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レジスタンス  作者: 猪仲
上書きされた世界
PR
15/15

最後の戦い

【Г2048/10/11】



時は少しさかのぼり、アルフォード一人だけになった司令室。アルフォードは無線を聞きつつ次の手を読んでいた。



「アドルフなら次に何をする?正面ゲートは特殊部隊へ大打撃を与えるため、側面はスルーしても問題ないと見ていたのだろう。諜報部隊に対しては特に気にしている様子はなかった・・・」



国防軍の参謀、アドルフ・ウルベルトは第四次世界大戦にて様々な奇策な作戦を展開し、現在の地位に上り詰めた人物である。当時から出世欲が強かったものの、司令長官になろうとはしなかった。当時本人は「私は上に立つより参謀として活躍したほうがいいですから」と言っていた。


実は王族追放派の人間で機会を狙っていたとはその時は全くわからなかったのである。



「戦艦大和で予備戦力をそっちに集中運用して全部隊を展開させ・・・まさか!」


「気がつくのが遅いんだよ司令長官!」



司令室の入り口に立っていた男はアドルフ・ウルベルトだった。特殊作戦群で周りを固めてアルフォードを完全に包囲していた。



「アドルフ・・・お前の狙いは私か・・・」


「違うな、お前を司令部まで連れていき衛星砲を発射させるんだ。一緒に来てもらおう」


「衛星砲の発射コードか、王宮を攻撃するつもりなら諦めろ。すでに手は打ってある」


「そいつはどうかな?やってみないとわからないだろ?」


「そうだな、やってみないとわからないな」



そういうとアルフォードは回転式拳銃を取り出し、アドルフを撃った。しかし、特殊作戦群もそれに反応してアドルフを盾でガードし、戦闘態勢に入った。アルフォードは机を盾にして応戦する。



「あんた一人でこいつら相手にできるわけがないだろう、諦めろ」


「そういうわけにはいかない、まだやらないといけないことが多すぎる」


「お前がやることといえば俺に発射コードを渡すことだけだ!さっさと渡せ!」



特殊作戦群が机を撃ち、数発がアルフォードに命中した。流石のアルフォードも痛みに耐えかねて床に転げた。アドルフが近づき、手錠をかけるその瞬間に閃光弾が部屋に投げ込まれた。



「くそ!何者だ!!」



「あらあらお父さん、ずいぶん痛そうですね・・・大丈夫ですか?」


「すまん・・・間に合ってくれて助かったよノエル・・・」



唐突に現れたスーツ姿の集団。先頭に立つのはノエル・エルディア。アルフォードの妻にしてシガール達の母親である。オーキッド色の長髪に、カチューシャをつけている。優しそうな赤紫色の瞳が少し歪んだ。



「さて、アドルフ・ウルベルト参謀、あなたを国家反逆罪で逮捕します」


「ヴァストーク警察がこんなところで対抗できると思っているのか!お前ら、アルフォード以外殲滅せよ!」


「特殊作戦群の皆さん、今ならまだ間に合いますよ?おとなしく銃をおろして床に伏せて手を頭の上におきなさい!そうですか・・・皆さん覚悟はできてますね」



特殊作戦群は言葉を聞かずにスーツの集団に発砲した。しかし銃弾は壁にあたり、スーツの集団はいつの間にか後ろに回り込んでいた。あまりの素早さに為す術もなく12人で構成されている特殊作戦群は全て捕まった。



「お前たちの名前は知らないが、殺人未遂罪の現行犯で逮捕する」


「バカめ、軍人は人を殺す職業だ」


「ふふ、あなた達わかってない。これは戦争じゃないの、わかる?」


「何を言ってるんだ?ここまで被害が出ているのに戦争じゃないと?内戦だろ」


「あなた達ヴァストーク人なのになんにも法律や憲法を勉強していないんですね。日本人の私はちゃんと理解しているのに」



アドルフの服を掴みながらそういった女性は黒髪で髪の毛を後ろで結んでいる。周りと比べて歳がずいぶん若いように見えるが、自信満々に語った。



「アドルフ参謀、あなたは反逆者として連邦議会に認定されているんですよ。知らなかったんですか?この国では戦争行為は議会を通さないとやってはいけないことになってるんですよ」


