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エピローグ

 裁判を終え、俺たちの何事にも脅かされない日常が戻って来た。


 俺たちはレストランで慰労会を兼ねた食事会をする。


 ちょっと高級なレストランなのでだだっ広いフロアに客は俺たちしか居ない。


 参加者は俺とソニア、アイラ、ライム、そしてレイカのいつものメンバーだ。


 ミントも誘ったけど、ボールドがサビア落ちしたのでサビア屋が廃業するらしくサビアの今後の行き先を探すので大忙しで飯なんて食ってる暇がないとのこと。


 ジャックスも誘ったんだけど、フォレスタリアに派遣した冒険者団が壊滅したことで、その後始末で宴会なんてしてる暇は無いと断られた。


 ライムによると、冒険者団の壊滅の責任を取らされるらしくギルド長の立場から冒険者にまで降格するんじゃないかとのことだ。


 俺は気になっていたことをレイカに聞く。


「レイカは最初からボールドに操られて無かったんだよな?」


「もちろんです」


「それならば、もっと早い段階でボールドの工作だと証言すれば裁判がもっと早く終わったんじゃないのか?」


「最初にミントと考えた作戦だとそんな感じだったんですけどね。冒険者ギルド長が『サビアのバングル』を持ちだして来たので、これは面白そうとアドリブで裁判長を軽い魅了に掛けたりしてボールドに一泡吹かせてやろうと作戦を組み直しました」


「と言うことは、俺たちが余計なことをしなければ、もっとあっさりと裁判が終わったってことなのか?」


 レイカはほほ笑むだけでなにも答えてくれない。


 食事後、俺は皆の労を労う。


「みんな疲れただろうから、今日は個室を取るからしっかりと眠って英気を養ってくれ」


「本当ですか?」


「ありがとうございます」


「やっとですね」


 それを聞いた皆はテンションマックスで大喜びだ。


 ここまで喜んでくれるなら、これからは毎日個室を取ってもいいかもしれない。


 *


 俺が宿屋の部屋で寝ていると誰かが足音を忍ばせて侵入してきた。


 レイカだ。


「今日は個室と聞いたので、ご主人様が夜這いに来るのを今か今かとずっと待っていたのに、大いびきを掻いて爆睡してるじゃないですか! これは一体どういうことなんですか! わたしのドキドキタイムを返して下さい!」


 レイカは文句を言いつつ俺の毛布の中に潜り込んで来る。


 間髪開けず、ソニアがドアを開け放った。


「アルク様が夜這いに来ないので、わたしの方から夜這いに来ました!」


 そういってベッドにダイブするソニア。


 カエルが馬車に踏み潰されるような嫌な声がしたので毛布を捲ってみると、レイカが踏み潰されたカエルみたいに泡を吐いて伸びていた。


 また来訪者だ。


「アルク……来た」


 アイラっだった。


 アイラが来たとき、ベッドの上ではソニアによる人工呼吸でレイカの蘇生作業中だったのでそれを見たアイラは呆然としている。


「アイラの聞いていたのと全然違う……ハード過ぎる」


 そして最後に現れたのはライムだった。


「久しぶりに子どもの頃みたいに一緒に添い寝しよう」


 枕を抱きかかえて現れたライムはその惨状を見て、枕を廊下に落としていた。


 もうめちゃくちゃだ。


 *


 俺たちの穏やかな日常はこうして戻って来た。


 と、思ったんだが……。


 翌朝からドエライことが起きた。


「最近腰が痛くて……歩けんのじゃ」


「はいはい。置換」


「おー、腰が治ったのじゃ!」


 裁判で俺がボールドを置換スキル治療したことが町中に知れ渡り、ぼったくり医師しか居なかったタウンシアの町で庶民でも治療できる格安で腕のいい診療所として大繁盛していた。


 俺の仲間たちは看護婦や事務をして患者を捌いている。


「次の方」


「最近、目が遠くて文字が読めなくての……」


「はいはい。置換」


「おおお! 若い頃みたいにハッキリと見えるのじゃ」


 そこへ、大騒ぎで担架で運ばれて来る者が……。


「どけどけどけ! 急患だ!」


「どうされました」


「ワイルド・ベアに腕を食いちぎられた。俺の大事な仲間なんだ、治してくれるよな!」


「はいはい。置換」


「ここは?」


「おおお! 治った! 先生ありがとう!」


 俺の開いた診療所の前には常に行列が出来て大繁盛。


 あまりにも患者が多くて休む暇がない。


 冒険者じゃなくなったけど、まあいいか。


 忙しい中、昼飯を買いに行く途中子連れの主婦とすれ違った。


 どこかで見た記憶があると記憶を漁ると、どうやら俺が天職の儀が終わった直後に会った親子っぽい。


 向こうは俺のことなんて覚えちゃいない。


「マリちゃん、あのお医者さんのお兄ちゃんをよく見なさい。あのお兄ちゃんみたいに立派な人になるんですよ」


「うん、わかった」


 こうして波乱万丈な俺の置換師人生は続いていく。

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