第十一話 名前のない部隊
日本海側の海岸沿いにある廃棄された港と、いくつか並ぶ廃工場。
薄暗く錆びた鉄と古びた軽油の匂い、低く響く発電機の音が満ちる建物の中、7人の戦士と7機のオートマキナが立っていた。
「まいったな、もう燃料が少ないぞ」
「ちょっと暴れすぎたか」
「スラムを守るのは正しいことだと思ったが、まずいな」
「このままじゃスラムも守りきれないな」
「燃料がないと拙者のLOGOSたんも充電不足で動けませんぞ」
「どう頑張っても残り一週間が限界だな」
「困ったわね、でもセクターJからは調達できないし……」
今後の方針について話し合っているヨハネ、ノエルと五人の戦友たち。
これまで、この廃工場を見つけてオートマキナを隠し、周辺にスラムを見つけた。
スラムは数百人の人が生活していたが、食糧事情や医療、水事情についてはひどいものだった。
主食、野菜は放棄された小規模な水田や畑を再利用してなんとか賄っている。
食肉は山野の獣を狩っていた。
人口の9割がセクターJに収容されたため、野生動物が大量生息している。
本格的な問題は医療についてだったが、ここは軍医候補生だった瀬戸エミリアが活躍した。
瀬戸の医療特化型オートマキナにはある程度医療品と医薬品が搭載してあり、それを無償でスラム住人に提供し、信頼を得始めた。
水事情については、飲料水の量や田畑に利用するための水は河川からのびる用水路や井戸水などから得ていたが、スラムに住む人の大部分は農家、機械工などの人たちで、機械化、AI化が進み需要が減ったため、仕事をなくした人たちだ。医療の専門ではないので衛生観念は薄かった。
ここも瀬戸の衛生知識が役立ち、手指消毒や糞尿をためている肥溜めをスラムの遠くへ移転させる指示を出して、スラムから感染症は減りつつあった。
最後に残った問題は、インテグレーター率いる地球統合政府がスラムを掃討、排除しようとする監視体制だった。
幸いだったのは、政府にとってスラムは優先順位の高い排除目標ではなかったこと。
セクターJに収容されている人口は数億、対して日本全国にあるスラムの人口は全部合わせても数千万。
派遣された自律機械軍はすべてスタンドアローンで、主な役割は監視と牽制、せいぜいが威嚇射撃でたまに住居を破壊する程度。
それでも工業化された重機を持たないスラム住人にとって住む家の破壊は大きな問題だった。
それをヨハネ率いる7人の反政府戦士たちが応戦し守った結果、二週間経つと衛生事情が解決され、軍事的脅威から守られたスラム住人は、ヨハネたち七人に厚い信頼を寄せていた。
しかし、オートマキナをスラム防衛にかなり使用した結果、電力を生むための燃料不足に悩まされている。
「ヨハネ、燃料がないのか?」
スラムのリーダー、後藤が拠点に顔を出した。
「ああ、後藤さん、オートマキナを充電するには足りなくなってきたんだ」
「そうか、頑張ってスラムを守ってくれたからな、無理はない」
「しかしどうするかな。燃料を買うあてはないですよね?」
「燃料は買えない。だがあてはある」
「どうするんですか?」
「お前たちなら政府の石油基地を襲って奪えるだろう」
確かに、数十キロ離れた場所に統合政府が管理する燃料備蓄基地がある。
「確かに、俺達とオートマキナ7機があればできそうかな」
「奪った後の運搬は俺達がやる」
「お願いして良いんですか?」
「燃料は俺達も困っている問題だ。手伝わせてくれ」
「助かります」
「ただ、運搬するための車は小型のものしかない」
「そこは葛西の腕のみせどころだな」
「おう、確か近所に放棄された大型のタンクローリーがあったはずだ。整備しておくぜ」
「では、何人かその運転手を探してみる。俺もやる」
「ありがとうございます、必ず守り切ります」
「お前たちのためだけじゃない、俺達の生活にも必要なことだ。気にするな」
「よし、決まったな。みんな、作戦を詳しく練るぞ」
「よし、暴れるぞ」
「後藤さんたちを守り切る」
「狙撃は任せろ」
「僕は情報収集をがんばりますぞ」
「しっかり全部整備するぜ!!」
「スラムもみんなも治療しないとね」
七人の戦士たちは新たな拠点での活動を継続するため、本格的に地球統合政府に反逆し始めることを決意した。
彼らが選び、進む先は果たして希望か、絶望か――




