第11羽 速水 ①ジョーカー -3/4-
ジョーカーは、ジャックの隣にいた。
勝てないはずだ。
速水はテーブルに手をついた。頭を押さえる。
…けど、いや、だって。ジョンとウィルって親友だろ?
って言うか『ジェスター』=『ジョーカー』とか、そのまますぎだ…。
「何でジャックを殺した…お前がやったのか?」
拳を握り、速水はジェスターに言った。英語の発音が震えた。
ジェスターという単語には道化師という意味がある。
速水はかつてウィルにその名前で呼べと言われたが、何となく語感が嫌いだった。
だからジャックと同じように『ウィル』と呼んでいたのだ。もしかしたら、速水は心のどこかではそう思っていて、…深く考えたくなかったのかも知れない。
…嘘だ。…信じたくない。
「この子、信じたくないって思ってるわ」
ルイーズが言った。
「そうか。じゃあどう答えようか?――よし、そうだ、全部ルークが勝手にやったんだ。俺は関与してない。これは本当だ」
その男が今まで見た事が無い、冷たい表情で言った。
「な…」
本当か嘘か、全く分からない。
ウィルは煙草を取り出した。
「あいつは、俺が全て一番で無いと気が済まないらしい。まあ、何処かの犬みたいな奴なんだ。あいつは生まれてからずっと、俺の為に、そうなるように教育を受けてきたからな。ジャック…ジョンは俺の友人だったが…」
彼が煙草を吸っているのを、速水は見た事が無かった。
火を付ける。
煙が室内に浮いた。
「どうも、ジョンはあれのカンに触ったらしい。ジャック、理由を聞きたいか?」
「…」
速水は答えられなかった。
本当か、嘘か、分からない。聞くのが――。
「この子、聞くのが恐いって思ってる。本当か嘘か分からないから。ジョーカー、ゲームは貴方の勝ちで決まりね」
ルイーズが妖しく、むかつく微笑みで微笑む。
「…何なんだよ…お前」
速水はルイーズを見て頭を押さえた。速水の思考が筒抜けだ。
「くそっ…、お前等…グルだったんだな。全員か?」
速水は呟く。
エリック、ウルフレッド、アビー、ベイジル、クリフ、キース、イアン。
それに…?まさかレオンは違うだろ。
「そう。レオンとノアは違うわよ。けどベスはこっち側ね」
ルイーズが言った。
「は?」
「可愛そうな子なのよ。ノアを好きにさえならなければ良かったのに。あの子の家、凄い貧しくてね。家族を養う条件で――あら、これは知ってるのね」
ルイーズが笑った。
そうだ、ベスは家族の為に頑張って――。
「でもね。それ。嘘なのよ」
「え?」
「ルイーズ」
ジェスターがルイーズを呼ぶ。
「分かってるわ。もう黙るわよ」
ルイーズは嫌そうに頷いた。
「おい、それ、どういうことだ!?」
速水はジェスターに近づかずに声だけを上げた。こいつは危険だ。
ジェスターは煙草をふかす。
「つまりあの性悪女もお前を攫う『計画』に関わってたんだ。お前をはめた、騙し組ってとこか?」
黙っていたエリックが口を開いた。
「―ハヤミ!!違います!!ベスは確かに『計画』を知っていましたが、彼女は違います!彼女は…!!」
「エリック、黙れ。分かってるな?…ふう…全く、――本当、クイーンにあの女を選んだのは失敗だったな。まさかノアをたぶらかすなんてな。死んでくれて良かったぜ」
ジョーカーがヘラヘラと笑った。
「貴様!!」
速水は殴りかかろうとした。死んで良かっただと!!?ふざけんな!!
だが、エリックが止めた。それも必死に。
「放せ!!エリック!!お前もグルか!!敵なのか!!」
速水はエリックに怒鳴った。エリックを殴った。
「サラが人質だからな。お前が俺に危害を加えたら、彼女は解放されない」
その言葉で速水は固まった。
「…済みません、すみません…」
エリックは泣いていた。
「――ジェスター!!!貴様!!」
速水は叫んだ。
「おっと。まあ落ち着いて聞け。『計画』って言うのはな――」
ジョーカーが、速水の大声に少し驚き、パソコンの前の椅子に座った。
「長くなるわよね。あら、このケーキ食べても良い?珈琲は…冷めてるわね。まずいわ」
ルイーズは勝手にケーキを食べ始め珈琲を口にする。
…彼女は速水の珈琲を馬鹿にした、初めての女だった。
…そう言えば、さっきからPVが流れている。




