4 空を飛ぶための白い翼
空を飛ぶための白い翼
この世界は、まるで夢のようだね。
また世界が変化をします。
今度は世界が真っ赤な色に染まりはじめました。そして、(祝福を告げる神さまの鐘の音のかわりに)とてもうるさい大きな警告音が白い月のあらゆるところで鳴り響きはじめます。
『警告します。白い月の破壊の神託が受理されました。まもなく、白い月は破壊されます。天使のみなさん、すみやかに白い月から避難をしてください。繰り返します。天使のみなさん、すみやかに白い月から避難をしてください』。
そんな綺麗な女の子の声が聞こえてきます。
十六夜は空を見上げています。
五百枝はずっと十六夜だけを見ています。
女の子の声が聞こえなくなると、十六夜はずっと自分を見ている五百枝の視線に気がついて、五百枝を見ると、ふふっと小さく、どこかなにかを諦めたようなそんな力のない顔をして笑いました。
十六夜の背中にある大きなふたつの白い翼がばさっと音をたてて広がりました。
「逃げるの?」と五百枝は言いました。
「逃げる?」と怖い顔をして、十六夜は言います。
うん。そうだよ。またそうやって、ぼくのところから君は飛び去ってしまうの? と五百枝は思いました。
「私は逃げたりしないよ。いつもいろんなことからずっと、逃げているのは五百枝。あなたでしょ?」と十六夜は言います。