なんちゃって変態狩人降臨!!
「ふえっくしょい!」
いきなり背筋を伝った悪寒にキャロルは盛大なくしゃみを繰り出した。
「うわぁ気持ち悪い。誰かが妙な噂してるわね」
それとなく周囲を見回してみると酒場のちょうど真ん中に陣取っているガラの悪い狩人がこちらを舐め回すように見つめている。
「うおっ! ヤバイ! 目が合った!」
急いで顔を背け、壁側に向かって椅子を傾ける。
(レニィ早く来てよ。何やってるのよ)
肩をすぼめ、小さくなっていると後ろから聞き覚えのある声が耳を貫き、思わずキャロルはそちらに顔を向けた。
「あいつっ!」
酒場に入って来た背の低いド派手な男が中央のガラの悪い男達にいつの間にか加わっていた。
首にも指にもド派手な金品を装着し、風船のように膨らんだ半ズボンに白タイツ。
しつこいほどにくどい装飾を施したコート…。
一昔前の王子ルックに身を包んだ三十代前半の男の後ろには、厳つい銃機器を担いだスーツ姿のボディガードが二人付き添っている。
王子ルックの狩人は酒場の中心にいる男達の間に座りながら大声で自分の武勇伝を語っていた。
「五千万! 五千万の首を狩ったざぁますよ! まぁ五千万なんてはした金ざぁますけどねぇ! もぉちょろいちょろいざますねぇ。ミーはきっとそろそろS級に昇進ざますよ。ふぉっふぉっふぉっ!」
囲む男達がわざとらしく「おぉ!」と讃えるかのような声を荒げた。
(あのヤロゥ・・・)
あの男とは面識があった。
二日前キャロルをスカウトした自称A級狩人だ。
五百万の魔族が現れた瞬間自分をおとりにした挙句、逃げる間際に尻を掴んでいったあの変態だった。
「困ったざますねぇ。もぉ大抵の魔族じゃ物足りないざぁますよぉ~フォッフォッフォッ」
(っざけんじゃないわよ! 狩人の風上にもおけないゲス野郎の分際で・・・)
忘れかけてた怒りがふつふつと込みあがり、キャロルは溜まらず席を立った。
「さぁてと、今夜は日ごろの疲れを取って美女と二人で・・・ぐっふっふっふっ」
「ゴールドさん」
呼び止められ、変態狩人のゴールドが後ろを振り向いた。
腕を組みながら仁王立ちする女を見た瞬間、顔色が一気に変化する。
…しかし、見捨てたはずの補助士が生きている事に驚いた……のではなく、顔をだらしなく歪ませながらいやらしい笑みを浮かべたのだ。
大きく開いた胸元にミニスカートから覗く魅惑的な両足を舐めるように眺めながらゴールドは手もみをして立ち上がった。
「ふぉっふぉっこれはこれは何とまぁ」
彼を取り巻く男達もにやにやと眺めている。
「ユーはミーのファンの一人かなぁ?いいざますよぉ。ミーと夜を過ごしたいなら…」
「ゴールドさん。もう忘れてしまったのかしら? 2日前の夜…」
「2日前の夜? おやぁ…ミーと夜を過ごした事が…」
「ええ。過ごしたわね。すごく僅かな間ですけど?」
しばらく見つめるとゴールドはここで初めて目を見開き、悲鳴を上げた。
「ひっひぃぃぃ! ユー! キャロリン! いっ生きて…」
「お陰さまで…」
目の前にすると止め処なく怒りが溢れ出し、キャロルの口調も荒くなる。
「A級の狩人のあなたにはたった五百万の魔族が重荷だったみたいで…サポーターの私をおとりにして…よくも…よくもっ!」
振り上げたキャロルの拳を別の男が掴んだ。




