第14羽 MD ⑥ラストステージ(前編) -6/6-
「――っ!」
速水は目を開けた。
しばらく、ここは何処だ、自分は誰だと考える。
まぶしさに瞬きを何回も繰り返すと、ようやく周囲が見えてくる。意識もはっきりしてきた。
ここは……どうやらどこかの白い部屋だ。
急には起き上がれずに、身じろぎをする。速水は寝心地の悪い板の上で寝ていた。
拘束されていない。体は自由だ。
二重人格……!
速水は動揺した。左右を見て、焦って起き上がる。
急に起き上がったらめまいがして、また横になり、そのまま動かずにいた。
……本当だったんだな。あれが……。
速水は横になったまま考えた。
速水が見たのは、速水によく似た、赤い目の誰かだった。おそらくあれがシャドーというヤツだ。
そいつは速水に、一方的に、一気に話しかけて来た。
速水はそいつの声を耳で聞いた気がしない。
頭に直接響いたのか、記憶しただけか。言葉が重なって聞こえた。
『まて。こっちにくるな』
『お前のものを返す』
『だから、あ』
そこで途切れた。言うならもっとちゃんと言え、と思ったが、こちらも急に訪ねたのかもしれない。
自分だから当然なのかもしれないが、あの会話だけで何をしろ、と言う意思は伝わってきた。
――お前の物を返す。だから、踊れ。
速水は自分の手のひらを見て、握った。
「……」
シャドーの言いたいことは判ったが、理由はわからない。
ただの励ましか――唸ってみても反応は無し。
そう言うときは、動くしかない。
悲しくないのに涙が出そうだ。
「オ、……あー。アー、――おい、誰かいないのか!」
速水はにじんだ涙を気力で抑え、発声をした後、大声で人を呼んだ。
うっかり日本語を使っていたので、英語でもう一度呼ぶ。
分厚い扉が開き、バタバタと研究員達が入って来た。
「シャドーに会った。何でもいい。曲を聴かせろ!ミュージック!!」
速水が訴えると、研究員達は顔を見合わせた。
釈然としないような、気が進まない気持ちがある。
けれど、突き進むしかない。少なくとも、今は。
〈おわり〉




