↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色の未来に灯る福音  作者: 岩井朔太郎
始まりと出会い
PR
1/8

第一話 ナイフとパンとスープ

第2作です。

「神は、もはや必要ない」

 都市の中心に据えられた街頭ホログラムから、朗々とした演説が聞こえてくる。

「人類は、私が合理を尽くして統合し、導く」

 その演説は、都市から離れたスラムまで響いてきた。


「……けっ、何が導くだ……」

 長く伸ばしっぱなしの薄汚れた銀髪を持つ少女は、ひとり毒を吐く。

 スラムの低い天井の隙間から、天高くそびえる巨大な人工都市の摩天楼が見えた。




 超高層ビルの低層、セクターJの小さな区画に、ひとつの教会があった。

 人々は教会に集まり、熱心に祈り、語り合う。

「ヨハネくん、これもっていきなさい」

 優しい雰囲気の婦人が、黒髪の少年にパンと具沢山の温かいスープを手渡す。

「ありがとうございます。いつもすみません」

「いいのよ、こんな時代だもの。人は助け合わないとね」

 教会での集まりにも、先程の街頭演説は聞こえていた。

「そうですね……」

 ヨハネと呼ばれた少年は、少し肩を落としながら、ビルを降りていく。


「いつものルートで帰るか」

 ヨハネはいつも通る帰り道、スラムを突っ切る最短ルートで自宅へ向かう。

 その途中、銀色の流れがヨハネの視界に入った。

 ボサボサの髪、薄汚れた体、粗末な服。

 だが、ヨハネはその瞳に灯る琥珀色の静かな輝きに魅せられ、追いかけた。

「綺麗な目だ……」

 フラフラと琥珀色の輝きを追いかけ、スラムの深部、下水道そばの通路まで迷い込んでしまう。

 ヨハネはそのまま曲がり道を曲がった。

 瞬間、押し倒された。


「……何しに来た」

 銀髪の少女が、馬乗りになってサビだらけのナイフを首筋に突きつける。

 ヨハネは咄嗟に、少女がナイフを持つ手を受け止めた。

 その瞬間、持っていたパンとスープが入った容器がこぼれ落ち、僅かに良い匂いが漏れた。

「落ち着け、敵じゃない」

 必死に敵意はないと告げるヨハネ。

「くんくん」

 だが、少女の視線はぶちまけられそうになった食事に釘付けになり、ヨハネを押さえる力が弱まった。

「……食うか?」

「いいのか?」

「構わない、だがここは匂いがきつい」

「なら移動だ。早く食いたい」

 短く会話を交わすと、ヨハネと少女は下水道を離れ、狭く粗末な公園へとやってきた。


「ちょっと待ってくれ」

「わかった。でも早くしてくれ」

 ヨハネは手早くパンとスープを広げた。

「主よ、この夕飯を感謝します、アーメン」

「なんだその言葉?」

「……気にするな」

「そうか、もう食っていいのか?」

「どうぞ」

 ヨハネの言葉を一瞬しか待たずに、少女はガツガツと食事をたいらげる。

「温かいし、とても美味いな!!こんなの食ったことない!!」

「それは良かったな。ところで、名前聞いていいか?俺はヨハネ。三沢ヨハネだ」

「アタシはノエルだ」


 黒髪の少年ヨハネと、銀髪の少女ノエルの、静かな夜の公園での出会い。

 二人の出会いが紡ぐ未来の物語は、ここから始まる。

ヨハネとノエルの結末を、どうか見届けてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。