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1 大好き。大嫌い。(……、でも本当は、大大大好き)

 空にはたぶん、愛があって。今日は空を飛ぶには、とってもいい風が吹いていて。


 月はアイスクリームみたいに溶けてなくなった。


 その白い月はまるでアイスクリームみたいだった。


 オブジェ 彫刻


 三人の美しい子供の天使たちが寄り添うように集まって、瞳を閉じて、翼を閉じて、膝をついて、空に祈りを捧げている白い彫像。


 白 舞台色 きらきらの物語。


 初めて気がついた。

 君の瞳の中には、星が輝いているってこと。

 とっても綺麗だね。


 序文


 あるところにとても可愛らしい三人の子供の天使たちが空を守りながら暮らしていました。


 五百枝


 いつか、どこかで。

 また、出会えたらいいね。

 ……、そうしたら、また、お友達になれるかな?

 ぼくたち。今みたいに、なかよしの友達に。

 なれるかな?

 ねえ、君はどう思う?


 十六夜


 翼はなんのためにあるの? 空を飛ぶため?

 それもある。

 でももう一つあると思うのです。

 それはなんですか?

 とっても遠くにある夢を手に入れるため、です。


 蜂蜜


 君の心の中には、いつも誰がいるのかな?

 知りたいな。

 君のことをもっと知りたい。

 もっと、もっと好きになりたい。

 大好きになりたいんです。

 心の中が君でいっぱいになるくらいに。


 人狼


 あなたは大丈夫。

 あなたはちゃんと成長したんだよ。

 人の痛みがわかるくらい。

 人の悲しさがちゃんとわかるくらい。

 みんなが涙を流すわけがわかるくらい。

 成長したんだよ。

 ……、よく、頑張ったね。

 おめでとう。


 はじまりとおわり。


 君に伝えたいことがあるんだ。大好きな君にね。


 君と空を飛ぶ。(それは、空想の欠片)


 自由に。

 風と一緒に。

 翼を羽ばたかせて。

 いつまでも。


 ねえ。はじめて空を飛んだときのこと、覚えている?


 空がとっても遠い。

 でも、二人なら、きっと飛べる。

 きっと、届くよ。

 あの約束のところにまで。

 だから、一緒に空を飛ぼう。


 空を飛んでいるものは、いつか必ず、大地の上に落っこちる。


 あなたの背には、とても綺麗な、美しくて大きい、『空を飛ぶための』、ふたつの白い翼があった。


 本編


 大好き。大嫌い。(……、でも本当は、大大大好き)


 このお話は、ぼくの大好きと、君の大嫌いのお話。


 天国(空の高いところ)


 生きとし生ける、すべてのものへ。


 ぼくたちは、ずっと、ずっと友達だよね。十六夜。

 うん。ずっと友達だよ。五百枝。

(二人で一緒に、空の中を落っこちながら)


 真っ白なところ。それ以外の色は見えません。本当に全部が真っ白でした。上も下も、まわりも全部が真っ白。そんな不思議なところに天宮五百枝はいました。

 五百枝は空が見たいと思いました。

 青色の空が見たい。透き通るような美しい青色。青色は五百枝の一番大好きな色でした。でも、顔を上に向けても、青色はありません。そこには真っ白な色がどこまでも広がっているだけでした。

 五百枝はあきらめて顔を動かして前を向きました。そして、ゆっくりと足を動かして歩きはじめます。

 とんとん、と五百枝の足音が小さく聞こえます。

 五百枝は青色のりぼんと白い色の長いふわりとしたスカートの天使の服を着ていて、足元は白い靴下と白い靴を履いています。

 五百枝の姿勢はまっすぐでした。(とても美しい形をしています)歩きかたもとても綺麗です。両手はおなかのあたりで小さく組んでいます。

 前を向くことはそんなに難しいことじゃない。

 歩くことは、そんなに難しいことじゃない。

 笑っていることも、難しくはない。

 練習をいっぱいすれば、誰にだって(きっと)できることなのだ。

 そんなことを五百枝は思いました。

 突然、真っ白な世界に変化が訪れます。

 空を覆っていた真っ白な色はなくなり、世界は透明になっていきました。

 すると、五百枝の大好きな青色が見えるようになりました。

 真っ青な空と白い雲が永遠と広がっています。

 ここは(卵みたいな形をした)白い月。

 ぼくたち、天使たちの暮らしている家。(ホーム)

 君がいるところであり、ぼくが憧れたところ。

 世界の中心。

 神さまのいるところ。

 世界がはじまって、終わるところ。それがここ。

 なんだか、大きなしゃぼん玉みたいな、とっても弱くて、すぐに消えてなくなってしまうような、はかないところ。

 君とぼくにちょっとだけにているね。

 五百枝はまっすぐに歩いていきます。

 すると、そこには(やっぱり)君がいました。

 君はぼくを見て、なんだか怖い目をして、その頬を膨らませています。

 どうやら、風花十六夜は、なんだかとっても、いつもよりもずっと強く、怒っているみたいでした。(怒っていても、十六夜はいつものようにまるでお人形のように綺麗で、とっても可愛かったけど)

「なにしにきたの? 五百枝」と十六夜は怖い声で言いました。

 ……、なにって、決まっているでしょ? と五百枝は思います。

「ぼくは君を助けにきたんだよ。十六夜」

 にっこりと笑って、五百枝はお友達の十六夜にそう言いました。

 五百枝の背中にある『天使の証である、ふたつの美しい白い翼』が、ばさっと一度、大きく羽ばたいて、閉じました。

 数枚の白い羽根が、空の中に舞っています。

 ここは、白い月。

 世界がはじまって、終わるところ。

 もうすぐ、ひとつの世界が終わろうとしていました。

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