スーパー美少女とそのしもべの密談(レイ:いやしもべって何ですか。)
「私だって詳しい事は分かりません。」
私に可愛い顔でおねだりされて(おねだりという名の強制)ちょこんとソファに座った(座らされた)れいちゃんはぼそっと呟くように言った。
「良いの。とりあえずレイちゃんの考えを聞かせて。」
まじ命かかってるから。チートの考え聞いとかなきゃだもん。
「…まず一つ。旦那様があんな嘘を仰ったのはレオン様が居たからだと思います。」
「どうして?」
「お嬢様はいずれどういう立場になろうと公爵家を牽引する方です。レオン様の素性をいずれ必ず知ることになるでしょう。しかし、なんらかの理由でレオン様が拒んだのではないでしょうか?旦那様が何かおしゃっられそうになった時にレオン様が話を変えられましたよね?アーノルド商会の代表はとても厳しい方で有名です。あの空間で一番の権力者の言葉を遮るなど許されない事な筈です。となると余程の理由が無いとあのような言動はとらないかと。」
「な、なるほどね……」
さすが私の暗殺計画を企てることはあるな…
「そして、二つ目。お嬢様達がお食事中にいつもの二倍の侵入者が現れました。」
「ぶふぉえっ」
やっべぇ、紅茶こぼした。口をレイちゃんが素早く差し出したハンカチを受け取って拭った。
「どどゆこと?」
「奥様方がレオン様を連れてくる際に巻いてきた様でやっとその者たちがちょうど食事中に現れた様なのです。お嬢様が怖がるかも知れないということで今この状況です。とりあえずこの状況は分かりましたか?」
「それって私に言って良いことなの?」
そっと声を潜めた。
「旦那様が伝えるようにと。その様な事があった場合お嬢様にはばれない様にとついさっき言われていたのですがもう隠す必要は無いと。」
へ?それって私たちが多分部屋に到着する直前から今までの時間だよね。それってどういう情報も……
「知りたいですか?」
ニコリと天使のような(真っ黒…いやすみません)微笑みで聞かれた。
「えっとそれはもういいから続きをお願い…」
「かしこまりました。つまりまだ私も人の事は言えませんが、年端もいかぬアーノルド商会とはいえ貴族でもない子供が公爵家に入ろうとする侵入者と同じ数の者達を連れてきたのです。」
「そうとは限らなくない?お母さまを殺そうとする不届き者かもよ。」
「あの方々はいけません。殺されます。」
「えでも、」
「いけません。いくら百戦練磨の殺人メイドでもあの方々を見ると秒で逃げるんですよ。」
「えっ殺人メイドとはっ…」
「話を戻しますとレオン様は他の貴族や裏社会から注目されてる方なのです。」
「はい質問。」
ぴっと手を挙げた。あ良かった。腕吊ってない。健康体最高。
「どうぞ。」
「なんでそんなすごい子をレオンちゃんのお父様は手放したの?あとなんで今になって皆慌ててるの?」
「公爵家に恩を売っておくといったところでしょうか。あとは商会が貴族相手にも利益を対等に売れるように今の国王陛下と制度をつくった旦那様に感謝しているのかも知れませんね。」
「へ?なにほれ?」
「何お菓子食べてるんですか。そんな口に入れたら喉につまりますよ。」
「おっぐぅっ」
「いわんこっちゃない。」
レイちゃんが背中をさすさすとさすってくれる。
「うあほほと~」
「ちゃんと飲み込んで下さい。もう話しますよ。」
「え、ひひふ!(え、鬼畜!)」
「この国はほんの5年ほど前まで商会は貴族相手にまともな商売が出来なかったのです。商人は貴族に歯向かえませんから対等な取引が行えず庶民相手にしか商売が出来なかったそうです。それで他国に追い抜かされ全体的に貧しい国になっていたらしいですよ。」
「げほっ。つまりその状況を救ったのが今の国王陛下とお父様って事?」
「そういう事ですね。あともう一つですね。これは初耳だったからです。」
「誰が?」
「旦那様以外の全員です。」
ほえっ、ここブラックやんけ。お願いです。お父様にちゃんと言っときますから暗殺だけは企てないで!
「大丈夫ですよ。旦那様は普段はそんなことしませんよ。」
「えエスパーだ!」
「明らかに旦那様がやらかしたみたいな顔してますからね。」
「あっだから公爵家のトップ連中が近くにいたんだ。」
「急に話が変わりますね……」
うん。よく言われた。
さて、とレイちゃんが立ち上がる。
うん(・・?
「どうしたの?レイちゃん。」
何か顔が怖い。
「もう質問することはありませんね。」
コンコンとドアがノックされた。
「もうそろそろ。」
侍女さんの厳格な声が聞こえた。
「はい。ではお嬢様参りましょうか。」
「ほえ?」
何かあったけ?
「勉強です。書庫に行きますよ。」
レイちゃんは腹黒スマイルでにっこりとほほ笑んだ。
思わず後ずさりした。なんだろう。殺される気がする。
「さあ。」
「ひっ、いやああああああああああーーーーー」
しばらくもうしばらくこの公爵家には厳しい厳しいチート侍従のスパルタ教育によって令嬢の叫び声が聞こえるのであった。