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ラザールとニコラスはそのまま庭へと向かったが、女性たち三人は一度それぞれの部屋に戻った。アリーヌはショールを、イヴェットは複数の本を、シルヴィは練習用の剣を取りにいったのだ。
イヴェットは庭のガゼボの中にある椅子にアリーヌと並んで座り、部屋から持ってきた三冊の本を将来の義姉の前に並べた。アリーヌは暇潰しできるようなものを何も持ってこなかったので、イヴェットから本を借りることにしたのだ。
妹と婚約者が本を選ぶのを見て、ラザールも自分の部屋に戻って本を取ってこようと思った。ニコラスはこれからシルヴィと剣の稽古をするらしく、ということは彼にはやるべきことがあるが、ラザールにはなかったからだ。
ラザールが席を外している間に二本の練習用の剣を抱えたシルヴィが合流したから、ニコラスは
「剣の稽古を始める前に、腹ごなしに庭を散歩しないか?」
とシルヴィを誘った。
「ええ、分かったわ」
シルヴィは二本の剣をガゼボの柱に立てかけ、二人は庭師によってよく手入れされた庭の小道を歩き出した。
イヴェットとアリーヌがいるガゼボからある程度離れたところで、ニコラスはスヴェンと打ち合わせたとおり、
「シルヴィ、明日スヴェンとイヴェット大公女と俺たちの四人で出かけないか?」
と訊いた。
出かけるのが好きなシルヴィは瞬時にぱあっと顔を輝かせた。
「うんっ! 行く行く!」
ニコラスは万が一彼女が渋ったら、ラザールとアリーヌ大公女を二人だけにしてやろう、とでも説得するつもりだったのだが、その必要は全くなかった。
それどころか、シルヴィ自身が
「兄上とアリーヌを二人きりにできるし、ちょうどいいわね!」
とにやにや笑ったため、ニコラスは思わず噴き出してしまった。
「で、どこに行くの?」
「それは明日のお楽しみということにしておこう」
行き先を明言しなかったニコラスに、シルヴィはいっそうわくわくした。あらかじめ目的地を知った上で出かけるのももちろん楽しいが、贈り物の箱を開けるまでに中に何が入っているのか想像する時間が楽しいのと同じで、明日にならないとどこに行くのか分からないというのも違った趣きがある。
「分かったわ」
「動きやすい服と靴を選んでくれ」
「それって、お忍びみたいな感じ?」
「ああ」
シルヴィはきゃあっと歓声を上げた。
二人が恋人関係になってから、ニコラスは時にシルヴィをローゲの街へ連れ出した。シルヴィはそれが嬉しくてたまらなかった。彼女が望んでも兄ラザールは連れていってはくれなかったし、街の地理をよく知らないから一人で出歩くのはさすがに抵抗があったのだ。
ああっ!! 明日お忍びで出かけるなんてっ!!
すっごく楽しみ!!
シルヴィは上機嫌で足取り軽く庭の小道を歩いた。
それを数歩後から追いかけるニコラスは、恋人のうきうきと心弾ませる姿を見つめつつ、彼のほうも明日が来るのを待ち遠しく思った。




