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僕の送別会の後で

 送別会は意外と壮大だった。某有名ホテルの宴会場を使って、横看板まで作ってもらって、食事も結婚式の時の料理のように豪華だった。こんなに豪華にしてもらって、なんだか申し訳なかった。

 今日は僕、守森 岬の送別会。高校時代の懐かしい仲間が5年ぶりに集まった。僕は来週の月曜日から勤め先の会社の転勤で、北海道から九州に行くことになった。これではもう当分会えないだろうと、友人の富田秋が旧友たちを集めてくれたのだ。

「頑張れよ、ミサキ!」

 クラスの会長だったダイスケがビールを注いでくれた。

「おう!」

 ダイスケのグラスにもビールを注ぎ、乾杯する。もうみんな出来上がってきたようで、顔を真っ赤にして昔話や、今日来ることができなかったクラスメイト達の話に花を咲かせていた。

「んじゃ、こいつの健闘を祈ろうではないか!」

 アキがマイクで呼びかける。旧友のグラスが一斉に挙げられた。




 送別会の帰り、僕はタクシーに乗ってアパートへ帰った。最後にダイスケが代表でお守りを渡してくれたときには目に少し涙が浮かんだ。

「1560円になります」

 運転手に1600円をわたし、40円のおつりを受け取り、外に出た。時刻はもう2時を回っていた。この時間の風は冷たくて、酔いを醒ましてくれる。気持ちのいい風だ。

 

 築40年のぼろアパートのきしむ鉄階段を上り、部屋に入った。

 テレビをつけ、部屋着に着替えた。

「・・・ミサキ」

 ハッと、いすから立ち上がった。今、誰かの声が聞こえた。聞き間違いではない。僕の名前を呼んだ。

「・・・ミサキ。迎えに来た」

 後ろを振り向く。冷蔵庫の前に中学生くらいの女の子がたっていた。

「誰?」

 見覚えがない女の子だった。というより、この少女は普通の中学生じゃないのは見てとれる。髪は夕焼けのように赤く、瞳は黄色だった。身につけている服もテレビか映画で見る様な、どこかの民族衣装のような服だ。

「ミサキ、私と一緒にこい。お前が必要」

「何だって?」

 聞き返すと少女は一歩踏み出す。

「いいから、こいっ!」

 少女の長い髪がふわり、と宙に舞ったかと思うと僕の目の前まで来ていた。

「いつの間に!?」

 後ずさる前に、少女は僕の手首をつかんだ。

「―――脱出!」



 少女がそう叫んだところで僕の記憶は言ったん途切れた。


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