「まさか・・・アルフォードお前!!」


「間に合うかどうかは賭けだったがな、間に合って本当に・・っ!」


「お父さん、もう休んでくださいよ・・・。さて、全員を逮捕だ!」


「ここで終わると思うなよ!!離せ!!」



「ノエル・・・あとは任せた。私は少し休む・・・」


「ゆっくり休んでください・・・万代かずしろ警部、容疑者をおまかせします」


「はい、ほらさっさと歩く!」



首謀者のアドルフを確保したものの、先の戦闘で通信機が破壊され連絡が取れない。仕方がなく救助が来るのを待つことにし、アルフォードは応急処置を行ってなんとか命は取り留めた。



一方司令部前にはアンドレイとリナが立っていた。アンドレイはRM剣と9mm自動拳銃、リナは両手にRM剣と腰に山本の刀を挿している。



「リナ、俺は右側から攻める。お前は左から頼む」


「わかった、気をつけてね」


「ああ、ワーグナー家の人間の実力を見せてやる、いくぞ!!」



二人が走り出し司令部に突入した。司令部には特殊作戦群の残りの部隊がいたが、強襲に対応しきれず次々と倒されていく。リナのほうはディストラクションで吹き飛ばし、アンドレイのほうはRM剣で武器を切り裂き、9mm拳銃で確実に息の根を止めていた。



「山本ぉぉぉ!!どこだ!どこにいる!!」


「師匠!もう戦う理由はないんです!」


両サイドを襲撃し、残すところは司令室のみだ。もうここしかないということは間違いなく司令室に山本がいる。先に到着したのはアンドレイだった。



「アンドレイ君か・・・良くここまで着たな、誉めてやる」


「山本・・・お前には騙されたよ」


「騙したんじゃない、お前たちが聞かなかっただけだ。おいらは一度も嘘はついてねぇ」


「一つだけいいことを教えてやる。四葉さんは確保した、無事だ」


「・・・そうか」


「なんだ?もっと喜びそうだと思ったんだが」


「いや、無事なら何よりなんだ。ただな、おいらもけじめをつけないといけねぇ」


「そういえばお前の目的を聞いていなかった、何が目的だったんだ?四葉さんは助かったじゃないか。わざわざ時間跳躍機で世界を上書きしてまで、お前は何がしたかったんだ」



「最初は四葉を殺したヤツらを消してやろうと思っていた。時間跳躍機で10年後へ向かいこの手で始末しようと・・・しかし時間跳躍機は10年ではなく1000年飛んでしまったんだ。何故だったのか今ならわかるけどな・・・」



「俺達が操作して固定してたからだな」



「そうだ、そこでもう一つプランを考えた。時間跳躍機は条件を満たすともう一つの機能を有している。それがお前が言っていた世界の上書きだ。これを使ってこのヴァストークと10年前の日本をうまく上書きさせることを思い立ったんだ」



「そこまでは俺たちでも想像がついた、だがそこから先がまったくわからないんだ」



「知りたいか、おいらは時間跳躍機でこの世界を上書きすることに成功した。この話をしているということはわかると思うが、お前たちと同じくこの世界の記憶を持たない存在だ。おいらはヴァストークの駐留軍として日野に派遣されていたということにされていた。


状況を把握するために、様々な場所でいろんな資料を見たんだがその中にお前たちも知っているであろう計画書があったんだ。四葉は生きていておいらのそばにいた、おいらにはもう戦う目的がなくなってたこともあって、日野経由でお前たちに知らせようと考えたんだ。



