「ゆうパン」エンディング。
「ゆうパン」のエンディングは、勇者が、魔王を斃して、パンツを見せてもらう寸前まで。
召喚された勇者が元の世界に帰ったとか、賢者と結婚したとか、そこまでの話は書いていない。
「約束だからしょうがないよね。」
賢者が、恥ずかしながらスカートの裾に手を当てて
「バカぁ」
とエリスが言って、完結する物語。
だからここからは、シナリオにない物語。
実際の話になる。これは現実だから。
間もなく、エイタとエリス、バラックとアーシャさんが結婚した。
バラックは、ノースバルフ平原の砦を城にして、新しい国を建国した。俺の国だから、魔族を王妃にするのも自由だ。って言ってね。
凄いなぁ、愛の力だよ。
バラックを慕う王国の精鋭達もついていき、軍事力も充実し、王国からすると魔族領を睨む緩衝地とする事ができた。
エリスとエイタは、王都に居を構えて幸せに暮らし始めた。暫くして、エリスが妊娠したと聞き、祝福に行った。
初孫になるのかな。つわりがキツイとか、エイタに対してのグチというか惚気というか、聞かされたな。
エイタは、まぁ、幸せそうではあるけれど、王都の暮らしちょっと窮屈なのかな。って感じがした。
まぁ、勇者よ。結婚生活なんてそんなもんだよ。
俺も経験あるからね。
私は、一度修道院に戻った。
ミリアちゃんには、泣いて喜ばれたよ。
で、ちゃんと、私にも好きな人ができたことも話した。
「結婚式には呼んでくださいまし。」
と言われた。ん?結婚ってそんな、えっ?わたし結婚、するの。
いやっ、しないよね。
あれさ、あれ。吊り橋効果とか、ゲレンデ症候群とかいうやつだよ。
ま、今でも全然、愛してるけどさ。
約束どおり聖女の服を、ミリアちゃんに返した。
「でも、これは私のだから。」
と言って聖玉は、抜き取らせてもらった。これは、ピータから貰ったやつだし、思い出の品。あげられないよね。
「お返しに、こちらをどうぞ。」
ミリアちゃんが、何かを差し出してきた。
「これって…。」
「わたくしが縫いました。お姉様が帰ってくる日を願って。」
真っ白なドレス。こちらの世界でも花嫁は、真っ白なドレスを着るらしい。
アーシャさんもエリスも凄くキレイで、羨ましいなって…。っと、羨ましい?…思ってないって。
「まぁ、ローザさん。その聖女の服をここに返しに来て、そのドレスを受け取ったということは?」
聖女が引退するのは…。誰かと結ばれる場合が多いって?
院長先生。あぁ、勘違いしないで。
そう言えば、二組の結婚式以来、会えていないな。
誰とって?
そりゃ。ねぇ。私がこんなドレス着るんなら、相手は1人だよね。
母親には、もう会いに行ったのかな。
元気にしているとは思うんだけど、私が治療したんだし気になる。行ってみるか。
ピータの家に行ってみる事にした。
…ちょっと二の足を踏むなぁ。ピータの母親は、私が治したんだから、私の患者な訳だし、アフターフォロー必要だよね。
ドアをノックしようとすると、話し声が聞こえる。
手が止まる。話の邪魔したら悪いかな。
「だからさ。結婚する人は決まっているんだって。」
あ、ピータの声、聞こえちゃうな。でも、話の内容って?
「でもさ。聖女様が、アンタなんかの嫁に来てくれるはずないだろ!」
「だからって、見合いしろだなんて。絶対嫌だからな。」
「聖女様は、私の病気を治してくれて、感謝してもしきれないのよ。その上お前の嫁になんて。身分違いで、畏れ多くて…。」
あ、お母様。その身分違いってのは、大丈夫ですよ。私も、孤児院出身で、今やピータは王国の英雄だし。
息子さん、嫁なら選び放題ですよ。
バタっ
扉が空いてしまった。
「あ、」
「「あっ!」」
3人が顔を合わせる。気まずい。
「そういう訳だから、ちょっと出てくる。行こ、ローザ。」
「あ、うん。でも。」
ピータの母親の方を向く。血色も良い、病気で寝込んでいたのが嘘のようだ。
「あ、お母様、お元気そうで良かった。」
「あ、聖女さま。ありがとうございます。おかげさまで。」
「私、聖女は返上しました。だから大丈夫なんです。少し、ピータとお話ししますね。」
ん?何が大丈夫なんだろ?自分で言っててわからないや。
外に出て、一緒に歩く。
「久しぶりだね」とか
「元気そうで良かった」とか
当たり障りの無いことばかり話した。
二人が初めて話したベンチに座った。ここで話そうと決めてたのかな?
プロポーズなら、断らないとダメだよね…。
でも、嬉しすぎて、断れないだろうなぁ。
ピータが、何か、もどかしそうに言った。
「ローザってさ。エイタさんと同じ異世界人なんだろ?」
「えっ?」
なんでわかった?観察力かな、やっぱアナタ優秀すぎるでしょ。
「俺、分かっているからって、言ったことあったよね。」
なんか、エイタと同じクセがあってそう思ったらしい。親子なんだから、しょうがないじゃん。
ご飯の前の「いただきます」とか、
「ゴメン」って手を合わせて言う所とか?
あまりこの世界の人に無い慣習らしい。
「だから調べてた。」
「えっ。何を?」
「ローザが、元の世界に戻る方法。」
「なんで?ピータが調べるの。」
私が、元の世界に戻ってしまったら、その、結婚できないじゃん。
いや、しないけど。
「ローザが好きだからだよ。」
「え?じゃあ、私が帰ってもいいの?」
「良いわけ無いだろ!」
声、デカいよ。ってか、帰っちゃ嫌ならなんで…?。
「でも、エイタさんに聞いたんだ。便利で平和で、娯楽に溢れた楽しい世界だって。」
「うん。確かにそうかな。」
でも、瑛太も瑛太の母親もいない世界だ。でも何より、あなたが居ないんだよ。
「だから、好きなコだから、愛してるから、幸せになってほしいって。」
マジか。ピータ、君はスゴイね。
俺、瑛太の母親と結婚したとき、そんな事、考えられなかった。
隣の見慣れた横顔が、ますます愛おしくなる。
「ピータ。あなたは私の言う事、今まで全部聞いてくれたよね。」
「ああ、ローザの希望を全部叶える事が、俺の役目だから。」
「役目?役目だから聞いてくれたの?」
「役目ってのは、…。違う。うん。君が好きだから。君の笑顔が見たいからだよ。」
うん。それを聞けたら、もう良いかな。
「じゃあ、あなたが私を幸せにして。ってお願いがあるんだけど。」
「それって、あ、あの、俺たち結婚するって事。」
「それ以外に、あなたが私を幸せにできるの?私は、あなたが幸せじゃないと、私も幸せになれないんだけど。…じゃあ、改めて言ってくれる?」
二人は向き合って、ちゃんと目を合わせる。
「ローザ。愛してる。ずっと一緒に生きよう。」
「はい。よろしくお願いします。」
見つめ合い。お互いの気持ちを確かめ合い。
長い長い口づけをかわした。
ここで終わるのが綺麗だったかもしれない。でも、もう1話、次回完結します。




