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 私は流架に抱きつかれた。初めての感覚。心臓が激しく高鳴りおかしくなりそうだ。顔も熱い。


「離すですぅ」


 私は必死に振りほどこうとするも強く抱きしめられている為逃げ出せない。彼流架の胸元に耳が当たった。

 彼の心臓も私以上に高鳴っている。


「離れろボケ‼︎」


 突然流架は私を突き放した。その勢いに負けてしまい勢い良く尻餅を着いてしまう。


「痛いですぅ」


 流架が原因で痛い思いをするのはこれで何度目だろう。私は流架の身勝手な行動に頭にきた。


「突き離すくらいなら抱きつかないでほしいですぅ」


 すると流れ架は驚いたように目を丸くしている。突き放した事を驚いているかのように。


「いや、マジごめん。夜花見にでも行くか? 突き飛ばしたお詫びだけどさ……」


流架は恥ずかしそうに頬を赤く染め視線を斜め下を見てた。流架なりの優しさなのであろう。優しい流架が本来の彼の姿なのだと私は感じた。それに流架は正直に謝っている。しかし、何故だろう。流架の態度がその時その時でコロコロ変わる。

 人を熱く見る視線。かと思えば氷のように冷たくなる。流架の熱い視線に私はドキドキを抑えられずにいた。

 それに、流架に抱きつかれた時何故だか忘れてしまった思い出が蘇る。


(私、どうかしてしまったですぅ……)


 考えても思い出すことができない。生前の記憶は全て女神が消してくれたから。生前の私など関係ない。

 でも、生前犯した罪を私達は償っている。いつ終わるかわからない罪を背負って。


「俺、帰るわ」


流架は後ろに振り返ると真っ直ぐに教室の方へと歩いていった。


「待つですぅ」


 私は流架を追いかけ走った。これならスカートにしなければ良かったと考えていると目の前が急に二重に見えた。


 ツキーン


 私の頭を激しい頭痛が襲う。流架は私に気づく先に行ってしまった様で姿がない。私の頭の中では再びビジョンが流れ始めた。


「……いたいな。……幸せだよ……ありがとう」


 私の頭の中を幸せだった頃の記憶が巡る。だが、いつの出来事かわからない記憶で本当にあったのか定かではない。しかし人界に来てこれで何度目だろう。全てのビジョンの中に同じ人がいる。

父なのか、兄弟なのか、恋人なのかわからない人物と私は幸せに過ごしていた。ビジョンの中の人も暗くて表情も読み取る事は難しかったが、決して怒っている様子などない。

 私はビジョンが消えるのを待った。ビジョンが消えると頭痛もなくなり流架を追いかけられる。

私の予想通りしばらくすると頭痛は何処かへと引いていった。ビジョンも何処かへと行ってしまい思い出す事が出来ない。ビジョンが何時の事だったのか思い出そうとするとこめかみにツキーンと痛みが押し寄せてくる。

私は先程の痛みを思い出し考えないようにした。すると、痛みも何処かへと姿を消す。

私は流架の元へと走った。


 __


「ちょっといい?」


 俺は教室に戻るとすぐに俺はメガネをかけた女子生徒に呼び止められた。身長は低めでこれと言った特徴といえば彼女には不釣り合いの黒縁メガネ。

クラスメイトから話しかけられた事の久しかった俺としては心臓に悪いものさえある。

だが、彼女の瞳にはおぞましい程の憎しみを宿している。


「何だ?」


 俺は極めて無難に答えた。しかし、本当の所は心臓がはち切れんばかりに高鳴っている。嫌な汗が頬を伝う。


「さっき、屋上でここの生徒じゃない女の子と抱きついていなかった?」


(ゲッ……)


 俺はクラスメイトの言葉にドキリとした。苺は俺以外の人間に自分の姿は見えないと話していた。実際家にいる時母さんは何も気づかぬ素振りで朝食の支度をしていたし、保健室に行った時も何も言われなかった。

 苺は今俺の所にいない。先程保健室に行った時もそれらしい事は何も言われなかった。だから俺は苺の言葉を半分だけ信用しついて来させていた。


「なんのことだかわからないな」


 俺は視線を泳がせ誤魔化そうとした。ところが、そんなことされても彼女は怖い顔をして俺を睨みつける。


「流架?」


 罰の悪い時に苺が帰って来た。俺は諦め自分の額を軽く叩く。


「ほら、一緒にいたじゃない」


 すると、彼女は俺達をて招きし誰もいない場所に行くといい歩き始めた。俺達は彼女の後を追いかける。

 そして、彼女は誰もいない場所として視聴覚室へと入る。俺達も後を追った。


「あなた死神でしょ」


 私はいきなり彼女に言い当てられ驚いてしまった。


「残念だけど、早くもと来た世界に帰りなさい。じゃないと私が相手になる。母の仇死神。覚悟しなしなさい」


 私に向かい彼女は恐ろしい程までの殺気を放つ。私は戸惑うだけでどうすることもできない。


「なんの事かわからないですぅ」


「問答無用‼︎」


 彼女は懐からお札らしきものを取り出し集中して、言霊を唱え始めた。私は彼女の霊力が禍々しい。体からじっとりと汗が滲み出てきた。


「死神退散‼︎」


 お札は彼女の手を離れると勢い良く私の所に飛んで来た。私は本能的に死神の大鎌を手に持つとお札を二つに切り裂く。


「何⁉︎」


「それはこちらが聞きたいですぅ」


 二人の間に激しく火花を散らし戦闘を開始した。俺はどうする事も出来ず立ち尽くしていると、彼女達の攻撃が壁や床へとぶつかり閑静としていた視聴覚室が瞬く間に廃墟とかした。


「ちょっと待ったぁ」


 俺は二人を睨みつけ静止させる。視聴覚室がこれ以上の光景になるのは流石に困る。死神と彼女が戦ったからだと仮に話したとして誰が信じる。嘘だと馬鹿にされ相手にされなくなるのがオチだ。

俺の声に驚いたのか苺は俺をポカンと見て固まっている。同じく彼女もお札を落とし目を丸くしている。


「何が何だかわからないからお互い説明しろ」


俺は二人の仲裁役となるべく間に割り込むと喧嘩等が起きないよう十分注意を払い話し合いの


「いいでしょう。私の家は代々神社の神主をしてきました。祖父を筆頭に家族全員で幸せに暮らしていたんだけど、ある日死神が訪れ母の命を奪って行った。それが許せないの」


 私の仕事は死した魂を女神の懐に帰るサポートをすること。しかし、その反面人からしてみたら魂を奪って行く泥棒に見えるのかもしれない。

 それが例え運命だったとしても……。


「それ以来、私は死神を憎む様になりました。母を殺した存在として」


 そして彼女の目から涙がこぼれ落ちた。私は彼女に抱きつき涙を流す。


「……どうして」


「わからないですぅ。こんなの悲しすぎますぅ」


  「貴方は綾瀬君を殺しに来たの?」


 私は俯きコクりと頷いた。


「絶対させないから」


 冷たくいい放つと教室から出ていった。

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