魔族たち
「油断しないように。この群れちょっと変です。何かに操られているような。」
魔物の群れはを前にして、ピータが言う。
…。勘の良い子は嫌いよ。
ホント反省ね。ピータさんを甘く見すぎていたわ。
「わかった。が、まずは叩き潰すしかないだろ。ローザ、シドちゃん。援護頼む。」
勇者が、カッコよく指示する。
「そうね。わかった。」
ローザが返事する。アタシも
「はいっ。ガンバリます。」
少し赤らめた頬で答える。
シドちゃんは、恋する乙女。我ながら健気よね。
突然、頭の中に声がした。
ーシドさま。
念話。アタシたち影夜見族の特技よ。
ーあ、ダメよ。あんまり話すと、ピータさんやローザさんに感づかれる。簡単に要件だけね。
ピータさんは、ローザさんが言う通り優秀だからね。訳わかんないけど、感づかれる可能性ある。
ローザとは、以前アタシと魔道具使って念話していたし、気付かれるかもしれない。
隠遁を何重にも張り巡らし、会話を続ける。
魔力は使うが仕方ない。
ー準備はできております。
ーわかったわ。レッサードラゴンが斃されて、勇者たちが油断している時に、使いなさい。そして、すぐに逃げるのよ。
ーそれでは、シドさまが?
ーアタシは構わないわ。コレ元々借りもののカラダだし。ま、それ命に係わるモノでもなしいし。今は勇者の味方だし。
ーわかりました。
ーコレが終わったら、アタシも帰るわ。収穫はあったわよ。楽しみにしていて。
ー御意。
帰るというと心なしか、喜びの感情が伝わってくる。嫌われている族長じゃ無くて良かったわ。
収穫ってのは、エリスさんから習った属性魔法の数々。
コレで、影夜見族は魔界を完全に掌握できる。
でもね。この姿での生活、悪く無かったわ。
勇者の家で、エリスとダーリンのお世話をする日々。
エリスから魔法を教えてもらい、ダーリンからは、声をかけてくれたり、感謝言われたり。
…。楽しかったな。
このまま、メイドとして、あの家で生活できたら…。
幸せって、そんな感じなのかしら?
そしていつか、勇者の第二夫人になったりして。
キャっ、アタシったら…。夫人だなんて!!
「シドちゃん?どうかした?」
あ、いけない。戦闘中だったわ。
このパーティで後衛になのは、今はアタシだけなんだけど、ローザが下がってきて声をかけてくれた。
「あ、すみません。援護します。」
「うん。魔物たちの突進が強いから、土魔法で邪魔する感じで、お願い。」
「はいっ。わかりました。」
土魔法の中でも、ぬかるみを作る魔法で魔物を足止めする。
攻撃だけじゃないのよね。人族の属性魔法って、やっぱり便利ね。
動きの悪くなった魔物の群れに、勇者特有とされる身体強化の魔法をかけたダーリンが突撃して、魔物を屠っていく。
ピータの援護やローザの回復も的確で、戦闘は勇者パーティに有利に進んでいく。
そういえば勇者固有の魔法って、…魔族が使う魔法に似てるわよね。
ま、異世界人だから、この世界に人族とはちょっと違うのかもしれないわね。
無敵のはずの魔王に何故か効いてしまう武器を扱う。
空間魔法のような魔法も使う。
魔族が使うような身体強化魔法。
バラックさんでも扱えない武器。
エリスさんでも使えない勇者固有の魔法を使う。
ホント何なんでしょうね勇者って。
やっぱり勇者を何とかするまでは、アタシも魔王になれないわ。
今の勇者が、アタシのものになれば良いだけなのだけど。
なんて考えている内に、魔物達は全滅した。
最後の勇者の一撃!
あぁ、ステキ!
「やりましたね。」
ピータが言うとダーリンが、
「ああ、やったな。もう大丈夫かな」
「はい。コレで最後だと思います。」
それを聞いてローザも
「ふっ。お疲れだね。」
3人の気が緩むのがわかる。
バラックさんとエリスさんのいない勇者パーティ。
戦力的に落ちるのは、そうなのだけど。
この3人に、圧倒的に足りないものがある。
バラックさんとエリスさんは、魔王軍に負け続けた。
負けた経験が、彼らを更に強くした。
逆に、平和な世界で育った勇者
ただの町人や村娘だったピータとローザ。
この人達は、元々闘う人種じゃない。
敵を倒した後も油断をするなと言うのが、無理な話。
ツメが甘いのよダーリン。
そこに、一人の魔族が姿を現した。影夜見族特有の美しいお化粧をしたお兄さん。いや、オネエさんか。
アタシ一番の部下。影夜見族四天王のミドさんよ。
あたり一帯に甘い香りが漂い。
「ホホホっー。本当にツメの甘い方たちね。」
ミド、アタシにウインクするのやめなさい。バレるわよ!