だが、日野がいい加減だったということもあって気がついてもらえなかった。このまま秘密裏に計画が進めば間違いなく王族を抹殺されて革命を成し遂げられることになっただろう。そこで考えたんだ、四葉に人質になってもらい計画を強行できるように差し向けたんだ」



「お前俺たちに情報を流して、お前が関わっていると見せかけて最大限の警戒をするように差し向けたということか?でも俺たちが四葉さんを救助しなかったらどうするつもりだったんだ?」


「なぁーに、弟子がうまくやってくれるさ。実際そうだったんだろう?」


「確かにそうだった、そこまで計算した上での行動だったのか。でも何故そこまでヴァストークに肩入れするようになったんだ?」



「おいらのおかげで色々とめちゃくちゃになっちまったからなぁ、罪滅ぼしのつもりだ。それでも犠牲はそれなりに出たんだろう?話はこの辺にしておこうか」


「お前、これからどうするんだ」


「おいらが捕まれば全て丸く収まるだろう?最後の戦いと行こうじゃないか」


「戦う必要はないじゃないか・・・」


「いや、最後に戦わなければならない。なぁおいらの最初で最後の弟子、リナ・ワーグナー!」


「師匠、私は師匠以外からもいろいろなことを学びました。そして今なら師匠を超えることができるかもしれません。最後だと言うなら今度こそ全力で戦いましょう。あのときだって本気で殺そうとしてこなかったじゃないですか」



「ハハハ、バレてたな?稽古だと言っただろ?稽古で人は死なせちゃだめなのさ!」


「じゃあ今回は戦いということで全力を出してくれるんですね?」



山本はニヤっと笑みを浮かべ、一歩リナの方へ歩くと宣言した。



「山本流師範、山本吾一。山本流一番弟子、リナワーグナーに決闘を申し込む」


「その決闘・・・受けて立ちます」


「・・・わかった、どっちが勝っても山本、お前を拘留するでいいんだな?」


「ああ、それで構わねぇ」


「では場所を改めさせてもらう、こんなところで暴れられたらオニヒトデ要塞を壊したほうが再建するのが楽になっちまうからな」


「それもそうだな、っとその前に橋姫と御手洗に戦闘停止を命令しねぇと」


「御手洗なら今頃日野さんのところだから心配するな、もうひとりは俺はわからないが」


「あいつには衛星砲の制御室を守ってもらっていたはずだが」




衛星砲制御室付近ではエリザと橋姫が未だに膠着状態のまま戦闘を継続していた。破城剣の動きに慣れてきたのか橋姫は鋼糸を匠に使って立体的な攻め方に変わっていた。



「鋼糸でその剣の動きは止められるらしいな!あんまり持たないけど!」


「この剣は切れ味はあんまり良くないでねぇ!」


「そうかい!でも、これでおしまいだ!」



鋼糸で破城剣の動きを一瞬止め、そのまま切りかかりに突撃した。エリザは止められて当然だと思っていたためまったく動揺せず向かってくる橋姫を正面から受ける構えを見せた。



互いの得物がぶつかる瞬間に橋姫は軌道を大幅に反らし、エリザの一太刀を交わした。その瞬間エリザの右肩にナイフを突き刺し、そのまま後ろの方へ飛んでいった。



「イッ!!俺に一太刀食らわすなんて凄いじゃないか・・・」


「これだけやってやっと一太刀ってのは腑に落ちないよ!アタシそんなに弱かったかな」



よく見ると橋姫の右足から出血している。どうやらさっきの後ろへ飛ぶ瞬間にナイフを投げられていたらしく、ナイフが刺さっていた。



「これで得意の立体移動ができないねぇ?どうする?」


「あんたも二刀流は無理なんじゃないか?おとなしくその意味わからない剣を引っ込めたらどうだ」



その時橋姫の通信機が鳴った、山本からの通信だ。



「・・・了解」


「なんだ」


「上司からの命令、四葉さんが開放されたから作戦中止だってさ」


「ってことは俺にも来るな、あ、ほらきた」



エリザにはエドワルトからの通信だ。アルフォード達がアドルフ・ウルベルトを確保、作戦終了との通達である。興をそがれた二人は、戦闘を中止して二人で制御室へ向かっていった。



