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天職の儀でレア天職を引いたら人生が詰んだ

新作です。よろしくお願いします。

 天職の儀。


 16歳で成人となったこの日、俺はこの儀式で天職を得て今後の人生の筋道が決まる。


 この儀式でより良い天職を得る為に子どもの頃から厳しい鍛錬を繰り返して来たんだ。


 幼馴染のミントが俺の服の袖を掴む。


「ねぇ、アルク。この天職の儀が終わったらプロポーズしてくれるのよね?」


「天職を得てちゃんと就職出来たらな」


「じゃあ、騎士とかの上級の天職を貰わないとね」


「心配するな」


 なんの為に厳しい修行を5歳の頃からしてきたと思ってるんだ。


 お前の将来は俺に任せろ!


 俺はそう思いながら順番が回ってきたミントの儀式の結果を聞く。


 魔法で現れた魔道書を神官が見つめる。


「天職は計算士」


 ミントの引き当てた天職はティア(コモン)の計算士だった。


 お金勘定の速度が上がり、ミスも減る事務員向きの一般人職だ。


 あからさまにガックリと肩を落とすミント。


 背中をポンと叩き慰める。


「お前の面倒は俺が見てやるから心配すんな」


「ありがとう」


 ミントの表情が気持ち明るくなった。


 そして俺の順番が来る。


 現れた魔道書が7色に光り出す。


 これは、Sランク以上の天職の確定演出!


 これは、剣聖か? 賢者か?


 だが、神官たちは動揺しまくりだ。


 これは天職に英雄でも出たんじゃないのか?


 魔道書と辞書を何度も見返す神官長と神官たち。


「これは何という天職だ?」


「初めての天職で全く読めないですね」


 俺も魔道書を覗き込むが何が書いてあるのかサッパリわからない。


「これは本庁に問い合わせないとダメですね」


「辛うじて読める文字が有るぞ!」


「チ・カ・ン チカンですね」


「ぬあ!」


 なんだよ、そりゃ。


 俺は思いっきりズッコケる。


 隣のミントもズッコケた。


 そして神官長が声高に宣言する。


「お主の天職はチカン師だ!」


 それを聞いた儀式の参加者からどっと笑いが起こった。


「あいつ痴漢師だってよ」


 ミントはドン引きだ。


「チカンだって……いくらモテないから痴漢になるなんて、きもっ!」


「ちょい待てミント、俺とお前は結婚するんだったんじゃないのか?」


「知らないわよ、そんなこと!」


 いくらカスな天職を引いたからっていきなり婚約破棄かよ!


 俺は泣いた。


 泣きながら神殿を飛び出た。


「ちくしょー!」


 こんなカスな天職を引くために子どもの頃から日が暮れるまで鍛錬してたんじゃねーよ!


 俺は天職の神殿から逃げ帰り、三日三晩布団の中で泣きぬれた。


 もう騎士や賢者の夢は捨てて、村人Aとして生きよう。


 そう思ったんだけど、世間は世知(せち)(がら)い。


 世界初のチカン師誕生とあっては噂が爆速で町に伝わる。


 今まで挨拶したことも無い子連れの主婦にまで白い目で見られる。


「マリちゃん、あのお兄ちゃんを見ちゃいけません。眼が腐りますよ」


「うん、わかった」


 ちくしょー!


 なんで俺はこんな目に遭わないといけないんだよ!


 俺はしかたなしに夢を諦め就職しようとするがどこも雇ってくれねぇ。


「うちは女の人のお客さんもいるので、問題起こしそうな人はちょっと……」


「前科者は雇ってねーよ!」


 まだなんにも起こしてないから!


 起こす気もねーから!


 どこも雇ってくれないので俺は誰でもなれると定評のある個人事業主の冒険者になった。


 でも、ここでも問題が……。


 誰もパーティーを組んでくれねぇ!


 悪評は千里を轟く。


 これはサビア屋で仲間を買って一人パーティーをするしかねぇな。


 ちなみに『サビア』とは犯罪を犯したり、借金を抱えたり、戦争で負けたりして人権を失った無料で使えるお手伝いさんみたいな者だ。


 俺はサビアを買うべく、パーティーを組まないでも出来そうなドブさらいとか、薬草採りとかの依頼を黙々とこなしまくる。


 そして、苦節1年やっとサビアを買う金を貯めた。


 サビア屋に行くと受付の女がニタニタと笑っている。


「どうしたんですか? チカン師さん」


 幼馴染のミントだった。


 ミントは意地わるそうな顔で続ける。


「モテなさ過ぎて夜のご相手でもご所望ですか?」


「ちげーよ!」


 俺は他の客がいるのも気にせず憤慨した。


「パーティーの戦力になるサビアが欲しいんだよ」


「またまた見栄を張って……ぷーくすくす」


「本当だからっ! 誰も俺とパーティーを組んでくれないんだよ!」


「あらら」


 思いっきり同情した目で見られた。


「でも、その予算だとパーティーメンバーに出来る様な戦闘系サビアは買えないよ」


「マジか?」


「どうしてもその予算でサビアが欲しいというのならば、買えるのはこの(つの)の折れたオーガの娘ぐらいよ」


 オーガと言えば赤色の肌の戦闘種族中の戦闘種族。


 女であっても普通の冒険者よりも強いはずだ。


 それに身体も結構大きい。


 これは強いに間違いない。


 角が折れてるけど、帽子でも被せておけば他の奴らからジロジロみられることも無い。


 俺は即決でオーガ娘を買うことにした。


「そのオーガ娘、買った!」


「角が折れてるけど、本当にいいの?」


「構わない」


「そういう目的ね……。手垢を付けたら返品は受け付けないよ」


 手垢って……そういう目的じゃねーよ。


「しねーから、そんなこと」


 俺は念願のパーティーメンバーを手に入れて、ほくほくしながら家に帰ったんだけどオーガっ娘はいきなり服を脱ごうとするので止めた。


「俺はそういう目的でお前を買ったんじゃない。俺と一緒にパーティーを組んで戦って欲しいんだ」


「え?」


 オーガっ娘はキョトン顔をする。


 そしてとんでもない事を言い出した。


「わたしは戦闘なんて出来ませんよ」


「なんだと?」


「本当です。元々は戦士だったんですが、角が折れているから全く力が出せないんです」


 それで安かったのかよ……。


 ミントに騙された……ってミントも角が折れたことを言ってたよな。


 俺の勇み足かよ……。


 俺の一年の汗と涙と努力の結晶は戦闘で全く使えない角の折れたオーガ娘という負債に変えられた。

今日は書き貯めた分を何話か投稿したいです。

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