ゼロワ 恐室
「なんだ・・?この猫・・?」
突然目の前に現れた黒い猫に動揺を隠せない。確か黒い猫は不吉だと聞いたことがあるが。
「ニャー」
猫は鳴くと空間の奥へと向かって歩いていく。こっちへ来いと言うことか?
「とりあえず付いて行ってみよう。ここにいたってしょうがない。」
それにしてもこの猫、かなり歩くのが早い。
猫とは思えないほど。普通猫は人間より歩幅が小さいからすぐに追いついてしまうはずなのに、少し小走りでないと付いて行けないほどだ。
ずっと歩いていると少し周りが明るい場所に着いた。それにしてもどうなっているんだ。ここは。教室にしては広すぎる。それに教室だったら草なんか生えているはずがない。それに教室に入った時、周りが暗くなり急いで出ようとした時、ドアが無かった。つまり、俺は閉じ込められたということか・・?
「ようこそ。お待ちしておりましたよ。」
(!?誰だ!)
さっと後ろを向くとそこには黒いタキシードを着た紳士のような男性が立っていた。
「そんなに驚かれなくても何も致しません。」
「そんな事、信用できると思ってるのか?」
「えぇ。」
こいつ、頭がおかしいのか?俺をこんなところに閉じ込めておいて。
「ここから出せ!じゃないと警察呼ぶぞ!」
「ここから出せと言われましてもねぇ。それは少し難しいですねぇ。」
「俺をこんなところに閉じ込めておいて!何する気だ!」
「むぅ?何を言っているのです?」
ぐにゃり
「な・・。な、なんでお前・・く、首が!」
首が・・折れている?
「おっと。これは失礼しました。」
ぐにゃり
「元に戻った・・?」
「いやぁいけませんねぇ。ついつい癖で。」
「癖・・?」
おかしい。普通人間は首が自由自在に首が折れる訳がない。
「すみません。私、人間ではないもので。」
「・・・は?」
人間ではない?何いってんだこいつ。
「ここはあなたが住んでいた世界ではありません。ここはいわゆるあなた達で言う、一番近いもので『あの世』です。」
なん・・だって?
「お前何いってんだ?ここは学校だろ?」
「いいぇ。違いま」
「なんだってんだ!」
ガン!!
「俺をここから出せ!悪ふざけも良い加減にしろ!」
「おやおや困りますねぇ。まったく。短気なお方だ。いきなり殴りかかるのはいけませんねぇ。」
「いいからここからだせ!出さないと本当に警察呼ぶぞ!!」
「まったく。ここに来たいと言ったのはあなたなのに。」
「なに?」
「だからここに来たいと言ったのはあなたです。あなたは家庭内でトラブルがあり両親が離婚。父親に引き取られ平凡な毎日を送っていました。あなたはそんな毎日にスリルが欲しいと思っていた。ですから私はここに連れて来たのです。」
「嘘を言うな!」
「嘘は言っておりません。全て事実です。」
「確かに親父の話は事実だ!だが俺はここに連れて来いなんて一言も言ってない!だいたい俺は今日教室に入ったらここにいたんだ!だったらここは教室のはずだろ!」
「あなたは教室に入った瞬間気を失ったのです。現世ではあなたは今病院にいます。」
「でたらめだ!」
信じない。絶対に。信じたくない。確かに平凡な毎日に嫌気がさしていた。だから毎日にスリルが欲しいと思ってはいた。だがそれは死にたいと言うことではない。恐怖で頭が狂いそうだ。自分が自分ではない様に感じてきた。
「1つ、言いますが。」
『あなたはまだ、死んではいません。』
「それは・・本当か・・?」
「えぇ本当です。」
「なら・・なら!ここから出してくれ!俺は死んでないんだろ!ならあの世に来るべきじゃない!」
「それは無理です。が、1つだけ、ここから出る方法があります。」
「その方法はなんだ!」
「それにはまず、あなたがここに来た理由も説明しなければいけません。」