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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第四章 恋のつぼみ
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兄妹チェック



「ジュヌヴィエーヌ?」



エルドリッジの部屋で大量の絵姿を渡された帰り。


それらを抱えてジュヌヴィエーヌが私室に向かっていた時、背後から名を呼ぶ声に振り向く。



「まあ、オスニエルさま」


「父上の部屋に行った帰りか? あ、一枚落ちたぞ」



同じく自室に戻る途中だったオスニエルは、そう話しながら、屈んで一枚の紙を拾い上げる。



「ん? なんだ、これ」



運んでいる最中にうっかり落としたらしいそれを、オスニエルはマジマジと見てから、怪訝そうに首を傾げた。



「・・・ニールセンじゃないか。何故こいつの絵がここに?」



そう問いかけた時、オスニエルの視線はジュヌヴィエーヌが抱えている大量の紙の束に向けられた。


そして、自分の手元にある絵と、ジュヌヴィエーヌの腕の中のそれらとを見比べる。



「・・・え、まさかそれも全部?」



ジュヌヴィエーヌが頷くと、オスニエルはどういう事だと目を見開いた。














「・・・酒癖とかギャンブルとかは分かる。仕事が不真面目というのも分かる。だが、なんだこの最後の方は。整理整頓が下手とか、飽きっぽいとか。もはやイチャモンでしかない」


「本当よねえ。まったくお父さまったら心が狭いわ」




さて、今ジュヌヴィエーヌは自室にて預かった絵姿を改めて確認している。

しかも、何故かオスニエルとエティエンヌと一緒に。



いつもジュヌヴィエーヌとはそれなりの距離を置くオスニエルだが、ジュヌヴィエーヌに渡された絵姿の話を聞き、エティエンヌまで巻き込んでチェックし始めたのだ。



「ふう・・・でもこれ、すごい枚数ね。この数日間に、よくこれだけかき集めたものだわ。ある意味、尊敬しちゃう」



五分の一ほどを確認したところで、エティエンヌが感心した様に呟いた。


だが、オスニエルは「いや」と、呆れまじりに首を横に振る。



「そこは尊敬するところじゃないぞ、エチ。これはいくら何でも多すぎだ」


「あら、そうかしら。変な男がジュジュさまに寄って来ても困りますもの。厳しいくらいでいいのでは?」


「整理下手とかは別に大した問題でもないだろう。そこまで厳しくされたら、父上の基準に合格する者などおらんぞ」


「ふふ、そういえばオス兄さまも、片付けはあまり得意ではないものね?」


「なっ」



欠点をさらっとバラされ、オスニエルの顔が赤くなる。



「・・・そう言うエチは整理整頓は得意だが、とんでもなく不器用だよな」


「まっ!」


「刺繍なんか傑作だからな。前にもらったハンカチは、記念として大事に引き出しの底にしまってあるんだぞ」


「なによ、縫い目がガチャガチャでみっともなくて使えないって、正直に言えばいいでしょ?」



何故か急に不穏な空気を醸し出し始めた兄妹を前に、ジュヌヴィエーヌはおろおろと視線を彷徨わせた。



と、テーブルの上に広げ始めた絵姿の山に目が留まり、思い出す。


ジュヌヴィエーヌは、最後にエルドリッジから()()()の絵姿を渡されていたのだった。



「・・・っ」



まずい事にそれらも一緒に重ねて運んで来てしまっている。

見られるのは少々気不味い。ジュヌヴィエーヌはそっと向かいに座る二人を見遣る。



エティエンヌとオスニエルは今もなお、ああだこうだと言い合っている。


注意が逸れているのを幸いと、ジュヌヴィエーヌはそっと手を伸ばし、さり気なくチェックしながら、目当ての絵の数枚をそっと引き出す。



そして、それをそのまま背中側に隠そうとして―――



「どうした、ジュヌヴィエーヌ。何かあったか」


「あら! ジュジュさま、気になる方でもいらしたの?」




―――呆気なく見つかった。







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