5 天使のこと その一 そのニ
天使のこと その一 そのニ
天宮五百枝 十二歳 とっても優しい天使の女の子 瞳の中に太陽の星がある。
特徴
自分のことをぼくと言う。
大好き。
風花十六夜 十二歳 とっても生意気な天使の女の子 瞳の中に月の星がある。
特徴
猫っぽい顔をしたつり目のつんとした怒りっぽい女の子。天使の中で一番、空を飛ぶことが上手で、誰よりも空を飛ぶ練習をしている。空を飛ぶことが大好きで、誇りと自信を持っている。
黒いりぼんでその美しい黒髪をツインテールの髪型にしている。
……、大嫌い。
それから十六夜は大きなふたつの白い翼をばさっと羽ばたかせて、五百枝の前から飛び去って行ってしまいました。
五百枝は空を飛んでいく十六夜のことをじっと見つめています。
でも、十六夜は、破壊される白い月(危ないところ)に残っている五百枝のことを、振り返ってみたりはしてくれませんでした。
五百枝は背中の大きなふたつの白い翼をばさっと羽ばたかせると、透明なガラス細工の大地を軽く蹴って、ゆっくりと空の中に浮かび上がりました。
そしてそのまま白い翼を動かして、空を飛び始めます。五百枝は十六夜を追いかけ始めました。
五百枝は、とても真剣な顔をしています。
空を守る天使の顔です。
十六夜はかなりの速さで空の中を飛んでいました。
早く一人になりたい。
そんなことを十六夜は思いました。
一人になれる場所も、見つけてありました。自分だけの秘密の場所。秘密基地。大きな世界樹の枝のところ。そこで、十六夜は一人で小さくなって、うずくまっていようと思いました。この大きくて、不細工な、まがまがしくて、悍ましい感情が全部どこかになくなるまで。
……、世界が消えて、なくなってしまうまで。
でもすぐに十六夜は自分を追いかけてくる影に気が付きました。
小さく顔を動かして、後ろを見ると、そこには五百枝がいました。自分を追って空の中を飛んでいる五百枝を見て、「ちぃ」と十六夜は小さく舌打ちをします。(まあ、追ってくるとは思ったけど、実際に見るとやっぱり腹が立ちました)
それから十六夜は前を向いて、背中の大きな白い翼を一度、ばさっと大きく羽ばたかせて、さらに空を速く飛び始めました。
十六夜はまるで、本当の風のように、青色の空の中を駆け抜けていきます。でも、それでも五百枝は離れません。五百枝も同じように白い翼を大きく広げて、その空を速く飛んで、十六夜を見失わないように、ちゃんとうしろから追ってきました。
十六夜は五百枝を振り切れる自信がありました。
だから、少し十六夜は驚きました。
そんな五百枝をみて、……、ふーん。なかなか、やるじゃない。空を飛ぶの。いつのまにか、うまくなったんだ。と十六夜は思いました。