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強くて、綺麗で、凛としている、美しい人。
五百枝はすぐに十六夜のことが大好きになりました。憧れたと言ってもいいです。(誰かに憧れたことは、生まれてはじめてでした)
『空を飛んでいるものは、いずれ必ず大地の上に落っこちるときがくる。それは空を守る天使であっても同じである』。
そんなこと言われなくてもわかっている。と十六夜は思いました。
「五百枝。あなたがなんて言っても、私はもう自分の意思を変えるつもりはないの。私は必ず『この白い月を破壊する』。そして、なにもかもを終わらせるの」と十六夜は言いました。
「白い月が破壊されれば、世界は無くなってしまうよ」と悲しそうな顔で、五百枝は言います。
「もちろん。わかってるよ」と十六夜は言いました。
「どうしてそんなことをするの?」と五百枝は言います。
「この世界には、悲しいことしかないからだよ」と五百枝をまっすぐに見て十六夜は言いました。
十六夜は今にも泣き出してしまいそうな、そんなひとりぼっちの小さな子供みたいな顔をしていました。
いつも強くて弱さを見せない十六夜。
そんな十六夜の泣きそうな顔を五百枝ははじめて見ました。
五百枝は同じようにとても悲しそうな顔をしました。
「この世界には苦しいことばかりだから。楽しいことはなにもないから。だから、世界を壊すんだよ。もう一度、初めから、なにもかもをやり直すために」と十六夜は強い瞳をして五百枝に言いました。
「たくさんの人たちが死んでしまって、たくさんの人たちが泣いているよ。その声が五百枝。あなたにも聞こえるでしょ? みんなが言っている。苦しいよ。つらいよ。悲しいよって言って泣いているの。いつもいつも。世界のどんなとこでも。誰かが必ず泣いているの」と十六夜はとても悲しそうな声で言いました。