「お前、橋姫愛織っていったか?今度ワーグナー家に来い。今度こそ決着をつけてやる」


「あんたいいヤツだね、今度はナイフじゃなくて非殺傷の武器でやろう、殺すのは勿体無い」


「それは奇遇だな、俺もそう思ってた」



さっきまで殺し合いをしていた二人に妙な友情が芽生えた瞬間だった。



ヴァストーク島沖合では戦艦大和を武蔵が曳航していた。船体の損傷はさほどひどくないため、沈むことはない。そのまま沈めるにも勿体無いと践んだためである。



「今エドワルトさんから連絡がありました、アルフォード司令長官は負傷したものの警察と協力してアドルフを捕らえることに成功したそうです」


「父さん大丈夫なの?」


「ええ、重傷ではあるものの命に別状はないようです」


「よかった、急いでヴァストークに帰らないとね」


「そうですね、あと30分ほどで到着します」


「日野さぁぁぁん!!!暇だ!30分何してればいいんだ!!」


「そうですね、佐藤少将と模擬戦闘でもしていてください」


「え?」


「よっしゃああ!!佐藤少将!!やろう!やろうぜ!!」


「じゃあアタシは読書でもしてるよ」


「レミ姉さん!!見てくれないんですか!おいらの勇姿!!」


「はぁ・・・面倒くさい・・・」


「さっさと行く、御手洗」


「あ、少将どこでやるんですか!!ちょっとまってください!!」



各地の戦闘はすべて終了、いずれもアドルフ率いる正規軍の敗退という形で終わった。一番の決め手はアルフォードが手を回し、議会がアドルフを敵勢力として認めていたというところだった。その時点でアドルフは革命プランを実行したとしても追放されることが決まっていたのである。


もののついでと言わんばかりに反王族派はことごとく逮捕、もしくは追放されて王族の権力は維持されたのだった。そして最後の戦闘も始まろうとしていた。



「ヴァストーク技研、レベル5区画の武器試験場だ。ここは強化石材とRMで壁を強化して作られているから何をしてもそう簡単には壊れない。たとえリナのディストラクションでもな」


「兄、いいところを選んでくれてありがとう」


「すまねぇなアンドレイ君、これで心おぎなく戦うことができる」


「山本、お前口調が戻ってきたな。ちょっと怖かったんだよ安心したぜ」


「あ?おいらいつ口調が変わったって?そらーねーぜ?」


「アハハハハ、戦う前なのに調子狂うなぁ」



「さて」


「はい」



さっきまでの楽しげな雰囲気から一気に緊張感のある雰囲気に変化した。互いに殺気を帯びた眼光をし、今にも戦闘が始まりそうな雰囲気だ。



「この決闘の見届人として、アンドレイ・ワーグナーが務める。両者ルール無用、戦闘不能になるまで戦うことを許可する。生死は問わない、いいな?」


「ああ」


「それでいいよ」



「よし、それでは始め!」



「山本吾一」


「リナ・ワーグナー」


「いざ尋常に参る!」



両者が刀を抜き、正面でぶつかった。二度目の戦闘とは違い、リナは縮地で攻めようとしなかった。見切られてカウンターを食らうことを恐れたからである。その後リナは山本に何度も斬りかかるが全て刀で受けとめられた。


山本が間合いの外に出て、螺旋琉の構えをした瞬間にリナが縮地で近づき発動前に弾き飛ばした。螺旋琉はかなり大きい動作を要求されるため、螺旋流の動きを知っているものは攻める絶好の機会なのだ。



