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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第3章 策謀、紛争、ついでに縁談

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(6)思わぬ藪蛇

「ダレン、すまない。遅くなった」

 執務室に戻るなり、カイルはこの間不在にしていたことをダレンに謝罪した。しかし彼は事も無げに確認を入れてくる。


「予想していたより、早いお戻りでした。それでメリアは説得できたのですね?」

「ああ。それは良かったんだが、彼女から予想外の話を聞かされた。本当に迂闊だったな……」

「どうされました?」

 不思議そうな顔になったダレンに、カイルは先程聞いたばかりの城下での話の内容を伝えた。そして彼に意見を求める。


「どう思う?」

 しかしダレンは全く表情を変えず、落ち着き払って言葉を返した。


「前々から、ある程度は予想されていた事です。時期的には早いなというのが本音ですが」

「そうだったのか?」

「要するに、それだけカイル様の施政が優れているということです。その逆よりはるかに良いでしょう」

「それはそうだがな……」

「優れていたり豊かであれば、周囲から妬まれるのは当然です。それに粛々と対応していれば良いだけであって、伯爵もメリアもそう深刻に考え込まずとも良いでしょう」

 淡々とダレンが話を締めくくり、カイルが思わず苦笑しながら感想を述べる。


「ダレンと話していると、世の中の大抵の困難事が大したことでないように感じるな」

「いえ。さすがの私でも、目下手に余る案件があります」

 真顔でそんな事を言われてしまったカイルは、思わず興味をそそられた。


「そんな事があったのか? どんな事だ?」

「伯爵のご結婚に関してです」

「……ダレン、それは」

 ここでそうくるとは思っていなかったカイルは、内心で(しまった)と思ったものの、ここでダレンがおとなしく引き下がる筈がなく、切々と訴えてくる。


「通常であれば伯爵の成人後、適当な家と話を進めて婚約の運びになり、更には婚儀となるのですが」

「ダレン。悪いがそれは、あくまで一般的な話で」

「ええ、分かっております。あの陛下がカイル様の相手を世話しようなど思う筈がなく、その陛下に睨まれている伯爵と進んで縁を結ぼうとする貴族は、よほどの物好きか馬鹿でしょう」

「そこまで分かっているなら、敢えてここで口にしなくても」

「どう考えても政略結婚が無理であれば、却って好都合とも言えます。カイル様の意思を最大限に尊重できますから。結婚相手がたとえ平民でも、この際金を積んでどこぞの末端貴族に形だけ養子縁組させれば宜しいのです。しかしこの間、カイル様に結婚相手のご希望を伺っても、全く明言されておられない」

「…………」

 軽く睨まれた気がしたカイルは、自分の非を認めつつ無言でダレンから視線を逸らした。するとダレンが、聞き捨てならない事を言い出す。


「最初はメリアに懸想しているのかと思っていましたが、本気で彼女の結婚を祝福しておられたようですし」

 全く表情を変えずにサラッと言われ、カイルは一瞬聞き流しかけたが、慌ててダレンに詰め寄った。


「当たり前だ! そんな恐ろしい事を、真顔で口にするな!! 一時期変な誤解をされていたのに、まさかアスランに面と向かってそんな事を言っていないよな!?」

「そんな無神経な物言いはいたしません」

「良かった……」

 カイルが安堵したのも束の間、ダレンがここぞとばかりに追及してくる。


「この際、じっくりとカイル様のご希望を伺って、私の懸念を少しでも晴らしていただきましょう。さあ、手始めに相手のご希望は年下、同年配、年上でいうと、どれになりますか? それから顔立ちに身長、体型、性格に特技や趣味ですか。本当に家や身分などは考えなくてよろしいので、どうぞご遠慮なく」

 控え目に促しているようで結構な圧を出しているダレンに、カイルは若干引きながら弁解してみた。


「いや、ご遠慮なくと言われても……。本当に、特に結婚相手に希望とかないから。まだまだこの地でやる事が山積みで、結婚について考える余裕がない」

「分かりました。それでは、メリアに似たタイプの女性を探しましょう」

「ちょっと待て! 何が分かったんだ!? それに、どうしてメリアに似た女性を探すことになるんだ!!」

「やはり身近にいた母親や姉妹に似た女性であれば、親しみやすさが増すのでは? それであれば、伯爵の場合はメリアでしょう」

「それは認めるが、暴論過ぎるぞ!」

「それでは、メリア以外の理想のタイプをお教えいただきたく」

(くっ、まさか城下の噂話から、こんな展開になるとは……。しかし本当に答えられないし、どうすれば……)

 どうやら女性の好みや結婚相手に対する希望を聞くまでは、自分を解放する気がないらしいと察したカイルは、進退窮まった。するとここでタイミングよくドアがノックされ、ディロスが姿を現す。


「失礼します。カイル様、ダレンさん。ただいま戻りました」

 そのディロスの登場は、カイルには天からの助けのように思えた。すぐさま机を回り込み、喜色満面でディロスに駆け寄る。


「ディロス! 良く帰ってきてくれた!!」

「え? カイル様、どうかしましたか?」

「いやいや、なんでもない。それにしても、随分出歩いていたみたいだな。すっかり日に焼けているじゃないか」

「ええ。この間行商をして、トルファンとムスタを行き来していましたから。随分稼がせて貰いました。元手は出して貰っていますが、利益は丸々僕個人の収益にして良いですよね?」

 にっこり笑ってカイルにこの間の状況を説明したディロスは、ダレンに向き直って収益についての確認を入れた。それに一瞬苦い顔をしたものの、ダレンが了承の返事をする。


「……好きにしろ。その代わり、この場で報告を」

「分かりました!」

(ディオンのおかげで、ひとまず助かった。だが本当に、いい加減に決めないといけないのだろうな)

 取り敢えず深く追求するのを避けられたカイルは安心したが、さすがにそろそろ真剣に考えなくてはいけないだろうなと、頭の片隅で考えていた。



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