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魔力なし公爵様に嫁いだら  作者: はぐれうさぎ


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第22話 初めての自作魔道具

 レオン様の魔力を隠蔽する魔道具を無事に用意することができたものの、これまで通り、無理せず、慎重に様子を見ながら治療を進めていくという方針が変わることはなかった。

 なので、あの日以降もレオン様から二、三日に一度の頻度でポーション作りや魔道具作りという錬金術を教わるという日々を過ごしている。

 まあ、ポーション作りに関しては下級ポーションが作れるようになったので、ほとんど魔道具作りばかり教わっている感じだけど。



「今日は何を教えていただけけるのですか?」


 いつも通りに軽く魔力の調子を確認した後、レオン様に質問する。

 前回でミスリルの成形についてはある程度できるようになったので、今日は次の段階に進むという話だったはずだ。


「前回でミスリルの成形はできるようになったから、今日は魔法陣を刻む練習をしようか。

 これができるようになれば、簡易的な魔道具なら作れるようになるからね」


「魔法陣ですか。

 レオン様が魔道具を作られたときは、何やら複雑なものを刻まれていた気がしますが」


「ハハハ、あの時の魔法陣でもかなり簡単なものなんだけれどね。

 まあ、今日試してもらうのは、あれよりもさらに簡単なものだから大丈夫だよ。

 じゃあ、まずは前回のおさらいも兼ねて、このミスリルで正方形の板を作ってもらおうかな」


 そう言って、レオン様が作業台に用意していたミスリルの塊を手渡してくる。

 小ぶりな石ころ程度の大きさだけど、板状に成形すれば魔法陣を描くための面積がそれなりに確保できそうだ。

 そんなことを考え、設置されたままになっている錬金台を使ってミスリルの成形に取り掛かっていった。



「できました!」


 前回の感覚を思い出すようにミスリルを成形していき、どうにか正方形と呼べる形にできたところで声を上げる。


「うん、いい感じだね。

 これなら、もうミスリルの成形については問題なさそうかな」


 隣で資料を確認しつつ見守ってくれていたレオン様もそう言ってくれているし、もしかしたらこういう作業に向いていたのかもしれない。

 そんなことを思っていると、レオン様が魔法陣が描かれた資料を作業台の上に広げる。


「じゃあ、本番の魔法陣を試してみようか」


 その言葉に広げられた資料を確認するものの、何やらそこに描かれている魔法陣がおかしい。

 いや、おかしいというか簡単すぎるというか。

 資料にはいくつもの魔法陣が描かれているのだけど、そのどれもが簡単な文字や記号の組み合わせでできたものでしかない。


「……これですか?」


「そうだよ?

 簡単そうに見えるだろうけれど、まあ、まずは試してみてよ」


 手本となる魔法陣に疑問を感じたものの、レオン様にそう言われてしまっては仕方ない。

 魔法陣を刻むための道具を受け取り、さっそくミスリルのプレートに魔法陣を刻む作業に取り掛かる。


「その道具に魔力を流すことでミスリルに魔法陣を刻むことができるからね。

 それから、刻む魔法陣はどれでも構わないけれど、後で試すことを考えると光球のものが無難だと思うよ」


 レオン様の言葉を受け、改めて手本となる資料へと目を向ける。

 いくつもある魔法陣には簡単な説明が書かれていて、どうやら火を点すものや水を出すものなどがあるみたいだ。

 そうして、その中から光球の魔法陣を探し、光を点すという説明が書かれた魔法陣を見つけた。


「“光を点す”という魔法陣ですね。

 では、やってみます」


 そう宣言し、再び錬金台に向き合って作業に取り掛かり始めた。



「できました?」


 手本となるものを参考にミスリルのプレートに魔法陣を刻み終え、自信なくレオン様へと伝える。

 正直、手本となる魔法陣を見たときには簡単だと思っていた。

 なのに、実際にミスリルに刻もうとすると、簡単な文字や記号ですら安定して刻むことができていない。

 結果、目の前にはガタガタで不格好な魔法陣が刻まれたプレートができあがってしまっている。


「なら、せっかくだから実際に起動してみようか」


 私が刻んだ魔法陣を簡単に確認したレオン様が何やら楽し気に言ってくる。

 その様子にからかわれている感覚を覚えつつ、諦めて自分が刻んだ魔法陣へと手を触れて魔力を流す。

 すると、今にも消えてしまいそうな、ぼんやりとした不安定な光球が浮かび上がった。


「……成功、ですか?」


「不安定だけれど、光球を出すことはできているね。

 ちなみに、僕が刻んだものはこんな感じだよ」


 そう言うと、いつの間に用意したのか、レオン様が手本となる魔法陣を刻んだというプレートを隣に置く。

 で、レオン様がそのまま魔法陣に魔力を流すと、普段の明かりの魔道具などでよく見る安定した光球が浮かび上がってきた。


「……全然違いますね」


 浮かんでいる二つの光球はもちろん、プレートに刻まれた魔法陣もかなり違う。

 私が刻んだものはガタガタなのに、レオン様が刻んだものは手本のものと同じようにきれいなものだ。


「魔法陣を刻むのも慣れによるところが大きいからね。

 君の場合、刻んだ魔法陣のラインの幅や深さがバラバラになってしまっているのが、不安定になってしまった一番の原因かな。

 魔法陣に流す魔力は一定になるようにしないと効果が安定しないから」


 そう言われて魔法陣を確認してみるものの、どこもかしこもガタガタになっているせいでどこが悪いのかすらわからない。


「簡単な魔法陣だと思ったのに、難しいんですね……」


「さっきも言ったように、結局は慣れだよ。

 初めてできちんと光球が出るようにはできているから、特にセンスが悪いわけでもないだろうしね。

 まあ、時間はあるから、ゆっくり慣れていけばいいよ」


 レオン様にそんな励ましの言葉をもらい、この日の作業を終えた。


 ちなみに、初めての自作魔道具となったプレートは、レオン様が固定化の魔法陣を刻んだうえで記念にと手渡してくれた。

 これが懐かしく思えるくらいに魔道具作りが上達してくれるといいのだけどね。


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