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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第1章 幸運か不運か、それは神のみぞ知る

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(32)深まる謎

 ルーファスから、衝撃の事実の波状攻撃を受けた翌週。カイルは自分が身元を引き受ける子供達の状況を確認すべく、ルーファスの屋敷に出向いた。

 訪れたのは午後であり、当然宰相の業務に忙殺されているルーファスは在宅しておらず、彼の妻のリーリアが出迎える。


「ご無沙汰しております、大叔母上」

 明るく茶目っ気もあるこの大叔母を、カイルは以前から慕っており、自然な笑顔で挨拶をした。すると彼女は、わざとらしく驚いてみせる。


「まあぁ、カイル。そんな堅苦しい言い方はやめてくれない? それとも成年ともなると、常にそんな他人行儀な物言いをしなくてはいけないのかしら。本当に、つまらないわねぇ」

「失礼しました、リーリア。相変わらずお元気そうでなによりです」

 以前「大叔母上なんて言われるともの凄く年を取った気分になるから、名前で呼んで頂戴」と言われていたのを思い出したカイルは、苦笑いしながら呼び方を変えた。するとリーリアは、満足そうに頷く。


「元気なのが、私の取り柄ですものね。あなたがこちらに来ると聞いて、ケーキを焼いておいたの。すぐに出すから、座ってちょうだい。ほら、リーン。あなたもよ」

「いえ、ですが」

「あなたもカイルと同様、私の客人なの。分かるわよね?」

「はあ……、失礼します」

 主の隣を指定されて怯んだものの、かつての養い親に抵抗などできず、リーンは大人しくカイルの隣に腰を下ろした。それを見たリーリアが、満足げにお茶の支度をしに一旦部屋を出る。


「本当に相変わらずだな。良い意味でだが」

「ある意味、安心はしましたね。差し迫った心配事や、危険性は無さそうです」

「久しぶりで、懐かしいか?」

「そうですね。ここに引き取られなかったらどうなっていたかなんて、考えたくもありません」

 苦笑まじりに言葉を交わしていると、普段余計な使用人を雇わず率先して家事をこなしているリーリアが、手早くお茶の支度を整えて戻って来た。


「二人とも、お待たせ。味は取り敢えず自信があるけど、万が一、二人の口に合わなかったらなんとか合わせてね」

「分かりました。こちらで合わせます」

「いただきます」

 それからリーリアが振る舞ったお茶やケーキについてカイル達が感想を述べ、他愛のない世間話を幾つか済ませてから、彼女が子供達について言及した。


「二人とも、今日はわざわざ出向いてくれてありがとう。後で子供達を紹介するわね」

「はい、そのつもりです。ですが、リーリア。手元に引き取った子供を手放すような無責任な行為は、貴女達らしくないと思うのですが」

 カイルはさりげなく探りを入れてみたが、リーリアは頬に片手を当てながら、わざとらしく嘆息してみせる。


「本当に……。使えるお金がなくなるのと、寄る年波で身体の自由が効かなくなるのは恥ずかしいわね。カイルには迷惑をかけてしまうけど、子供達のことをお願いね?」

「はあ……、お任せください」

(あの夫にして、この妻あり。分かってはいたが、絶対に本当のところを白状する気はないよな。本当にままならないものだな。あの大叔父上とこの女性との間に子どもができていれば、間違いなく優れた人物だったろうに)

 天真爛漫なように見えて実は結構芯が強いこの女性を、カイルは以前から大叔父同様に尊敬していた。


「それで、全員に引き合わせる前に向こうへの移動の準備もあるから、まずディロスを紹介しようと思っているの」

 唐突に出てきた聞き慣れない名前に、カイルが戸惑いながら問いかける。


「ディロスとは、誰の事ですか?」

「あら、ごめんなさい。二人とも会ったことはないわね。シーラが頻繁に帰ってきているから、つい知っているものとばかり思っていたわ。ディロスは預かっている子供達の中では最年長で、今十五歳なの。頭が良くて目端が利いて、すごく良く働く子でね。普段から、皆のまとめ役をしているわ。皆、ディロスの言うことだったら、なんでもその通りにするから」

 その説明を聞いたカイルは、大きく頷いた。


「そんな子がいるのなら、心強いですね。小さな子とかは、慣れた場所から離れるだけでも不安でしょうし。頼りになりそうだ」

「ええ、子供達のことは、ディロスに任せておけば大抵は大丈夫よ」

 リーリアがそう断言したタイミングで応接室のドアがノックされ、入室の可否を尋ねる声が聞こえて来る。


「ディロスです。入っても良いですか?」

「大丈夫よ。入ってきて」

「失礼します」

 リーリアがかなり買っているらしい、今聞いたばかりのまとめ役の少年を見られると分かったカイルは、興味津々で待ち受けた。そして入室して来た少年に向かって、親しげに声をかける。


「やあ、ディロス。はじめまして。俺は」

「うえ⁉︎ あんたかよ!」

「…………」

 カイルは、友好的に初対面の挨拶をするつもりだった。しかしなぜか相手は、カイルの顔を見るなり驚いて一歩後退りし、次いでもの凄く嫌そうな顔になる。次の反応に困ったカイルと、(何やってんだ、このガキは)と睨みつけるリーンで室内の空気が微妙になる中、リーリアが不思議そうに問いを発した。


「ディロス? あなた、以前どこかで、カイルに会ったことがあるの?」

「……ありません」

「それなら、初対面の挨拶をやり直さないといけないわね?」

 リーリアからはっきりと圧を感じる笑顔を向けられたディロスは、カイルに対して神妙に頭を下げた。


「カイル殿下、先程は大変失礼しました。ディロス・マレーと申します。この度は、僕達の養育と後見をお引き受けいただき、ありがとうございます。今後とも、よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしく」

(確かに礼儀正しい、賢そうな子だな。最初の謎な反応が気になるが。それになんとなく、シーラが言葉を濁していた将来の出来事を予知できる加護持ちの子どもって、この子のような気がする)

 取り敢えず、先程の意味不明な言動について考えるのを止めたカイルは、リーリアの隣にディロスが座るのを待って話しかけた。




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