草原の新たなる敵
グレートサイクロプス。
それはサイクロプスが進化した上位種だ。
身長はおよそ2倍、腕や足はムキムキで体重は100倍ぐらい(そんなにはない)。
おまけにマッチョの癖に動きが素早かったりするとんでもない奴だ。
俺はソニアに問う。
「あの敵を倒せるか?」
「頑張ります」
頑張りますってなんだよ?
もしかしてオーガのソニアでも倒せない敵なのか?
そんなことは無いだろと思ったんだけど……。
ソニアの渾身の一撃でもグレートサイクロプスのあの分厚い筋肉に弾かれてしまう。
正面から切り込むと、あの巨体に似合わない素早さで斧を指で弾いて避けてしまう程だ。
さっき倒した普通のサイクロプスと比べると強い、強すぎる。
これは倒せる相手じゃない。
この場は逃げて、軍隊でも派遣して貰わんと倒せない敵だ。
俺はソニアに撤退の指示を出す。
「ソニア、逃げるぞ!」
「無理です」
「無理って、なんでだよ?」
「わたしが囮になってアルク様だけが逃げたとしても、わたしが倒されて10秒もせずにこの巨人が空から降って来てペチャンコに踏み潰されます」
なにそれ怖い。
そういえば森からここまでジャンプひとつで飛んで来たんだよな。
逃げられるわけが無いか。
でも、ソニアの斧を指で弾いて避ける様な奴だぞ。
こいつを倒す方法なんてあるのか?
「弱点は目なのでそこを叩き潰せばなんとか倒せるんですが、背が高過ぎて斧が届かないのです」
確かに俺が石を投げても届かない高さだ。
ましてやソニアの斧の攻撃なんて届くわけもない。
「目に攻撃するには足の弱点のアキレス腱を攻撃し続けて体勢を崩して膝を突かせるしかありません」
足が遅いソニアが巨人の攻撃を避け続けながらアキレス腱を攻撃し続けるのは厳しすぎる。
俺の人生はここでグレートサイクロプスに踏み潰されて終わりなんだろうか……?
今までゴブリンを狩ったことも、ホーンラビットを狩ったことも全て無駄になるのか?
ソニアと出会ってやっと運が上向いて来たと思ったんだけどなぁ。
まあ、俺の人生なんて天職にチカン師を引いた時点で終わってたもんな。
はあ~。
俺の人生ついてなかったな。
ん?
待てよ?
チカンとホーンラビットとソニア……!?
その時、俺は閃いた。
このグレートサイクロプスを簡単に倒す方法を。
*
アルク様はわたしに指示をだした。
「いい考えが思い浮かんだから、そのサイクロプスを馬車迄連れて来てくれ」
「馬車にですか?」
わたしは倒せるわけがないと思いつつもアルク様に従うことにした。
倒せないと思うのはあくまでもわたしがサイクロプスと対峙した場合で、アルク様はわたしでは思い浮かばないような素晴らしい名案を思い付いたはずだ。
アルク様を信じよう。
なんどもギリギリのところで踏み潰し攻撃を避けつつ馬車の元へとグレートサイクロプスを誘導した。
馬車の生存者を囮にでもするんだろうか?
でも、そんなことをしても注意を惹けるのは数秒だけですぐに元に戻る。
アルク様が思いついたのはそんなショボいことじゃなかった。
その時アルク様はなにかを右手で掲げ上げて叫んだ!
「俺はグレートサイクロプスを置換する!」
そう、アルク様はチカンスキルを使ったのだ。
右手で掲げ上げた馬の首から抉り出した馬の目とサイクロプスの目を……。
その掛け声とともにサイクロプスの顔面が輝き出し、サイクロプスはうずくまった。
そして叫ぶサイクロプス。
「ウォォォォォ!」
わたしの折れた角を置換した時と全く一緒だ。
あの時は激痛が奔り全く身動きが取れずうずくまってしまったが、あの時とグレートサイクロプスが見せる症状は瓜二つ。
アルク様はこれを狙ってたんですね。
素晴らしいです!
アルク様が叫んだ!
「いまだ、ソニア!」
その指示だけでわたしはなにをすればいいのかを悟った。
わたしは身動きの取れなくなったグレートサイクロプスの目玉を斧で打ち砕く。
目玉は置換によって馬の目玉と変わっていたので全く手ごたえは無かった。
サイクロプスは目玉の位置から横一文字に頭部が分断され、地面へと倒れ込んだ。
あの巨大なグレートサイクロプスを貧弱な角のわたしが倒せたのだ!
アルク様から発せられる歓喜の言葉。
「やったな!」
「やりました!」
こうしてわたしとアルク様はAランクパーティーでも倒すのが難しいとされるグレートサイクロプスをたった二人で倒したのだった。




