第4話 ナカマさん
「はい、はい……ええ、こちらは大丈夫です。お店はしっかりと、営業できておりますよ」
開店前の純喫茶『ナカマ』にて、女性店長ナカマが、アンティークな意匠の受話器越しに誰かと話している。
何やら長話されているのか、沈着な態度と美貌が評判の店主にしては珍しく、少しばかり憮然とした表情で対応していた。
「ええ、ええ、ですから、ちゃんとやっておりますとも。引き継いだお店は、それはもう、しっかりと。もう……心配症なのですから、マスターは」
呆れながらも、これまた珍しく砕けた語調で、気安い雰囲気ではある。
それでも純喫茶『ナカマ』の店長たるナカマは、表情と気を引き締め、凛然とした口調で言った。
「もちろん、わたくしナカマは……中間にある者として、公正に。
こちらとあちらを、日常と不思議を繋ぐ者として、平等に。
純喫茶『ナカマ』の店長として、誠心誠意、お客さまに奉仕いたします。
どうか前任者であるマスターも、あまり気になさらないように。
それでは、もうすぐ営業時間ですので、失礼いたします……ええ、また」
がちゃん、と音を立てて受話器を置くのも、ナカマにしては珍しい。
「まったく、もう」とぼやきつつ、どことなく表情が緩んでいるのは、きっと気のせいだ。
……さて。
電話線もコンセントも繋がっていない、回転ダイヤル式のレトロな電話に背を向けて。
今日も今日とて、純喫茶『ナカマ』は開店する。
悩み多き世の中で、うなだれたお客さまが訪れるたび。
不思議な女性店長ナカマは、こう尋ねるのだ。
「おもひで、温めますか?」
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