1.令嬢達のお茶会
3人の令嬢のお茶会を覗き見。
会話だけは読みにくいという方はそっと閉じてください。
色々ゆるゆるですので、ふんわりなんとなく、暇つぶしにお読みください。
お茶会とは淑女達にとって情報交換をしながら交流を深める大切な場所である。
それが来年に学園入学を控えた、まだ幼い15才の少女達だとしても、彼女達はきちんと教育をされた立派な淑女である。
淑女としてお茶会という戦場で戦うこともあれば、気のおけぬ友人と楽しむお茶会もある。
これは大人と子供の狭間の3人の少女達が、戦場の練習であり、気のおけぬ友人との楽しい一時であるお茶会を覗き見るお話。
「 聞きました?」
「聞きましたわ〜」
「聞きましたわ」
「「「リレスタン第一王子殿下のお噂」」」
「今日はもうこのお話しかございませんわよね」
そう言ったのは明るい栗色の髪をゆるく巻き、淡いブルーグレーのまんまるの瞳を細めて笑う、ベルメーレン公爵家の娘アニス。今日はこのベルメーレン家のサロンで仲良し3人によるお茶会が開かれていた。
「男爵家の令嬢を第一王子殿下がとてもとても気にかけていらっしゃるとか」
一見冷たい印象を与える、アイスシルバーのストレートヘアにブルーヴァイオレットの瞳の少女、ジュールス侯爵家令嬢イヴァンナは、柔らかな笑みを浮かべながら言う。その美しさは、同性であろうと周りのメイドがぽっと頬を染める程。
「アウトレーヌ男爵令嬢のマリ様ですわね。珍しいピンクの髪の自由奔放な女性らしいですわ〜」
おっとりとした喋り方のコートドール侯爵家の娘フラニータが補足する。綺麗なブロンドの髪は今日も綺麗に編み込まれている。新緑の瞳のそばにある泣きぼくろが15才とは思えない色気を醸し出しているのか、はたまた大人びたその身体のせいか、男性からのアプローチは後を絶たない。
「あら、マリ様はピンクの髪なのね?」
「ええ、アニス。ピンクの髪は珍しいので入学当初から目立つ存在だったとか。まぁアウトレーヌ男爵家は特殊な淑女教育をされているようですから、髪だけでなく行動も目立っていたそうですけどね〜」
おっとりとした喋り方とタレ目がちで優しく見えるフラニータだが、実際は結構な毒舌である。
「お兄様がピンク頭とおっしゃっていて、頭の中がピンクなのかと思っていたのだけど、髪がピンクでしたのね」
「まぁ、セドリック様が?」
「あ、いえ、違うわイヴァンナ。お兄様じゃなく、マリ様の噂を教えてくれた方がそう言っていたらしいわ。私はそれをお兄様から聞いただけで、決してお兄様がピンク頭と言ったわけじゃないわ」
「ふふ、イヴァンナの初恋の君のセドリック様がそんなこと言わないわよね〜」
「やだわフラニータったらそんな昔の話」
「でもマリ様の相手って殿下だけじゃないのよね?殿下の側近候補達までマリ様に夢中と聞いてるわ。それってイヴァンナの婚約者のスコーチ様も入っているのでしょう?」
「そうみたいですわ。元々あまり良好な関係を築けていなかったけれど、最近では週に一度の婚約者同士のお茶会も欠席ばかりだし、噂は本当だと思いますわ」
「そのまま婚約破棄にならないかしらね〜?向こうの不貞ってことで破棄してしまえば?そしてセドリック様と婚約したらいいじゃない〜」
「婚約破棄なんて……それにセドリック様にはロザリンド様という婚約者がいらっしゃるわ」
「お兄様とロザリンド様も仲は良好じゃないから、私としてはイヴァンナがお兄様の婚約者になってくれた方がいいんだけどね。一度はそんな話も出たしね」
「イヴァンナのお父様がイヴァンナ大好きだから嫁に出したくなかったのよね〜。弟のクリフ様も昔は病弱だったから、イヴァンナに婿をとらせると言ってセドリック様とは婚約はできなかったのよねぇ?」
「ええ、クリフが健康に育つか分からないとお医者様に言われてしまいましたから、私がジュールス侯爵家を継ぐことに。私としてはもう健康になったクリフに侯爵家を継いで欲しいのですけれど」
「クリフ様はジュールス侯爵様がお持ちの伯爵位をもらうのよね?」
「伯爵位があったからこそ、私が後継者という話にまとまったのです。今となっては私が伯爵位を貰ってもいいですし、嫁に出るのでも良いのですけれど、スコーチ様との婚約時には私が侯爵家を継ぐという話で婚約したので変えられないのですわ」
「スコーチ様のお兄様がとても優秀で次期ソーントン侯爵として安泰と言われているものね。お家を継ぐ可能性は無いに等しい次男のスコーチ様からしたら、同じ侯爵家に婿に入れるなんて幸運だものね」
