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不思議おもひで純喫茶『ナカマ』  作者: 初美陽一


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第4話 ナカマさん

「はい、はい……ええ、こ(・)ち(・)ら(・)は大丈夫です。お店はしっかりと、営業できておりますよ」


 開店前の純喫茶『ナカマ』にて、女性店長ナカマが、アンティークな意匠の受話器越しに誰かと話している。

 何やら長話されているのか、沈着な態度と美貌が評判の店主にしては珍しく、少しばかり憮然とした表情で対応していた。


「ええ、ええ、ですから、ちゃんとやっておりますとも。引き継いだお店は、それはもう、しっかりと。もう……心配症なのですから、マスターは」


 呆れながらも、これまた珍しく砕けた語調で、気安い雰囲気ではある。

 それでも純喫茶『ナカマ』の店長たるナカマは、表情と気を引き締め、凛然とした口調で言った。



「もちろん、わたくしナカマは……中(・)間(・)にある者として、公正に。

 こ(・)ち(・)ら(・)とあ(・)ち(・)ら(・)を、日(・)常(・)と不(・)思(・)議(・)を繋ぐ者として、平等に。

 純喫茶『ナカマ』の店長として、誠心誠意、お客さまに奉仕いたします。

 どうか前任者であるマスターも、あまり気になさらないように。

 それでは、もうすぐ営業時間ですので、失礼いたします……ええ、また」



 がちゃん、と音を立てて受話器を置くのも、ナカマにしては珍しい。

「まったく、もう」とぼやきつつ、どことなく表情が緩んでいるのは、きっと気のせいだ。


 ……さて。

 電話線もコンセントも繋がっていない、回転ダイヤル式のレトロな電話に背を向けて。

 今日も今日とて、純喫茶『ナカマ』は開店する。


 悩み多き世の中で、うなだれたお客さまが訪れるたび。

 不思議な女性店長ナカマは、こう尋ねるのだ。



「おもひで、温めますか?」


現・最終話までお付き合い頂き、感謝感激です。

また再開した時のため、分かりやすいよう「ブックマーク」して頂けると嬉しいです。

【★★★★★】などで評価いただけると、更に光栄です……!

皆様の温かな応援が、作者の心にガソリンを注いでくれます。

いつも本当にありがとうございます~!

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