勇者エーターと仲間たち
森の中に少し開けた場所があり、ローザさんが聖属性の結界を張り、そこをベースキャンプとして討伐が始まった。
ピータさんが
「ドラゴンの劣等種。レッサードラゴンが5匹。あと森全体に、木々が魔物化した奴が散らばっている。コイツらがちょっと厄介だな。」
といつの間にか調べていたらしく、説明してくれた。
ローザさんとイチャイチャしているだけかと思ってたのに、流石は勇者パーティーの斥候役だわ。
昨晩のローザのドヤ顔が思い出される。
「ウチの旦那様はね。あー見えて、めっちゃ優秀なのよ。カッコいいでしょ。」
なんて言ってたっけ。
今も、なんか恋する少女の表情になってるし。
なんだかムカつくわねー。
とは言っても、アタシの好みではないわよ。もうちょっとだけ大きい方が良いかな。
どこがって?イヤ、体つきの話よ!アソコって思ったヒト、もぉヘンタイさんっ!
でもこんなんで戦えるのかしら。
緊張感のないまま、レッサードラゴンの群れと会敵して戦いが始まる。
レッサードラゴンをボスとした魔物の集団。ピータによると、この群れが5つあるらしい。
知能が低いとされる魔物が、群れを作り統率されているのには、理由がある。
そう、理由があるのよ。ウフフ。
統率されている魔物の群れは厄介で、王国が差し向けた騎士団を中心とした先遣隊を、軽く敗走させている。
とは言え、ここにいるのは流石は勇者とそのパーティーである。主力とも言える戦士バラックと賢者エリスを欠とはいえ、勇者エーターとその仲間たち。
…。強い。火力不足を懸念されてアタシが魔法使いとして、ついてきたのだけど、ほぼ出番がない。
勇者の強さは、言うまでもないのだけど。
ピータさんの万能っぷりは恐ろしいわ。「オレって器用貧乏なんだよな。」なんて自虐的に言うのだけど、違う。
剣を使っての攻撃も破壊力十分だし、盾役のバラックさんのいないこのパーティで、回避盾としてタンクの役割を十二分に担っている。
アタシの新魔王軍に、ぜひ欲しいものだけど…。
そしてローザさん。虫も殺せない聖女様って感じの美少女なのだけど。ほぼ前線で動き回って、回復と援護魔法を勇者と忍者にかけ続けている。前線で戦っている2人を邪馬する事なく、的確な動き。
前の魔王戦で、前線に出てしまった彼女が狙われたのは、確かな情報なのだけど。
後衛からの援護や回復だと、こうはいかない。どうしてもいくれてしまうもの…。
スゴイわ。この夫婦、味方になるとこれ程頼もしいなんて。でも、敵になるのよね。怖っ!
ほぼ全ての魔物が討たれたが、ダーリンの一撃で手負いのレッサードラゴンが、後衛で無防備なアタシを狙ってきた。
まだまだ属性魔法は不得意だけど、
「ウォーターボールっ!」
高密度の水魔法をぶつける。
ダメージはほとんど入らないけど、魔物の動きが止まった。
「よしっ。シドちゃん良くやった!」
勇者が、アタシを褒めてくれ、ドラゴンを真っ二つにした。
うわっ、怖っ。劣等種とは言え、ドラゴンを一撃とは…。
で、でもね。
返り血を浴びながら、手を差し伸ばしてくる勇者。
か、カッコいいわ。
惚れてまうやろがー。キュンだわ。きゅん。
「ありがとうございますっ。」
手を取り寄りかかろうとするけど、スンっと身体は躱される。手を取ったまま、支えながら。
っチッ。器用なやつぅ!
抱きつくチャンスだったのに〜。
ベースキャンプ中心に、数日間レッサードラゴンを狩ると、アタシたちは4つの群れを軽く片付けると最後の群れと会敵した。
…。もう少し、削れてると思ったんだけどね。
やっぱ強いやこの人たち…。