「スコーチ様も一応殿下の側近候補ではあるけれど、未だ立太子していない殿下の側近候補というのも微妙よね〜。殿下の婚約者のエリザ様のお力もあって立太子するのは第一王子であるリレスタン様と言われているけど、噂が出るほどなんだか妙なことになってますしね〜」
「第二王子殿下がまだ幼いながら優秀と聞いてるけど、どうなのフラニータ?」
「我が妹ミアーナの婚約者である第二王子殿下のヘリオス様は噂通り優秀ですわよ〜。妹のことも大事にしてくださって、この間もミアーナの大好きな菓子店のお菓子を贈ってくださったわ。私達家族に対しても誠実で、とてもまともにお育ちですわぁ」
「ミアーナ様は12才になられたのですよね?第二王子殿下は13才。もしも、もしもですけれど、エリザ様と婚約が白紙になんてことになったら、立太子は第二王子殿下ってこともありえますわね?」
「ありえますわね〜。まぁさすがに無いと思いますけどね。エリザ様と婚約解消して、まさか男爵令嬢と結婚するなんてさすがのリレスタン様もおっしゃらないでしょ〜」
「そうですわよね。王座を手放すことになりますものね。プライドの高いリレスタン様がその地位を捨てるとは思えませんわ」
「リレスタン様も成績は優秀なのに、傲慢でちょっと頭が弱いのですわ。エリザお義姉様に王妃になっていただきたいけれど、お義姉様の幸せを考えたらリレスタン様がこのままマリ様を選んでくれたらとも思ってしまうわね」
「アニスはスペンサー家の姉弟が大好きねぇ」
「ええ。婚約者のヒューゴ様はもちろん、エリザお義姉様も大好きよ。私の目標ですもの」
「婚約白紙となったらエリザ様がお困りになりませんの?」
「エリザお義姉様なら引く手あまたですもの。ここだけの話、今だって実は隣国の皇太子様からアプローチされてますのよ」
「え!?そういえば皇太子様はいまだ婚約者を発表なさらないって……」
「さすがエリザ様ねぇ〜」
「エリザお義姉様はお断りしてるわよ。でも皇太子様が諦めないのよね。先日もスペンサー家でヒューゴ様とお茶をしていたら、皇太子様からエリザお義姉様に美しい薔薇が届いていたわ」
「エリザ様は薔薇がお似合いよね〜」
「そうなの。でもね、真っ赤な薔薇ではなく、ほんのり淡いピンクの薔薇なのよ」
「リレスタン様はよく真っ赤な薔薇をプレゼントすると聞いたことがありますわ」
「そうなのよ。エリザお義姉様はどちらも似合うけど、お義姉様が好きなのは淡い色のお花なのよ」
「好みを把握して贈ってくださってるのね。素敵だわぁ〜」
「ピンクあた……マリ様にも赤い薔薇をプレゼントしていたと聞きましたから、リレスタン様は女性に花といえば赤い薔薇なのかもしれませんわね」
「男性ってなぜ赤い薔薇を贈れば女性は喜ぶと思っているのかしらね〜?私の婚約者のラグナル様もお花を贈ってくれる時はいつも赤い薔薇なのよ」
「あら、意外ですわ。ラグナル様ってフラニータの好みの花を贈ってくれそうな気がしてましたわ」
「誕生日やお土産とか、物を贈ってくださる時は私の好きそうな物を贈ってくださるのだけど、花だけはなぜか毎回赤い薔薇なのよねぇ」
「以前に赤い薔薇を喜んだとか?」
「うぅ〜ん、初めて貰った時に喜んだのかもしれないけれど、私ダリアが好きという話を何度かしているのよねぇ」
「花言葉を大事にしてるのじゃないかしら?ラグナル様がフラニータを愛している証ですわよきっと」
「そうかしらね〜?仲が悪いわけではないけれど、愛されてるような気はしないのよね。まぁ政略結婚だから愛はなくとも良好な関係であればいいのだけど」
「フラニータはラグナル様と穏やかな夫婦になれると思いますわ。アニスはヒューゴ様と相思相愛の理想の夫婦に。私もスコーチ様ともう少し寄り添いあえる関係になれるよう頑張らなければいけませんわね」
「イヴァンナ、大丈夫よ。あなたの結婚生活は甘々溺愛生活が待っているわ。私にはその未来が見えるわ」
「まぁ、アニスったら占い師みたいですわ。ありがとう。そうね、アニスが言うのだからきっとそうなりますわね」
「いいわねぇ甘々溺愛生活、ふふふ。私もそうなるかしら?」
「ええ、きっとなるわね。私とヒューゴ様が1番普通の夫婦ね。イヴァンナもフラニータも溺愛してくる夫に困るぐらいになるわよ」
「アニスの占いでは私も溺愛生活になるのねぇ。楽しみだわ」
クスクスと笑い合う3人の少女。恋愛に憧れ、でも恋愛ができる立場でも、結婚相手を選べる立場でもない。そんな彼女達が言葉だけでも自由でいられるこの3人だけのお茶会はとても大切なものなのだ。
お読みいただきありがとうございます




