とあるTS魔族
本編が終わり1年後、ハッピーエンドのその後のお話。
次にTSしちゃうのは、勇者大好きのオネエ魔族よ。
魔王が斃されて1年が過ぎた。
世界は平和になり、人々は安全に生活が出来るようになり、幸福で溢れた世界が訪れたように見えた。
国王は、善政を敷き、魔王軍の侵略の無い農地は復活し始め、復興も順調に進んだ。
だけど、すべての人を救うわけにはいかない。
魔王軍との戦いで、伴侶を失い悲しみに暮れる人もいれば、魔族にトラウマを植え付けられ苦しんでいる人もいる。また、孤児院には孤児が溢れかえっていた。
ここに、とある貴族に引き取られて、虐待を受け、力尽きようとしている孤児の少女がいた。
少女の願いは、平穏な暮らしだった。貴族に引き取られて、それが叶うはずだった。
だけど、いま、小さな命が力尽きようとしている。
少女の尊厳を傷付け、さらに死なそうとしている貴族を少女は、許せなかった。
人の皮を被った悪魔!
心で叫ぶも、彼女にはどうすることもできない。
少女の命は、まさに尽きようとしていた。
「よばれて、とびでて、ジャジャジャジャーン」
少女の目の前に、男の首を手から下げた、お化粧の濃ゆいオネェな悪魔が現れた。
「あなたは…?」
「アタシ?アタシは、悪魔。…あなたの願いかなえてあげたわ!」
男の首は、貴族のものだった。顔も見たくないと思ってたけど、変わり果てたその顔を見て、感情が少し和らぐのを感じた。
「その首…。」
「そうよ。アナタの願いかなえてあげたわ。次は、アタシの願い聞いて貰うわね。」
少女は、返事する気力もなかったが、少し頷き、そのまま意識を手放した。
「あなたが、デルソローネ伯爵家の養女?」
「はい。シドと申します。」
目の前にいるのは、まだまだ目立たないけど、少し大きくなったお腹のエリスさん。
キレイな人。アタシもこのクラスの身体が欲しかったのだけど…。
「お産の経験があるそうね?後は何か出来るかしら?」
「はい。孤児院で何度も経験しました。そのまま、その赤ちゃんを置いていかれる方もいましたので、赤ちゃんのお世話もできます。」
魔王軍により、夫を無くして育てられない母親が、孤児院で出産して、そのまま、赤ちゃんを預けるケースがあった。
魔族は、子どもが、できにくい。それこそ大切に育てる。親がいなくても皆で育てる。
人間ってヒドイのよね。
魔族の仲間たちを容赦なくコロスし、裏切るし、嘘つくし…。
人間同士でも、このコみたいに、酷い目に合う…。
少しココロが、チクッとする気がした。
アタシもコロシは、まぁするけれども、裏切りもしちゃったけど、嘘はつかないものね。
魔族の方が、ずっとマシだわ。
「まぁ、良いわ。採用します。住み込み希望なら、今日から移ってもらっても良いわ。」
「はい。ありがとうございます。」
エリスが部屋へ案内してくれた。
途中で、男の人に会った。大きくて、優しそうで、強そうで、カッコいい。勇者エーターだ。
「あ、エイタ。紹介するわ。こちら、今日からメイドになってくれる。シドちゃんよ。」
「シドと申します。よろしくお願いいたします。」
勇者エーターは、興味なさげにこっちを見て
「あぁ、よろしく。」
と言って去っていった。
「アレが、旦那のエイタよ。素っ気なくてゴメンね。」
「いいえ。大丈夫です。」
ええ、大丈夫よ。でも、この胸の鼓動が収まらない。
これ、コントロールできないのね。さっき感じた痛みもそうだけど、人ってやつは、ままならないものね。
まぁ、魔族の時もダーリン見たらドキドキ止まらなかったから同じか…。