「ぐっ!・・・やはり成長したな!」



切られはしなかったが思い切り吹き飛ばされ、体制を崩された山本だったが、あの別れ際に使った機械を持ち出した。アンドレイは機械を見ているがリナはそれを見ていない、だがリナは機械を握った山本をしっかりと捉えていた。



「私に機械は効かないのを師匠は覚えていないんですか!!」


「覚えているさ、これはおいらじゃなくてお前に使うのさ!」



リナは少し動揺し機械を壊そうと刀を振る。しかし、その動作でスキルで処理することを忘れてしまう。山本の狙いはここにあった、刀を寸でのところで避けて機械を起動した。



<<<スキル:空間移動からスキル:電気操作へ切り替わりました>>>



「え?切り替わった?」


「おめぇさんには言ってなかったが、この機械は使用した相手のスキルをコピーして使うことができるものだ。もっとも奪うわけでもないしスキルを保有していない人間しかコピーしたスキルは使えないがな」


「スキルの優位性を立たれたということ・・・でも私はスキルに頼る戦闘はしないよ」


「わかってらぁ、それでも優位性を消すのは戦闘の基本だ、覚えておけ!」



「では私も本気を出します、オーバーマジック!スーパーエッジ!!」


「たしかそれは・・・あのクリーパーみたいなのが使っていた技だ」


「そうです、神父様が使っていた魔法の剣を呼び出す魔法です」


「電気はおいらも操作できるからそうしたわけか・・・面白い!!」



リナが持つ刀にスーパーエッジで呼び出した刀がまとわりつき、淡い白色に輝いている。



「第二ラウンド、いきます!」



今度は刀を受け止めただけで刀をおられる可能性がある、だが山本は余裕の表情を見せた。



「はっはっはっはっは!!そんなもんでおいらの刀を折ることはできねえよ!!」



真っ向から斬り込んできた山本だが、それを匠に避けてカウンターを入れた。それを刀で山本は受け止めたが、宣言通り折れることはなかった。圧縮された鋼の強度は通常じゃ考えられないほどのものらしい。


山本は更に追撃をするべくリナに斬り込むが、リナも必死にそれをさばく。正面からの打ち合いとなると山本のほうが若干有利らしく、どんどん後ろに押されていく。



「スキル複製!縮地!」



壁に押し込まれる前に縮地でそれを回避したリナは、間髪入れずに魔法を発動した。



「師匠、これが私の全力です!!受け止められるなら受け止めてください!!スキル複製、延命!エキストラマジック!オーバーエナジーバースト!!」



リナの刀が光ったかと思うと、巨大なビームのようなエネルギー波が放たれた。魔法というものは基本的な魔法以外に使用者が生命エネルギーを使って固有のものを発動させることもできる。リナの固有魔法は死なない程度の生命エネルギーを全放出し、エネルギー波として放つものだ。


スキル延命を用いて放つため、もともとある生命エネルギーは消費されないが、1000年の生命エネルギーを一点に放つこの魔法は渾身の一撃というのにふさわしい威力がある。



「よけ・・・られねぇな・・・ならばおいらも渾身の一撃を見せてやる!!」



山本は鞘も手に取り、二刀流スタイルで構えた。



「山本流奥義!!二頭螺旋流!!」


二度目の戦闘で見せたものよりさらに巨大で威力がある螺旋流を放った。部屋の中央で互いの技がぶつかり合い、激しい衝撃が生まれた。ふたりとも傷だらけになっており、床に倒れている。



