第28話 襲撃の後
「レオン様、ご無事ですかっ!」
賊の捕縛や引渡しなどの後始末が済んだということで、ようやくレオン様のもとへと向かうことが許された。
そうして向かった部屋に入ると、レオン様の姿を確認したところで心配からつい大きな声を出して駆け寄ってしまった。
「やあ、君の方には賊が向かわなかったみたいで良かったよ」
「いえ、そんなことより大丈夫なのですか?」
まるで何事もなかったかのように対応するレオン様の態度に少しイラっとしつつ問いかける。
何も起きていないこちらのことより、自分のことでしょうに。
「ハハハ、全然問題よ。
“魔力なし”とはいえ、僕も剣であれば戦えるから。
それに、襲ってきた連中も本職というより、ただのチンピラという感じだったしね」
「それならいいのですが……」
とはいえ、あまりにも軽い態度にこちらも毒気を抜かれてしまった。
まあ、これだけ余裕があるのであれば本当に大したことではなかったのだろうけど。
「それで、この後はどうなるのでしょうか?」
深夜ではあるものの、このまま寝ることもできないということで、私の部屋へと移動して話をすることになった。
で、アリアに用意してもらったお茶を前にレオン様に問いかける。
一応、襲撃の可能性があると聞かされていたとはいえ、万が一のことだと思っていたし、その場合にどうするのかまでは聞いていなかったから。
「ひとまずは、この街の役人に話をつけることになるかな。
こちらでも簡単に尋問はしたけれど、大した情報は得られなかったし、しっかりと調査してもらわないといけないから」
「既に尋問まで終えていたのですね」
「すぐに使い捨てのコマだとわかったから、さっさと切り上げたけれどね」
というか、使い捨てだったのか。
てっきり、公爵様の泊まる宿を襲ってくるくらいだから、手練れなのかと思っていたのに。
「そうすると、後のことは街の人たちに任せて、私たちはまた移動を再開するのですか?」
「いや、さすがにすぐに出発するのは難しいね。
この街の役人に丸投げしようにも、最低限の説明と協力は必要だし。
一応、強引に話を進めれば、護衛たちだけを残す形にすることも可能だろうけれど、そこまでするほど急いでいるわけでもないから。
まあ、あまりにも拘束期間が長くなるようなら、そういうことも選択肢に入るけれどね」
確かに、最低限の説明と協力は必要か。
おそらく、今回の狙いはレオン様だったのだろうし。
「というか、もしかして今回の件で何か文句を言われたりするのですか?」
「いや、さすがに正面切ってそういうことはないと思うよ。
尋問した限りでは、金銭目的だったみたいだし、向こうが内心でどう思っていようと、そこを責めてくることはできないよ」
「えっ、お金目的だったのですか?」
「らしいよ?
お金を持った若い貴族が少ない護衛でいるから狙い目だとそそのかされたとかで」
うわぁ、それで公爵様を襲うとか、本当にダメな人たちだったんだね。
「……ちなみに、やっぱりそそのかしたのは例の人ですか?」
「まあ、他に狙う理由がある人間はいないだろうしね。
ただ、それにしては中途半端なのが気になるんだよ。
襲撃のために宿の従業員を引き入れたり、侵入のために高価な魔道具を与えているのに、実行犯がアレだったから」
「そういえば、侵入自体はスムーズにやられてしまっているんですね」
「そうなんだよ。
だから、今回の件は警告なのかとも思ったけれど、それも微妙な気がしてね。
警告や嫌がらせにしては妙に力が入っているし、もしかしたら、何か気づいていない目的があるのかもしれないね」
気づいていない目的か……。
確かに、ただの嫌がらせと考えるよりはそちらの方が自然なのかもしれない。
だって、今回の襲撃が嫌がらせだとしたら、どれだけ陰険なのかという感じだし。
「とりあえず、詳しいことは明日にして今日はそろそろ休もう。
すぐに眠れるかわからないけれど、君も今日はゆっくり休むといいよ」
そう言って、レオン様が立ち上がって去っていく。
レオン様の部屋が現場ということで私の部屋で話し合いをしていたけど、この後どこで休むつもりなんだろう?
ぼんやりとそんなことを考えつつ、レオン様の言葉に従い、私もベッドへと向かうことにした。




