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2.時代は進み現在にて、脱サラニートしている男がおりましたとさ。

カッシャっという音と少しのシャッターショックが耳と手に伝わる。

この体験こそが写真というものだろう。

カメラにスマホを接続し先ほどの写真をスマホに取り込む。

取り込んだ写真に写りこんでいた通行人にはモザイクをかけ、アップロード。

[地元に帰って来た!!!]

本当は誰かにただいまと言いたい、帰って来たーと叫びたい!が、生憎迎えに来てくれる友人も公共の場で叫ぶ度胸もない。

そんな悲しい俺の唯一の心のよりどころはネット空間、SNSの×(かける)だけだ。

人と人の間を架けるSNSと言われるこのSNSは若者からお年寄りまで、老若男女問わずに使われる国産SNSだ。そしてこのアプリを開発したのはもちろん俺!…ではなく、共同で会社を興した前の、いや、正確には前の前の会社の同僚だ。

おれは社内の権力争いに嫌気がさし×を退職した。決して権力争いに負けたわけではない。そう決して。

そう、決して負け犬ではないのだ。

負け犬では…ないと…思いたい…

そんな俺の心を察してか、ビュ~っと冷たい風が通り過ぎる。

「さっむ…はぁ、何頭ん中でぶつぶつ言ってんだろう、とりあえずカギをもらいに行くか」


ピンポーン―

帰省すると言ったら快く空いている物件を貸してくれた叔父には感謝しかない。

曰く

【長いこと人の入っていないと家もだめになるから、入居するまでの間でよければ空き物件貸すよ】

とのことらしい。


ピンポーン―

2回目のチャイム音が鳴り響き、しばらくたつが反応はない。

そう、不在である。

「今日帰ってくるって言ったじゃ―、あぁ、時間伝えてなかったか」

悲しいかなこちらの非である。

しょうがない、電話して…

電源ボタンを押した瞬間、スマホの画面には見慣れたリンゴのロゴが一瞬表示され、画面が暗転する。

つまりは充電切れだ。

「なんというタイミング…」

悪いことは重なるというがこうも重なるとは思わなかった。

これも疲れのせいで夜行バスですぐ寝てしまい、充電しなかったせいだろうか。

「ま、少し散歩してくるか」

荷物を駐車場に止めてある車の後ろに隠す。

午後からは雨予報だが屋根もあるので問題ないはずだ。

「懐かしいな…」

小学生のころ、帰ってきたが親が家におらず駐車場で秘密基地ごっこをした時のことを思いだす。

「あの頃よりかはさすがに成長できてるかな」

そんなことを思いながら、久しぶりの地元散策に出かける。


カタン、コロンという音を立てお賽銭が賽銭箱に転がっていく。

二度頭を下げ、パンパンと二度の拍手。

そう、ここは神社である。

地元には全国有数の格式を持つ神宮がある。

いいか悪いかはさておき昔はよくここで遊んだものだ。

帰ってきました、いつまでここにいるかわかりませんがしばらくの間またよろしくお願いいたします。

そうお願いをし、最後の一礼をする。

賽銭箱から少し離れ、改めて全体を確認する。

修繕工事中か…

本宮は白い工事用の布に覆われ全体観は分からない状態になっていた。

が、年越してまだ間もないこともあるのだろう、参拝客はそれなりの人数がいる。

さて、きしめんでも食べて…

「あぁー、現金もそんなにないんだった…」

キャッシュレスもスマホにまとめているせいで詰みである。

そんな俺をあざ笑うかのよう、境内で飼育されている鶏が観光客から餌をもらっている。

【おまえは誰からも施しをもらえないが俺は違うぞ、可愛さの次元が違うから】

そう訴えているように感じ目をそらす。

はぁ、金もないしもうしばらく懐かしの地元を歩きますか。

っと考え事をしていると見慣れない建物が目に入る。

VR参拝?

工事中で本宮が見れないからこういった施策を撃っているのだろうか。

『気になりますか(⋀ _ ⋀)?』

「えぇ?」

銀髪の髪を後ろで束ね、前髪には一筋の赤いメッシュの入った和服の美少女がこちらをのぞき込むよう視界に入り、声とかけてくる。

急に声をかけられたことに驚き、素っ頓狂な声が出てしまった。

「気になるというか、えっと…君は?」

『私は宮森つぐも、ここのバーチャルガイドAIです( ̄ v  ̄)!』

ふふーんと言ったような自信ありげな表情で彼女が答える。

バーチャルという言葉でハッとし彼女をよく見る、するとうっすらとだが向こう側がうっすらと透けていることがわかる。

付けていた眼鏡を外すと彼女の姿は消える。

「いつの間に電源が…」

拡張現実対応型眼鏡、いわゆるスマートグラスの電源が知らぬ間にオンになっていた。

改めて眼鏡をかけると彼女は満面の笑みでこちらを待っていた。

「で、そんなバーチャルガイドAIさんが何か?地元民じゃなく観光客に声をかけたほうがいいんじゃない?」

スマートグラスとは相性が悪く頭痛になりやすいためあまり使いたくない機能の為、話を早急に切り上げるためにすこし突き放す聞き方をする。

『それがですね、昨今の少子高齢化、観光名所とはいえ神社という地味目なランドマーク故

に観光客の比率はお年寄りが多く、大半が仮想、拡張現実アレルギー持ちなのです(; ﹏ ;)』

コミカルな…というかバーチャルでしかできない泣き方をし、同情を誘ってくる。

最近のAIはよくできたものだ、というか神社のAIにしては口が悪いな…

『それにですが、そういうあなたも観光ですよね?こちらに来られるのは初めてでは

(? _ ?)?』

「いや、俺は地元民…と言っていいか微妙だな、ここ数年帰ってきてなかったから」

そういうと納得したような表情(- □ -)で…納得したような表情か?

『なるほど、だからデータベースになかったんですね、登録しておきますのでお名前をお聞きしてもいいですか(・ ﹏ ・)?』

「名前?それぐらいなら別に」

宮内のフリーWi-Fiも使えるようになりますよ~(¬ v ¬)という言葉につられたわけではない

「俺の名前は―」

サーっという音を立て草木が揺れ、風が吹く。

俺の声はその風に吹き消されてしまったかと思ったが彼女は笑顔で口を開く。

『いい名前ですね(ˇ ◡ ˇ)、それでは、よい一日を(≧▽≦)ノシ』

一瞬だけ見せた穏やかな笑顔はシステムでそう決まっている表情だったのか、すぐ平常運転?の笑顔に戻り、手をぶんぶん振りながらどこかへ走って消えていった彼女、その目的に気が付いた時には、すでに手遅れとなっていることをこの時はまだ知らなかった。


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