ、部屋を出る準備に取りかかった。


イヴェットは帽子を持って洗面所に入り、鏡を見ながら髪を整えて帽子をかぶり、あごの下でリボンを結んだ。それから次に姿見に全身を映して変なところがないか確かめた。


スヴェンがコルセットのひもをゆるめに結び直してくれたので、イヴェットは今全く苦しくなかった。だが、着崩れていないかどうか心配だった。


鏡に映る自分の姿はそう変ではなかったから、イヴェットはほっとしながら洗面所を出た。


イヴェットは部屋の鍵を持ったスヴェンと部屋を出て階段を下り、一階のカウンターに鍵を返却した。彼は昨日宿側と打ち合わせた段階ですでに金を納めていたため、特に煩わしいやりとりはなかった。


スヴェンは泊まらないにも関わらず一泊ぶんの料金を先に支払ったから、宿側が彼に土産を持たせてくれた。スヴェンはそれを受け取り、二人は複数の従業員に見送られて宿を出た。


ちょうどその時ローゲ市民に時間を告げる鐘が四回鳴ったので、二人は顔を見合わせた。シルヴィたちとの待ち合わせ時間に間に合わないことが確定してしまったからだ。


妹のシルヴィはともかく、スコル王国の王子であるニコラスを待たせてしまうのは申し訳なくて、イヴェットは急ごうとしたのだが、スヴェンは鷹揚に構えていた。ニコラスは時間にうるさい性格ではないことをスヴェンは知っていたし、彼らを多少待たせてしまったとしても恋人との時間なのだから、彼らはそれさえも楽しむだろうと思ったのだ。何より、焦ったイヴェットが転んで怪我をするようなことがあってはいけない。


ということで、イヴェットは内心少々焦りながら、スヴェンは対照的に全く急ごうとせず、二人は午前中にシルヴィたちと別れたオリヴィール三世公園へと続く道を並んで歩いた。


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