2 ほら。こっちだよ。ちゃんと前を向いて空の中を飛ばないと、また迷子になっちゃうよ。
ほら。こっちだよ。ちゃんと前を向いて空の中を飛ばないと、また迷子になっちゃうよ。
五百枝は、十六夜と出会ったときのことを思い出していました。
あれは、……、そう。
二人の天使が今よりももっと、もっと小さかった子供のとき。
ぼくも十六夜も、とっても小さかった。(背中のつばさも、まだうまく空が飛べないくらいに小さくて、すごく可愛かった)
十六夜は今とは違って、よく無邪気な顔で笑っていた。
眩しい太陽のような笑顔で。
笑ってた。
……、笑っていたんだ。
「五百枝ちゃん。大好き!」
小さな十六夜は笑って言いました。
「ぼくも十六夜ちゃんのことが大好きだよ」
小さな五百枝は笑ってそう言いました。
五百枝の瞳から涙が溢れます。
それはなんで美しい思い出なのだろうと思いました。
それはなんて眩しい輝きなのだろうと思いました。
もう二度と触れることのできないもの。
聖なる光と清らかな、優しい風のあるところ。
もうなくなってしまったもの。
もう二度と手に入れることのできない気持ち。……、本当の幸せ。
十六夜。
あのころのぼくたちはどこにいっちゃたのかな?
五百枝は泣いています。
我慢しようと思ったけど、無理でした。だって、あのころのぼくたちが笑っているんだから。