「ハァ・・・・ハァ・・・しぶといなぁ・・流石は我が弟子だ・・・」


「・・・・・まだ隠し玉があるとは師匠流石です・・・」



戦塵が消え、あたりが見えたところでアンドレイが突然真ん中に現れた。



「この戦いもうやめてくれ!!!このままじゃ部屋がもたねえよ!!技研をぶっ壊したら国そのものが終わっちまうよ!!」



当たりを見回すと強化樹脂とRMで作られている部屋が今にも崩壊しそうな状態だ。さっきの技でそうなったらしく、ミシミシと音がなっている。




「やりすぎちまったなぁ・・・ハッハッハッハ」


「師匠、引き分けでいいですか?こっちにきてください」


「兄、この部屋をもとに戻せばいいんでしょ、オーバーマジック!!リバース!!」



部屋とリナと山本の怪我が一瞬でもとに戻った。これでリナのオーバーマジックは今日分をすべて使い切り、明日まで使用することができなくなった。



「魔法ってやつぁーすげぇな・・・コレは何をしたんだ?」


「指定箇所を24時間前の状態まで戻す魔法です。私達の怪我、私のスキル使用制限、部屋の損壊、全て24時間前に戻されました」


「おお、機械のスキルも空間移動になってやがらぁ・・・」


「師匠、本当に捕まらないといけないんですか・・・?」


「ああ、アドルフ、それでおいらと捕まえておけば王族も安心できるはずだ。おいらは証言をしているから死刑にはならずに済みそうだしな」


「死刑になったら私はヴァストークを消します」


「怖いねぇ・・・大丈夫だ、それはねぇよ!」


「お前が暴れたらマジでヴァストークなくなりそうで怖いわ!!」



【Г2048/10/12】



ヴァストーク警察庁で山本の身柄を引き渡し、アンドレイとリナは歩いていた。



「兄、時間跳躍機ってこの時代にはもうないんだよね」


「ん?ああ、レミの話が本当だったらそういうことになるな」


「また作る?」


「いや、もう作らない・・・」


「そっか、色々嫌なこともあったけど師匠に会えたのはあれのおかげなんだよね」


「そうだな、他にも日野さんや青木、ヴィンセントなんかもアレがあったから出会えた」


「でも悪い研究だったんだよね?」


「そうだな、時間を遡ったり超えたりするのは良くないことだったのかもしれないな」


「私、決めたよ」


「ん?何を決めたんだ?」


「私ね、刑事になる。軍人よりもっと身近に人を守れる職業だから」


「はぁー、お前が刑事か。アルフォード惜しがるだろうなぁ」


「いいんだよ!!そのためにも勉強もっとやらないといけないし」


「お前のドジ具合も一緒に治ればいいな、刑事でドジったら取り返しがつかなくなるぞ」


「・・・努力する」


「お前が刑事なら、俺は鑑識でもやろうかな。研究者って目標を失うと面白くないことを思い知ってしまったからな、今回の戦いでさ」


「兄が鑑識・・・ヤバい、信用できない・・・!」


「うるさい!俺も勉強してちゃんとできるようになるさ!!競争だな」


「兄、もう私に絶対に勝てないからってそういうのを勝負にするのやめてくれない?」


「お前だって何かあるたびにRM剣を振り回してきたじゃないか、どうしたんだ?」


「一皮剥けたというか、色々あって成長しなきゃって思ったんだよ。兄だって変に自信たっぷりだったり妙な行動したりしなくなったじゃん」


「もう懲りた、山本と出会って俺が一番影響を受けたのかもな。アイツは研究を手伝ってた時も常に慎重な行動を取ってたんだ、見習わないとな」


「じゃあ競争だね」


「結局やるのかよ!!いいだろう、この勝負だけは勝ってやる!」



二人はそう言うと、別方向に歩いていった。他の人間がどうなったかというと、ナビはそのまま警視庁公安部に、レミもそのまま陸軍特殊部隊の隊長を務めた。フィリップとシガールはアンドレイが抜けた穴をどうしようか考えたが、暫定レベル5職員として留めることでアンドレイを納得させた。


アルフォードは今回のことを高く評価され、司令長官の座を降ろされることはなかった。参謀の席が空いたが、ここに誰が座るかはまだ決まっていない。一応エドワルトを押しているようだが、どうなるかは不明だ。



