こまったリスくん
逆さ虹の日に向けて、準備をする。リスくんアライグマさんキツネさんのお話
ここは、逆さ虹の森です。
遠い昔、寒い寒い冬の日のことです。森に逆さまな虹が架かりました。それ以来、冬の1番寒い日になると逆さまの虹が架かります。
今年も寒い冬がやってきました。森の動物たちは、逆さ虹をお祝いするパーティの準備で大忙しです。
ネッコ広場では、キツネさんとアライグマさんとリスくんが、パーティ会場の準備を進めています。ネッコ広場は森で1番大きな木を中心にした広場です。大きな木や周りの木の根っこが所々で飛び出して、絡まっているためネッコ広場と呼ばれています。
ネッコ広場は、空が広く見えるので逆さ虹がよく見えます。だから、逆さ虹が架かる季節になると森の動物たちはネッコ広場をきれいに飾ってパーティをするのです。
キツネさんは、ネッコ広場を飾るために森で集めたいろいろなものを使って飾りを作っています。キツネさんの隣では、リスくんが一緒に飾りを作ります。
でも、リスくんは飽きっぽくて、少し作業をしてはすぐにやめてしまいます。そのたびにキツネさんが注意をしています。
「ほらほら、リスくん。手が止まっていますよ」
キツネさんに注意をされると、飾りを作りはじめるリスくんですが、ひとつ、ふたつ、みっつ、と飾りを作るとまた、やめてしまいました。リスくんは、じっと座って同じ作業を続けるのが苦手みたいです。
「リスくん、楽しいパーティのためですよ。がんばって」
キツネさんは、ひとりで飾りを作るのは大変なのでリスくんを注意します。
また、リスくんは飾りを作ります。それでもやっぱり、ひとつ、ふたつと飾りを作るとリスくんは、飽きてしまうようです。
このままでは、リスくんを注意するばかりでキツネさんがパーティのための飾りを作ることができません。
「リスくん、こっちはもう大丈夫です。アライグマさんを手伝ってください」
キツネさんがリスくんに言います。じっと座っていられなかったリスくんは、よろこんでアライグマさんの手伝いに行きます。
アライグマさんは逆さ虹をお祝いするパーティのためにネッコ広場の掃除をしています。ネッコ広場をきれいにして、さわやかな気持ちで逆さ虹を迎えるのです。
それだけではありません。逆さ虹が架かるのは冬の1番寒い日です。森の動物たちが寒さでこごえないように集めた落ち葉でたき火をするのです。
「アライグマさん、何か手伝うことはない?」
リスくんは掃除をしているアライグマさんに尋ねます。
「根っこの絡まった場所がきれいにできなくて困ってたんだ。頼めるかな」
アライグマさんは、リスくんにホウキを渡して言いました。ホウキを受け取ったリスくんは木の根っこが絡まった場所に向かいます。小さい体を生かして、根っこの間を掃除するリスくんですが、根っこの間から掃き出したほこりや落ち葉で広場を散らかしてしまいます。
ひとつの場所をきれいにしても、別の場所を散らかしては掃除の意味がありません。
「リスくん、ダメじゃないか。これでは、根っこの間はきれいになっても広場が散らかってしまうぞ」
アライグマさんがリスくんを怒ります。リスくんは、きれいに掃除をしているつもりなのに怒られたから面白くありません。
「手伝ってあげてるのになんだよ」
リスくんは、ふてくされて掃除をやめてしまいました。リスくんが根っこの間から掃き出したほこりや落ち葉をアライグマさんが片付けます。それを見たリスくんは、アライグマさんを困らせたいと思いました。
アライグマさんは、落ち葉を集めてたき火のために山を作っています。落ち葉の山を崩すとアライグマさんが困るだろうと考えたリスくんは、落ち葉の山に向かってホウキを振り回しました。
すると、落ち葉の山が崩れます。それと一緒に落ち葉の山を支えるための木の骨組みが大きな音を立てて崩れ、リスくんは下敷きになってしまいました。
「何か大きな音がしませんでしたか」
キツネさんが飾りを作る作業を止めてアライグマさんに聞きます。アライグマさんは掃除の手を止めます。
「おい、リスくん。今何かしたのか」
アライグマさんは、近くにいたはずのリスくんに話しかけますが、リスくんはいません。
アライグマさんとキツネさんは慌ててリスくんを探します。リスくんを探し始めてすぐに、落ち葉の山が崩れていることに気が付きました。
「たすけて」
と、リスくんの声が聞こえます。とっても苦しそうな声でした。崩れた落ち葉からリスくんの声がします。
「待っていろ。いま助けるから」
アライグマさんがリスくんに声を掛けます。キツネさんとアライグマさんは、協力をして落ち葉をよけます。落ち葉を全部どかすと大きな木の下敷きになったリスくんがいました。
「もう少しです。リスくん、頑張って」
キツネくんが声を掛けました。アライグマさんとキツネさんは、力を合わせて大きな木を持ち上げます。
大きな木が持ち上がると、リスくんは木の下から飛び出しました。リスくんが木の下から出るとアライグマさんとキツネさんは、木を下しました。
「ケガはないですか」
キツネさんが、リスくんにケガがないか確かめます。大きな木の下敷きになったリスくんですが、運が良かったのかケガはありませんでした。
アライグマさんが、ほっと息を吐きます。リスくんにケガがなくて安心したのです。
「ごめんなさい」
リスくんがアライグマさんとキツネさんに謝ります。いつも、元気いっぱいのリスくんがしょんぼりしています。よっぽど怖かったのでしょう。
「無事でよかった。逆さ虹のお祝いは、明日だ。準備の続きをしよう」
アライグマさんが言いました。アライグマさんとリスくんとキツネさんは逆さ虹のお祝いの準備を始めました。アライグマさんが、落ち葉の山を直し、キツネさんがネッコ広場の掃除をして、リスくんはネッコ広場を飾り付けました。
明日は、いよいよ逆さ虹が架かります。無事に逆さ虹を見ることができるといいですね。