アドルフ・ウルベルトは国家反逆罪で死刑、現在執行前の勾留中である。山本吾一はアルフォードが掛け合ってくれたこともあり、条件付きでヴァストークに住まうことを許された。現在は国防軍内部の住居空間で四葉と二人で暮らしている。


その条件というのは常に発信機をつけてどこにいるのか確認できるようにすることと、有事の際に兵器として山本を運用するというものだ。山本もヴァストークを守るためならばと了承した。



山本の元部下である橋姫と御手洗は、橋姫は軍を除隊して現在はワーグナー家でエリザとともに稽古を受けている。どうやら本当に気に入ったらしく仲はいまはかなり良いらしい。御手洗は日本軍にとどまり、ヴァストーク駐留軍の副官を務めている。


特にこの三人は良く夜の街に繰り出して飲み勝負をしているらしいが、御手洗は巻き込まれるだけで引きずり回されているが、それはそれで楽しいらしい。



日野達は大和を回収してから日本に帰国した。しばらくは日本で軍の業務をこなすらしい。そして月日は流れて2年近くが経過した。



【Г2050/4/8】



ヴァストーク警視庁の前に一人周りより幼いように見える少女が立っていた。真っ黒の喪服姿でそのまま庁内へ入った彼女は、受付の前で言い放った。



「ヴァストーク警察庁、刑事部捜査一課に本日より配属になりました、リナ・ワーグナーです!まだパスコードを頂いていないので申請に来ました!」


「リナ・ワーグナーさん・・・ありました、それでは3階の受付で申請してください」


「ありがとうございます、それでは行ってきます」



2年を勉強と稽古にあてて、無事に刑事になることができたらしい。3階へ行き、受付に向かうと受付前に見慣れた白衣の男が立っていた。


「よぉリナ、俺の勝ちみたいだな?」


「同じ日だから引き分けでしょ、バカ兄」


「フフフフ、残念だったな!俺は1年前からすでに働いているのだ!知らなかったのか」


「なっ!!それは卑怯だぞ!!」


「年齢制限はどうにもならないよなぁ、ざまーみろー」



殴るのを我慢し、受付でパスコードをもらったリナは、捜査一課がある13階に足を踏み入れたのであった。



「初めまして、本日付でこちらに配属になりました、リナ・ワーグナーと申します。刑事になりたてでわからない点が多々あるかと思いますがご指導よろしくおねがいします!」



ここはヴァストーク連邦王国の首都、ヴァストーク。人口30万人でほとんどが軍人と一流企業の職員だ。そんなところには、能力であるスキルを持つスキルクラフトや、金の力で世界を悪寒するもの、悪と呼べるものはいくらでもある。


法律を逸脱した行為を行った人を取り締まる組織が警察組織であり、その実働部署が警視庁である。科学が異常に発達したこの島で、どんな犯罪が行われるのかは未知数なのだ。



リナやアンドレイはそんな未知の領域に足を踏み入れ、戦い抜くのである。

皆様これまで見ていただきありがとうございました。初めて作った動画「レジスタンス」から早6年が経過してしまいました。あの動画とはずいぶん大幅に変更されておりますが、この小説が完全版であり、私がやりたかったものです。



いつか動画にできるように様々な技術を磨いておりますが、戦闘描写が多々あることもありなかなか作業は進まないと思っております。動画を期待されている方はものすごく時間がかかることを覚えておいていただけると幸いです。



最後に、こんな放置されてカビが生えつつあった作品をずっと愛してくれている方へ心からの感謝と謝罪を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました、そしておまたせしてしまい大変申し訳ありませんでした。



2018/10/27 猪仲(旧HN万代)



PS:終わり方が次回に続くような描写で終わっておりますが、このまま新作のスキルヤクトというスキルクラフトの犯罪者を取り締まる警察組織のお話を書いていきたいと思います。どれくらい書くのか、そしていつ終わるのかは考えておりませんが、この作品よりはゆっくりと書いていきたいと思いますので、そちらもお楽しみいただけると幸いです。

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